「うそだ! デタラメだ!!」
その場の全員の目が一人の男に向いた。
「こ、こんなのインチキだ!」 うろたえる男の周りに二人の男が詰め寄る。「なんでこっち来るんだよ。来るんじゃねえよ!」
二人の男はともに帯剣をしていることから刑事だとわかる。
「馬鹿野郎! あんな見世物見たいなの信用してんじゃねえよぞ!」命令が下っていたので捕まえるには捕まえたが「てめえら後でどうなるかわかってんだろうな!」二人の刑事は暴れる男の叫びに困った顔をした。
「かまわん、連れて行け」 言ったのは刑事ではなく契約者のエスハウンド老だった。
「クソジジィてめえ俺をはめやがったな!」
刑事たちは老人を見て、それから隣にいる青年を見た。
視線を受けた青年は、「いいぞ。俺が保証しよう」 わめく男の視線を気にした様子もなくきっぱりと言った。
上司の命令を受けて刑事たちは「はっ」 と声をそろえて、男に捕縛帯を取りつける。
「これは冤罪だ! 絶対訴えてやるからな!」
「冤罪かどうかは裁判所が決めることだ」うるさそうに言う。
「決まってるだろ! こんなの証拠になるとでも思うのか!
「そんなのは判ってる」 つばをとばして喋る男をいやそうな顔で見ながら、「けど証拠はこれから探せばいいことだ。犯人がわかっている今、総動員であんたの身の回りを探せるからな」
「逮捕状もないのに逮捕していいと思ってるのかよ!」
「だから手錠掛けてないだろう」 わからん奴めといった感じで、「それに連行するのはあんたの家の軟禁部屋だ」
青年が「行っていいよ」 と手を振ると、刑事たちは敬礼をして男を連行して言った。
「やれやれ…」 息をついた青年はエスハウンド老に目配せをした。
「解散だ。後片付けは任せたぞ」
墓のほうを一瞥して、老人は待たせてある車へと歩き去っていった。
墓の方ではメイが一人だけで再び死体を、「あ? ああ、ここで寝ればいいんだな。…なんか棺おけみたいだな」 棺おけに収めていた。
続く。
BackstageDrifters.