第4章 構造形態による力の流れ



本章では木造軸組建物に特有な形態の具体例をあげてその構造的な考え方を説明します。建物の形態は建物全体の荷重-変形性能と密接なかかわりがあり、建物の構造性能に大きな影響を与えます。


1 屋根からの力の流れ

1−1 2階間仕切り壁と小屋裏構面の剛性の違い

和小屋で小屋裏の補強がないか雲筋かい程度の場合、桁行き方向の間仕切り壁は小屋裏まで耐力壁が伸びていないので、屋根質量に生じる地震力は、内壁には小屋梁を伝ってわずかに流れるだけで、ほとんど外壁面に流れてしまいます。

小屋梁等に継手があると、剛性の低下によって内壁への屋根の地震力の伝達はさらに減ってしまいます。(Fig.4-1)

(→第3章 1-5 小屋裏構面

img:屋根からの力の流れ
Fig.4-1 屋根からの力の流れ

1−2 外壁と内壁との力の伝達の割合


外壁と内壁との力の伝達の割合は本来、第2章 建物全体の荷重変形性能の項で説明したように、鉛直構面(外壁と内壁)と、水平構面(屋根面)の剛性と、屋根荷重の分布で決まってくるはずです。

しかし、1-1のように小屋剛性が低いと、小屋構面で性能が決まってしまって、見かけ上、この原則が成り立たなくなります。(Fig.4-1)

例えば、間口が狭い切妻屋根の桁行き方向の地震力は、ほとんどが外壁に流れると考えられます。間口が広くなってくると、屋根面が十分に剛でなければ、屋根面に大きな変形が生じます。