風のささやき A


【幸福】

「結婚してはじめて 人生の幸福というものがわかったよ」

「そんなにすばらしいかね」

「いや 失ったものの価値がわかるんだよ」


【ああ言えば こう言う】

 いま 出発したばかりの列車を見送りながら 夫婦が互いに言い合っている

「おまえが 支度にあんなに手間どらなかったら 列車に間に合ったんだ」

「いいえ あなたがあんなに急がせなかったら 次の列車まで 長いこと待たなくてすんだのよ」


【効き目のあるひと言】

女房と連れだって外出するとき 亭主が悩まされるのは 女房の支度に手間どることである

「いったい いつまで待たせるだ!」 と 怒り出してしまう

そんなとき 「いいかげんにしろ」 と 乱暴に言っておいて

 「それ以上 きれいになってどうするんだ」 と 穏やかに言う

これでお互い気分よく外出できる


【それを待っていた】

夫が会社から帰ってみると またいつものように 夕食の支度ができていない

今度こそは思い知らせてやろうと そのまま出て行こうとすると 妻が

「あら どこへいらっしゃるの?」

「もち レストランさ」

「それなら5分 待ってくれない?」

「5分待てば夕食の支度ができるっていうのか?」

「違うわよ 5分すればわたしも一緒に行けるのよ」


【奥さんの知恵】

「降りだしそうだわ 持ってらっしゃいよ」

と 傘を渡されて 家を出た亭主

「珍しく気がきくな」 と ご機嫌で出勤した

家では奥さんが 「これで 雨宿りって口実は使えないわ」 と ニンマリ