2.第2話

「で、何で研究所内で集めることのできたメンバーがオレだけなんだ?」

ラスティーの顔からは『後悔』の2文字がはっきりと読みとれた。

「いや、その何というか・・・」

「誘ってみたけど全部だめだった、と言う感じか?」

「あ、あたり。」

ラスティーは「ふう」と大きなため息をついて、

「確か、調査隊の最低人員は4人だったよな?」

「ああ、4人だけど。今までの最低人員記録は6人だぜ。」

実際、6人と言っても研究所員はこちらの研究所員は2人、エルフ側の共同開発国フレシアス王国の研究所員が2人、 残りはプログリア共和国陸軍の特殊部隊だった。本来、軍から独立して存在しているこの研究所の調査に軍が介入してくるのは、 ディスクの研究に軍が半強制的に介入してきたからであった。むしろ、この計画は軍の方から話が持ち上がったらしかった。

「6人ねぇ・・・第4次調査隊だっけな?フレシアス側の研究員を省いて全滅した。」

「たしかそうだったはずだけど」

そう言ってオレは部屋の隅にある戸棚に詳しい資料を取りに行こうとした。

「別に取りに行かないくてもいいって。それよりも・・・」

そう言って、ラスティーは大きく一呼吸置いた。

「まあ、ここじゃ何だ。ちょっとひとっ走りして話そうぜ。」

「はぁ?急に何を?」

はっきり言って全く意味不明な行動だった。ってか、全く解決の方向に向かってないような・・・・。

「別に、暇だろ。研究することなんて無いんだし。」

「そ、そうだけど・・・」

そう答えるのは、はっきり言って悲しかった。

「それじゃ行くぞ。俺は車裏口まわしておくから。」

「いや、でも、ちょっ」

俺がそう言ってる間にラスティーは部屋を出て行ってしまった。

「はぁ、まあいっか。」

ラスティーはラスティーで何か考えがあるのかもしれない。それに、オレが今何かできるかと言っても、 おそらくできることはラスティーの車に乗ることぐらいだった。

 オレは、そう思いながら椅子から立ち上がりドアへ向かった。

と、そのとき急にドアが開いた。

「おい、リスタ。そのまんまの格好で来るなよ。」

と、ラスティーが急に少し開いたドアから顔をのぞかせた。

「せめて、そのススだらけの白衣ぐらいおいてこいよ。」

そう言ってドアを閉めると、廊下を歩いていった。

言われてみて気がついたが、オレの白衣はすでに白衣とは呼べないものに近かった。

「どちらかというと、灰衣か?」

そんなことを1人呟きながら、近くにあった椅子に灰衣を脱ぎ捨てた。



 車はオレが乗るとすぐに動き出した。今乗っているのはラスティーの車だが、 はっきり言ってドライブに行くための車とはあまり呼べないものだった。

「そう言えば、おまえってワゴン車しか持ってなかったっけ?」

「俺のはワゴン車だけだが?」

ラスティーはそう言って肩をすくめた。

「この前、普通の乗用車に乗せてもらったのは夢だったのか?」

オレはつぶやくように言った。

「ああ、激しく夢だ。」
俺の声が聞こえていたのか、ラスティーはおもいっきり断言した。 だが、こいつが断言する時は激しく嘘をついてる時しか考えられなかった。

まあ、しかし、長年の付き合いのためか、もうそんなこともどうでもよくなりつつあった。

「はぁ」

 おれは小さくため息をつくと、窓の外に流れていく景色に視線を移した。

 窓の外の景色はすでに傾きかけた日のおかげで色あせて見えていた。山に生えている木々から芽吹いた若葉も日の傾きのためか秋の紅葉のように燃え上がって見えた。

 研究所が首都プラスフィア郊外の山側にあるため、季節の流れはカレンダーに頼らなくてもわかるぐらいになっていた。

 ふと、運転席に目を移せばラスティーの向こうに夕日に染まる首都のビル群が広がっていた。

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