2005年

12月

        

        12月30日 餅つき

           我家では十年来、毎年この日に餅つきをする事に成っています。
           直火でもち米を蒸した後、昔ながらの臼と杵で搗くのですが
           普段余り力仕事をしていないので、すぐに息が上がってしまいます。
           しかし搗きたての餅の味は格別です。
           因みに、臼は祖父の代からの年代物で榧の木で出来ています。
           普段は天板を載せてテーブルとして使っていますが、
           一年の内で、この日だけは本来の役目を果たしてくれます。
           そのせいか、普段よりも堂々として誇らしく見えます。
           

        

        (もち米を蒸す)          (出番を待つ臼と杵)         (殆ど搗きあがった餅)

          

        
                                                 
                           

         12月22日 エンジェル・トランペット

           
           例年なら秋までに咲いてくれるはずのエンジェルトランペットが
           12月に成っても蕾のままだったので、室内に取り込んであげた所、
           10日程の間に沢山開花しました。
           トランペットに似た花弁の形から天使のトランペットと呼ばれますが、
           アサガオにも似ているので朝鮮アサガオとも呼ばれるそうです。
           因みに、右下の画像はフィレンツェのサンマルコ修道院にある、
           フラ・アンジェリコ作のトランペットを奏するエンジェルです。
     
            

                     

                                              


        12月18日 アフガン・ラバーブ


           先月のアフガン・ラバーブの続編です。
           昨日、奈良女子大学でアフガニスタン女子教員支援フォーラムが開かれました。
           その一環として、奈良女子大学附属中等教育学校の中道貞子先生が
           「バーミアンに希望を託して」と言うタイトルで講演をされました。
           先生が私費を投じてバーミアンに小学校を建設した話を中心に
           アフガニスタンの現在の教育事情を、現地の美しい写真や映像を交えて紹介した内容でした。
           その講演会の冒頭で、10月にカブールで見つけて来てくださったアフガン・ラバーブの
           演奏をして来ました。アフガニスタンからの留学生も数名参加していました。
           彼女達が母国の楽器の響きを、どんな気持ちで聴いていたのかは分りませんが
           参加者の何人かは正にシルクロードの響きですねと、感想を漏らしていました。
           これからも機会が有れば、戦乱のアフガニスタンを生き延びてきた楽器の響きを
           聴いて頂きたいと思っています。

           

                        

                              (右は中道貞子先生)

        



        12月6日 三味線


           先月の話題でカシュカルチャイ・ルボッブと言う楽器を紹介致しましたが
           それが三味線のルーツの一つに当たる事から、今までは持っていなかった三味線を
           購入しました。近くの骨董屋で見つけたこの楽器には
           胴の中に明治12年に京都で作られた事が墨書きされていました。
           皮が破れていたので新しいものに張り替えたら、なかなか良い音がします。
           作られてから100年以上経過しているので、古楽をやっている者にとっては
           オリジナルだと言う感覚ですが、邦楽の方ではあまり有り難がられないらしいです。
           本体部分よりも皮の材質と張り方が音色を大きく左右すると
           考えられているからでしょうか。
           しかし紅木で出来た3本接ぎの棹の精巧な細工等は
           私が持っている全ての楽器と較べても、決して見劣りする物では有りません。
           日本人の木工細工の技術の高さを、改めて実感させられた次第です。
           

                        

                         楽器紹介の欄にも掲載しています。



        12月4日 アイスランドの音楽家



          
1日の話題はスウェーデンの楽器に関してでしたが、今回は11年ぶりに再会した
           アイスランドの音楽家の話です。彼はスヴェルリル・グウズヨンソンと言う名前の
           歌手(カウンターテナー)で、以前友人の紹介で一度だけ我家を訪れた事が有りました。  
           先月の30日にその彼から突然、明日京都で演奏会をするので招待したい、と言う電話がありました。
           なんでも民音の招きで、ボレアリス・アンサンブルと言うアイスランドの
           男性歌手を中心としたグループを率いて来日したとの事でした。
           1日に八幡市で行われた彼らのコンサートに行ってきたのですが
           映像とモダンダンスも織り交ぜた「アイスランド音楽伝説」と題されたその公演は、
           アイスランドの中世音楽から現代曲までを、素晴らしいリズムとハーモニーで聴かせ
           満員の聴衆を「サガ」の世界に引き込むものでした。
           たまたま一度、我家に遊びに来ただけの、かすかな繋がりを忘れずにいてくれたのは
           北欧五カ国の一つ、スウェーデンに私たちが暮らしていた事が理由の一つかもしれません。
           この11年で本当にビッグに成っていた彼のステージを見て感動して帰ってきました。


                        
            

     
            ボレアリス・アンサンブルの全国ツアーはこの後、5日から20日まで11回の公演が
           予定されています。http://www.min-on.or.jp/iceland/profile.html
           で内容が分りますので、お近くの方は是非聴きに行ってみて下さい。


       




        12月1日 スウェーデンの民族楽器


           12月の最初の話題も楽器に関する事です。今年の夏、9年振りにスウェーデンに行って来たのですが
           その折にニュッケル・ハルパと言う珍しい楽器のキットを注文してきました。
           10月に届いたキットはキー周りの部品以外は殆どカットしただけの木材でしたので、
           古楽器なら何でもござれのマルチ製作家、平山照秋氏にお願いして作って頂きました。
           辛うじてキー周りの部分だけは自分で作りましたが。
           写真の如く、ヴィオラのネックにハーディー・ガーディーのキーを付けた様な構造で
           ギターのように構えてヴァイオリンの弓使いで演奏します。
           この楽器はつい最近までは、主にスウェーデンの中部地方で民俗ダンスの伴奏にだけ
           用いられていたマイナーな楽器でしたが、若い奏者が伝承曲だけでなく
           ポップスや中世、バロック音楽にまで使用するようになり脚光を浴びつつ有ります。
           
                   
                     
           
           

            楽器に関する詳しい事は、楽器紹介の欄に掲載しています。



11月



        11月27日 シルクロードからの到来品


           毎年秋に奈良国立博物館で行われる正倉院展は、聖武天皇の遺品を中心とした
           いわゆる「正倉院御物」を展示する催しですが、その昔はるばるとシルクロードを経由して
           奈良にまで到来した楽器が、時折出展されます。
           今年は主だった楽器の展示は有りませんでしたが
           今までに地の利を活かして螺鈿紫檀五弦琵琶や四弦琵琶
           それに阮咸等の実物を見たことが有ります。
           
           なんと我家にも10月半ばに、相次いで2種類の楽器がシルクロードの町からやって来たのです。
           一つはカシュカルチャイ・ルボッブと言う楽器で、シルクロードの真珠と形容される
           ウズベキスタンのサマルカンドで、日本語を教えている私の知人が買ってきてくれました。
           この楽器がウイグル・中国・琉球を経て形を変え、日本の三味線に成ったと言われています。
           
                                 



           もう一つはアフガン・ラバーブで、この楽器はアフガニスタンの女子教育支援に携わっておられる
           奈良女子大学附属中等教育学校の中道貞子先生が、カブールから持ち帰ってくれた物です。
           ウズベキスタンのルボッブは新品でしたが、こちらは製作されてから何十年も使われていた形跡のある
           品で、あのアフガン戦争も潜り抜けて来た貴重な楽器です。
           民俗音楽学者だった故小泉文男氏によれば、アフガン・ラバーブは正倉院に伝わる螺鈿紫檀五弦琵琶
           とも関連のある楽器だと言う事です。
           天皇の御物とは到底比較する事は出来ませんが、1200年以上の時を隔ててシルクロードから
           ここ奈良に楽器が到来した話でした。

                                             

           
           それぞれの楽器に関する詳しい事は、楽器紹介の欄に掲載しています。
            
           
           
   


            10月



        10月10日  鹿の角きり


           奈良町に住んでいますと四季折々に行われる年中行事が
           季節の節目を感じさせてくれます。 
           毎年この時期に行われる鹿の角きりのもその一つです。
           1671年に始まったと言いますから、バッハが生まれる以前から行われていた事になります
。                                               

     
                        
  

            立派な角を持った雄鹿の群れが、勢子(鹿を捕まえる人)に追われて会場を駆け回る様は
            想像以上に迫力が有り、普段はおとなしく見える鹿の野生を垣間見る気がします。
            そう言えば百人一首にも歌われている鹿の遠音を、我家でもかすかに聴くことが出来ます。
            これも昔から変わらない、奈良の秋の風物詩と言えるでしょう。
            切り取られた鹿の角は、様々な工芸品に加工されて奈良の名産品として売られています。
            残念ながらカモシカや雄牛の角程太くないので、楽器には成らないようです。 
             
  

        

                                      
            9月

      

 
        9月3日 手拭い掛けと寒暖計
            
             手水鉢で手を洗った後に使う手拭いを掛ける物です。
             昔はこんな大仰な物を使っていたのですね。
             現在は洗面所の中にタオル掛けが有るので
             不要の物と成りましたが一寸ユニークな品物なので、
             坪庭に面した廊下に吊るして、寒暖計を取り付けています。

             この寒暖計はスウェーデン製で、本来は窓枠に家の方に向けて
             取り付けます。
             お陰で寒い冬でも家の中に居ながら外気温が分ると言う訳です。
             0度が真ん中に有り、左に青色でマイナス50度、
             右に赤色でプラス50度まで目盛りが刻まれています。
             北欧のスウェーデンでは冬の間、0度を下回ったままの日が多く
             プラスの温度に成ると何かしら温かいような気がしたものです。
             0度が丁度寒暖計の真ん中に有るのが頷けました。

             日本では左半分の出番が少なく、今日も残暑でプラス30度を上回っています。
             この寒暖計はきっと、左右バランスよく動けるスウェーデンを懐かしがっている
             事と思います。

             
            
             
            

              

             
8月


       8月10日 テールピース

             この頃は梅雨の雨が恋しい位の暑い毎日が続いています。
             梅雨の湿気で膨らんでいた楽器の木材もほぼ元に戻り
             ペグの調子も良くなりました。前回ペグを紹介しましたので
             今回はもう一方の部分を、テールピース(緒止め用部品)
             も含めて紹介したいと思います。
             ペグと同じでいろんな方式が有ります。

              (楽器紹介のページをご覧下さい)
     




       8月10日 井戸水
     
            奈良町の町屋には、一軒に一つは井戸が有ったらしいですが
            今も日常的に使っている家は少ないと思います。
            流石に今は飲み水には使えませんが、花の水遣りや
            夏の散水には充分役立ってくれています。
            また家の中程にある壺庭に打ち水をすると、冷気で風が起こり
            室温も少し下がるような気がします。
            夕刻に表の道に打ち水をするのも「立て簾」と同様
            私たちの暑さ凌ぎの術です。
     





7月





        7月23日  立て簾
               
                基本的にクーラーを使わない生活をしているので
                色々な暑さ対策を講じなければなりません。
                西日避けの「立て簾」もその一つです。
                これで室温が1〜2度は違ってきます。
                道行く人が風情が有ると言ってくれますが
                私達にとっては夏の必須のアイテムです。




       
             
        15日 弦楽器のペグ(糸巻き)について

             古楽器(特に弦楽器)奏者にとって、梅雨は正に最悪の時期です。
             ガット弦を使用している楽器(ガンバ、フィーデル、レベック等)は
             多すぎる湿気の為に弦の消耗が激しく、その上調弦をしてもすぐに狂ってしまいます。
             またペグの調子が悪くなり、時には回せなく成ってしまう場合も有ります。
             これはペグと楽器の木材が湿気の為に膨張するからだと思われます。
            
             ペグに関してはガット弦を使っていない楽器の場合でも全く同じで
             リュートやウードの様に弦の数が多い楽器では本当に苦労します。
             特にリュートの場合は、あのマテゾン(1681〜1764)が
             『リュート奏者がもし80才ならば、60年は調弦に費やしていた事に成るし
             もっと悪い事は、それでも正しく調弦出来る人は殆どいない』と
             こき下ろしている程、普通でも調弦が厄介なのです。
            
             アラブや東洋の人たちは、調弦の苦労を避ける為かどうか
             ペグを手のひらで握れる形にしています。
             指先だけでペグをつまんで回すのと、手全体で回すのとでは
             必要な力が全然違います。
             そこでペグ回しの登場と成ります。(新しくリュート用も作りました)
             直接ペグに指が触れていないので微調整が難しいですが
             すこし慣れると上手く出来るように成ります。
             (楽器紹介のページにペグ(糸巻き)とペグボックス(糸倉)を紹介しています。






         13日 物干し竿支柱

            
家の裏庭の、7年前に立ててもらった支柱がぐらつきだしたので
             思い切って立替えにチャレンジしました。
             7年間土中に有った部分が腐蝕し、蟻の格好の住処と成っていました。
             その部分を鉈で切り取ると、木材はまだ使えそうだったので
             再利用する事にして、改めて立て直しました。
             丈が少し短くなったとは言え、竿が4本干せる支柱です。
             
             今時木製の物干し竿支柱に洗濯物を干している家など珍しいらしく
             お客様がよく「祖母の家を思い出す」・・・と、風に翻る洗濯物を見て
             感想を漏らしていました。
             そんな風情を残す為に、今回も木製・土中埋め込み式にこだわりました。

                      







op  ome