最近見たテレビ映画その3
Invisible Man's Revenge
44年白黒。ユニバーサルの「透明人間」シリーズ第5作です。
「Returns」と異なり、独立した物語です。南アフリカで鉱山を発見しながら置き去りにされてしまった主人公が、殺人を犯した挙句にロンドンまで密航し、透明人間となってリベンジを狙うという話です。
透明薬を発見した科学者が、ジョン・キャラダインというのもポイントでしょう。特撮的には、慣れてきているなと思う反面、目新しさはなくなっています。透明犬と、空中で回転するペーパーナイフが見せ場かも。
すでに、「Returns」で示されている、透明から元に戻る方法もストーリー上、重要なポイントになっています。映画全体としては、オリジナルや「Returns」に劣ります。
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Invisible Man Returns
40年白黒。33年の名作「透明人間」の正統な続編です。
若きヴィンセント・プライスが透明人間を演じていることで今日では有名です。ストーリーは、殺人の濡れ衣を着せられたプライスが、獄中で友人からもらった透明薬を使って脱獄、無実を晴らそうとするという展開です。
前作を引き継いでいるため、スコットランド・ヤードも透明人間対策はばっちりできていますが、その上を行くプライス。両者とも、透明人間はしだいに残忍に狂っているということも知悉しています。パート2物はなかなか成功しませんが、この作品は前の作品をうまく生かしながら別の作品としてうまく作り上げたと思います。透明ネズミのシーンは秀逸で、「Abbott and Costello Meet the Invisible Man」にも流用されました。
プライス、残念なことに顔はほとんど出ませんが、若い張りのある声を聞かせてくれます。ちょっと、マッドで悪人入っているところ、後のホラースター・プライスの垣間見せてくれます。
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This Island Earth「宇宙水爆戦」
55年カラー。クリフォード・スタインの最高作という声もあります。
邦題のセンスの悪さは50年代的でしょう。確かに、宇宙核戦争に苦しむ宇宙人が、地球の核物理学者を誘拐する話なので、タイトルに偽りがあるわけではなく、原題はちょっとわかりにくいです。
それほど長い映画でもない割に、なかなか話が前に進みません。終盤になって、ようやくスタインの腕が振えるうシーンが出てきます。連れてこられて惑星の映像は、宇宙戦艦ヤマトのデスラー星の描写に影響を与えたかのような、空洞惑星です。
スティールでおなじみ、ミュータント宇宙人のデザインは見事でしょう。ただ、それ以外に見せ場がないというのが、正直な感想です。50年代 SF 映画最盛期の作品として有名なわりに、今一つ映画全体としての魅力にかけました。
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Battlestar Galactica「宇宙空母ギャラクティカ」
映画のもとになった79年のテレビシリーズです。
人類の植民星がロボットたちに攻撃され、残った最後の宇宙空母ギャラクティカが地球に逃れようとする話です。テレビ放映された当時は「敵の追撃より早く放映が終わってしまった」と言われてしまいました。
1クールで放映が打ちきられただけあって、有名大作の割に俳優陣が今一つ。第1話では、レイ・ミランドが特別出演して、いつも通りの悪人ぶりを発揮してくれますが、肝心のパイロットたちに魅力が欠けています。女性オペレーターも SF らしさがなくて、普通っぽい感じです。
原因は SF の中に、無理にドラマ性を入れようとしたためなのだろうと思います。ストーリーも、ちょっと暗いものが多いです。特撮映像も、宇宙空間を進むギャラクティカや戦闘機の発進シーンなど、印象的な音楽にマッチして見ごたえあるのもありますが、小技が効いていません。結局、SF ファンの期待にはそえられず、一般ファンを取りこむこともできませんでした。
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Pit and Pendulum
61年カラー。エドガー・アラン・ポーの小説をロジャー・コーマンが映画化した、古典ホラー。ポーらしく、ホラーの中に謎解きがあります。
主役はヴィンセント・プライスで、スペインの城に住む貴族をいかにもプライスらしく演じています。プライスは父親との二役で、序盤に回想として出てくる父親のシーンは鬼畜入っていて魅力あります。
コーマン監督作品の中では、最も優れたものの一つでしょう。クライマックスに入って、謎解きが行われるようになると、まるで別の映画のように展開が早くなり、前半はおどおどするばかりだったプライスも、生き生きと演技しています。Pendulum のシーンは一見の価値あると思います。
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The Blob (1988)「ブロブ」
58年の同名映画のリメイクです。
SFX の技術の進歩とともに、リメイクがはやった(「Invaders from Mars」、「The Fly」など)頃の映画です。リメイクの目の付け所は、オリジナルは特撮的にしょぼい B 級有名作を狙うことで、その意味ではいい題材を選んで、リメイクとしては合格だろうと思います。
オリジナルでは描けなかった、ブロブが人を襲うシーンをしっかりとグロく描いています。また、オリジナルにはない、宇宙生物対策の政府組織が登場して、お約束通り鬼畜ぶりを発揮します。ストーリー自体は、オリジナルをうまくなどってあり、ポイントなるシーンはしっかり取り入れています。
マックイーンの代わりをつとめた主役の高校生は、まずまずだと思います。58年当時、マックイーンもまだ未完だったわけですが、リメイクの主役はその後どうなったのでしょう??
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Attack of the 50 foot Woman
58年白黒。世界的に有名なダイヤモンド「スター・オヴ・インディア」を持つ大富豪が巨大宇宙人に出会い、その影響からか巨大化するという話です。
同工異曲のものに「The 30 Foot Bride of Candy Rock」がありますが、「30 Foot」のほうがギャグだったのに対して、「50 Foot」のほうはシリアスです。この「50 Foot」のほうが4年新しくて20フィート大きいのに、特撮のでき映えは格段に落ちます。巨大化する女性も、「50 Foot」のほうがオバちゃん(大富豪という設定だから仕方ないけど)なので、よけい残念。当初は、宇宙人に出会ったことを信じてもらえない彼女。夫はと言えば、別の女にうつつを抜かしており、金だけ奪って駆け落ちしそうな状態です。この鬼畜な夫の存在が物語を成り立たせています。
特撮は粗がめだちます。ただ、B 級らしくラストに予算をつぎこんでいるので、救われます。「30 Foot」といい、巨大化するのは女性ばかり。なお、宇宙人に出会う場所は「ルート66」で、同名テレビドラマを意識したのでしょうか。
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Time of Their Lives
46年白黒。アボットとコステロの幽霊コメディです。
独立戦争のとき、売国奴と誤って殺された二人の幽霊が、自分たちの無実を晴らすために新しく建て直された家に現れるというストーリーです。殺されるのがコステロと貴婦人のコンビで、アボットは、独立戦争のときは家の執事、現代(といっても 1946年ですが)では、とりつかれる家の住人です。合成で幽霊を描いたシーンは少なく、二人の幽霊は普通に(透明になっているわけでもない)画面に出ているのにそれでいて見えない、という状態でほとんど押し通しています。それでも、アボットとコステロは息があっているので、まずまず楽しめます。
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Killer Shrews
59年白黒。オープニング・タイトルからも、B 級 SF の雰囲気がよく出ています。
クルーザーの船長がやってきた小さな島には、謎の研究所があって、小さなネズミ(?)が巨大な殺人動物に突然変異していたという話です。
ヒロイン役の博士の娘は元ミス・ユニバースだそうで、それなりの雰囲気はあります。ネズミが泳げなくて良かったねという話なので、結末も素直です。タイトル以上の内容はありません。
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The Blob (1958)「マックイーンの絶対の危機」
カラー。スティーブ・マックイーンの初主演映画として有名ですが、邦題のセンスの悪さは如何ともしがたいです。
マックイーンに関係なく、低予算で作った宇宙侵略ものの佳作として評価するべきでしょう。88年にもリメイクがあります。スライム型の宇宙人が、次々と人を襲って巨大化していく中、発見者のマックイーンは、悪ガキということで警察から信用されないという展開です。ここでも、地球侵略は、中西部(?)の小さな町からです。若いマックイーン、主役としてはまだまだ未完成ですが、それだけにファンは必見でしょう。
低予算だけあって、スライムが人を襲うシーンはほとんど見せていませんが、それは見ている上で障害になりません。ストーリーはなかなか進まず、クライマックスに入ると急展開します。映画の中で出てくる映画館では、55年の「Daughter of Horror」が公開されています。深夜なのに、映画館にはけっこう客がはいっているのが、ご愛嬌。
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At the Earth's Core「地底王国」
76年。バロウズの「地底の世界ペルシダー」が原作。スターウォーズ前夜、「ポーラボーラ」とかロストワールド的な作品が何本か作られたのは、なぜなんでしょう?
ピーター・カッシングが博士となって作った地底探検ロケットにのって、ペルシダーに乗りこみます。同乗する、主役のダグ・マックルアーが今一つでした。対する、ペルシダーの王女も魅力に欠けました。カッシングは、ドクター・フーどうよう、あいかわらずボケボケしています。特撮的には、あまり見るところはありません。ロケットは、まあまあ丁寧には作ってあります。テーマ音楽が耳に残ります。SF 映画ブーム直前の、なんとも壁を感じさせる作品です。
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Abbott and Costello Meet the Mummy
55年白黒。凸凹シリーズの最後の作品らしいです。
アボットとコステロの二人はエジプトの探検隊という、真っ当な役割を演じています。ミイラを発見した教授が殺害されて、アボットが殺人犯と間違えられる中、ミイラ復活の鍵となるメダルの争奪戦が繰り広げられます。アボットとコステロのパタン化されたドタバタが、その中でうまくマッチしています。
冒頭、エジプトのパブで踊るアクション劇が楽しい。アボットとコステロを抜きにして、冒険映画としてちゃんとした作りになっているところは、いつも通りです。冒険映画のファンにのファンに自信を持ってお奨めできるかどうか定かではありません。
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「血を吸う館」Lake of Dracula
「血を吸う」シリーズ第2作。
こちらのほうでは、岸田森(Mori Kishida とクレジット)の声は、比較的もとの声に近い感じでした。でも、岸田森の台詞は少ないです。ドラキュラの日本版として紹介はされているようですが、本家には及ばないというのが正直なところなのでしょう。
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Daleks - Invasion Earth 2150A.D.「地球侵略戦争2150」
66年カラー。
ピーター・カッシングのドクター・フーものです。たぶん2作目でしょう。ロボットのダレックスに関する知識があることになっています。時間移動する研究室のタイムワープした先が、ダレックスたちが支配する地球だったという展開です。カッシングのフーは、はまっているというほどではないですが、合っていると思います。もうちょっと鬼畜な方がカッシングらしいので、その意味では、設定は全然違う「キングコングの逆襲」のドクター・フー(天本英世)をカッシングがやれば、ぴったりでしょう。
映画自体は、まあまあ平均的な感じです。ダレックスのデザインはしょぼい限りですが、空飛ぶ円盤は標準以上のデザインです。ダレックスたちのテーマ音楽が耳についてしまいます。80年代、マックに「Daleks」というフリーウエアのゲームがあったことを思い出してしまいました。60年代のイギリスのテレビ番組の「ドクター・フー」と役者は変えながら、設定は共通していると思います。
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Gorgo「怪獣ゴルゴ」
61年カラー。外国では珍しいスーツ・アクターによる「怪獣」映画です。
海底火山の噴火で現れたモンスターをロンドンに連れて帰って見世物にしていたら、親ゴルゴ(母親?)が追いかけてきたという「大巨獣ガッパ」みたいな話です。
ロンドンの街を見事に破壊しているシーンは、ゴジラの影響を明らかに受けているものの見ごたえがあります。アメリカの映画の場合、モンスターが名所を破壊するシーンがほとんど見られないですが、これはイギリス映画。皇居を壊さないゴジラ同様、バッキンガムにはゴルゴも手を出しませんでした。難を言えば、特撮シーンがほとんど夜であること、イギリス軍の協力を受けた攻撃シーンは軍隊の宣伝映画を見ているようで、肝心のゴルゴへの弾着の映像はしょぼい限りです。
結局、54年の「ゴジラ」を越えるものは作ることができませんでした。円谷特撮を見たハリウッドが60年代に早々とモンスター映画から撤退したのはさすがです。
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Abbott and Costello Meet the Killer
49年白黒。凸凹シリーズ、2作目では珍しくミステリーものです。
今回、アボットはホテル・ディテクティヴ、コステロはホテルのベルボーイという役割です。ただし、コステロがクビになるところから始まります。このホテルに泊まった著名な教授が殺され、アボットらが犯人を探すというストーリーです。
見所は、殺された教授の向かいの部屋に泊まっているインド人が、ボリス・カーロフというところで、カーロフが出てくるだけで恐い映画になるところはさすがです。「Abbott and Costello Meet Jeckyll and Hyde」でも共演したカーロフは、アボットとコステロのコンビにうまくはまっています。謎解きとしては、ミス・ディレクションも用意されており、ミステリ映画のファンに自信を持ってお奨めできるもの、かどうかは何とも言えません。
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「血を吸う薔薇」Evil of Dracula
「血を吸う」シリーズ第3作。
和製ドラキュラならこの人、岸田森のドラキュラものです。残念ながら、吹き替えの声はしゃがれ声で、岸田森の知的な雰囲気をぶちこわしていました。黒沢年男のほうは、イメージ通りの声です。全体に、吹き替え役者の水準が低すぎます。いちおう、東宝特撮の一つとして受けとめられているようです。
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Moontrap「ムーントラップ」
89年。「宇宙大作戦」のウォルター・ケーニッヒ主演。
アポロスタイルで月に着陸すると、そこにはすでに謎の建造物と敵がいた、という話です。出てくるメカや敵のデザインは、そこそこ魅力があります。ストーリー的には単純ですし、ケーニッヒも地味なので、主役に持ってくるには今一つですね。
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Sword of the Valiant
82年。アーサー王伝説の流れをくむ、剣と魔法ものでした。こういうのはあまり見ないのですが、緑の騎士をショーン・コネリーが相変わらずの濃い演技で演じていたので見てしまいました。
緑の騎士がキャメロットに乗りこんできて、ナイトの挑戦を受けようとします。持ってきた斧で自分の首を切り落とせ、もしその後に自分に力が残っていたら、今度は自分がその斧でお前の首を落とすぞという、とんでもない挑戦で、これに挑んだ主人公が見事に破れますが、命だけはしばらく預けられます。この主人公が冒険の旅に出るという、若者の成長の物語になっています。
後半になって、ピーター・カッシングが(悪い)領主の一癖ある大臣の役で出ています。年齢を重ねましたが、鬼畜ぶりを垣間見せてくれました。音楽は格好いいものの、何度も同じテーマが流れると飽きてしまいました。
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Arthur Conan Doyle's The Lost World (pilot)
新しいテレビシリーズの「ロスト・ワールド」の2時間パイロット版です。
「The Lost World」(1960) とほぼ似たような展開でした。いっしょに行く女性本人がスポンサーになっており、ゴージャスさとワイルドさの両方を兼ねた女性です。「守られる女性」というのは、もう現代では死滅したのでしょうか。また、1960年版では、ヘリコプターでロスト・ワールドに行ったのに対して、こちらでは気球に戻しています。CGI で恐竜を描いているところは「ジュラシック・パーク」と同様です。テレビシリーズとしては、平均以上の映像です。
最後、火山の中を通って元の世界に戻る代りに、洞窟が崩れ落ちて帰れなくなるという設定にして、連続テレビシリーズにするようです。たぶん最終回で、教授たちを探しに来た探索隊と戻るという締め方になるのでしょうか。
(追加)この後、1話1時間の連続ドラマが始まりました。パイロット版のストーリーを引き継いで、一行のロスト・ワールドでの冒険を描いていくようです。各話独立しているようですが、伏線を残すような終わり方にしています。なお、新聞記者が精悍な役者に変更されています。パイロット版では甘すぎたようで、妥当な変更でしょう。しかし、再放映の時に説明に困らないのかな??
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「ドミニオン」Dominion Tank Police
日本のアニメ「ドミニオン」OVA (古いほう)の英語吹き替えです。
日本版が4巻出たのを、二つづつまとめて全2巻に直しています。ED は、日本語のものを縮小して使い、開いたスペースに英語版のスタッフを流すという、なかなかいい感じでした。何も言うことはないのですが、ドクター役の人、なんと田の中勇さんに声がそっくりでした。目玉オヤジと同じ声の人が、アメリカにいたとはびっくり。
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Abbott and Costello Meet the Invisible Man「凸凹透明人間」
51年白黒。凸凹シリーズ、今回は「透明人間」です。
アボットとコステロの二人は、今回は探偵学校を卒業したての新米私立探偵という設定です。殺人容疑をかけられているボクサーから仕事を依頼され、彼の無実を晴らすために、コステロがボクサーになってリングで戦うという話になっています。このボクサーが、警察から逃れるために透明人間になって、例のとおりどたばたを繰り広げます。
ストーリーは「Invisible Man Returns」をなどったものですで、マウスが消えるシーンなどもフィルムを使い回しています。フランケンや「ジキルとハイド」に比べると、透明人間という題材はコメディに合っていると思いますが、私には今一つでした。
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Love at First Bite
79年。ジョージ・ハミルトンのコメディ・ドラキュラです。
正統派の「Dracula」(1979)と同じ年に作られて、こっちは完全なコメディです。ペンシンルバニアを追い出されたドラキュラが、ニュー・ヨークに行って、モデルと恋に落ちるというラヴ・ロマンスの形にしています。
ジョージ・ハミルトンのドラキュラはまずまずでしょう。特に、執事(虫食い男)が秀逸です。対するヘルシング教授の孫のローゼンシュタインは、なんか変過ぎでした。ドラキュラのパロディものの中では、水準以上のものがあると思います。
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Stepford Wives
75年カラー。女性運動などの高まりを背景にしたわけでもないのでしょうが、社会派っぽい Sci-Fi ホラーです。
ニューヨークから田舎の街 Stepford に引っ越してきた一家、周りの奥さんたちは保守的で、夫に従順な人ばかり、子供たちもおとなしい子供ばかりで、何か変に感じはじめます。この一家の奥さんを主人公にして、夫は頼りにならない状態で物語は進みます。今日の目からすると、だいたいどういう方向に進むかはわかるので、中盤長すぎるなあと思います。最後はあっさりしています。
ジョアンナの娘を演じた Mary Stuart Masterson (当時9歳)は、今も活動中です。原作は Ira Levin、脚本は William Goldman という「ローズマリー」コンビだけあって、しっかりしたドラマです。テレビシリーズも作られた、当時の話題作です。でも、夫に従順な妻ばかりなら、いいじゃないかぁぁぁぁ!!
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First Men in the Moon「月世界探検」
64年カラー。ウエルズ原作です。
アポロ計画が動き出している64年ということで、月着陸は司令船から着陸船が分離して行う、アポロ11号と同じスタイルが映像化されています。でも、アポロ11号の宇宙服や着陸船イーグルのほうが、はるかにかっこいいです。着陸した「国連」宇宙船の乗組員が、イギリスの国旗と記念文書を発見して大騒ぎになり、文書を読んでみると1899年にすでに月に到着していた人たちがいたことがわかり、その生き残りに話を聞くというスタイルを取っています。
重力を遮断するシールドを作って、それで月まで行くという奇想天外なアイデアなので、ある程度科学的考証には穴が開いています。それでも、とにかく月まで行く、月でいろいろ事件が起こるという展開で、後半今一つ盛り上がりに欠けました。アイデアは面白いですが、一本の映画にするには見所が足らなかったようです。ハリーハウゼンのストップモーションも、いつものなんとも言えない動きが見られませんでした。
アポロ11号の月着陸の際、「SF では幾度となく月着陸が描かれていたが、その模様がテレビ放映され、全世界の人が生で見るという描写をしたものはなかった」とよく言われます。この映画では、着陸の様子こそ映らなかったものの、乗組員の月での活動がテレビで生中継されていて、それをイギリスで主人公たちが見ていました。
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Cat People「キャット・ピープル」(1942)
42年白黒の、オリジナル版「キャット・ピープル」。
40年後に作られたリメイクは、異なるアプローチを取っており、リメイクのほうを支持する人も多い作品です。いろいろ示唆的な事件が起こっても、映像ではほとんど見せないというスタイルを取っていますので、評論家受けする割にファンからは受けないかもしれません。「ブレア・ウィッチ・プロジェクト」などが好きな人向けでしょう。
2年後に、続編「THE CURSE OF THE CAT PEOPLE」も作られています。主人公のレイナは同じシモーヌ・シモンですが、こちらはタイトルに反して、ホラー色がないようです。
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The Lost World「失われた世界」(1960)
60年カラー。コナン・ドイル「失われた世界」です。
25年にも映画化されており、そちらも名作と言われていますが、こちらも十分「古典」と呼ばれるだけの資格はあるでしょう。中盤の恐竜のシーンは、今の目で見ても水準の高いものです。
後半、ロストワールドからの脱出になると、やや平板な気がします。溶岩を映像にするのは、この時代でなくても難しいでしょう。
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Abbott and Costello Meet Jeckyll and Hyde
53年白黒。アボットとコステロによる、凸凹シリーズ。
今回、アボットとコステロは、ロンドンのダメなおまわりを演じます。二人が出てくる以外は、ほとんどジキルとハイドの物語が進行しており、二人はその中の狂言回しという形です。なんといっても、ジキル博士=ハイドを演じているのが、ボリス・カーロフというだけあって、カーロフが登場しているシーンは、正当なホラー映画そのものです。もう一つの見せ場が、女性運動家たちのアジシーン、彼女等のダンスと歌も十分楽しめます。
残念なのが、ハイドのメイクアップ。ただのゴリラにしか見えません。変身シーンも平均ですが、そういう所を見せる作品ではないので、かまわないでしょう。カーロフのジキル姿だけでも十分、ホラー映画のファンに自信を持ってお奨めできるものです。
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Abbott and Costello Go to Mars「凸凹火星探検」
53年白黒。テレビでも人気者となったアボットとコステロによる凸凹シリーズで、一番 SF 色の強いもの。
火星ロケットに乗り込んだアボットとコステロが、たまたま発進してしまって、宇宙の彼方に行ってしまうというストーリーです。タイトルに偽りありで、火星には本当は行かないのですが、単純なギャグ映画というわけでなく、SF 映画としても押さえるところはきっちり押さえています。ロケットの発射シーン、無重力シーンなど、SF をわかった人がきちんと作って、なおかつコメディ映画に仕上げています。
ミス・ワールドのノミネーター(ミス・ステイト)が多数参加しているところなど、キワモノ映画ぶりを発揮していますが、B 級 SF 映画ファンに自信を持ってお奨めできるものです。
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Dracula (1979)
比較的マイナーな、フランク・ランジェラのドラキュラです。
音楽が当時絶頂のジョン・ウイリアムズ、ヘルシング教授はローレンス・オリビエと、惜しみなく人を使っており、それなりに力を入れて作った作品だと思いますが、いかんせん、ランジェラのドラキュラは美しくはあっても、怖さに欠けました。また、襲われる女性たちにも魅力が足りません。
映像的には、霧の中から現れるドラキュラ、蝋燭を多用した城の内部など、見るべきものもあります。「悪魔城ドラキュラ」ファンには勧められるかも。でも、やっぱり主役がイマイチだと、ドラキュラ映画は成り立ちません。
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Carrie「キャリー」
76年。主演のキャリーことシシー・スペイセクと、母親役のパイパー・ローリーがそれぞれアカデミー賞の主演女優、助演女優にノミネートされた、学園超能力ものの定番です。
いじめられっ子が超能力を持ったらどうなるかというのは先が決まっていますが、キャリーの影の薄さ、宗教にいがんだ母親の存在などで、薄っぺらなドラマにならず、青春ものとしてリアリティのある映画になりました。
「サタデー・ナイト・フィーバー」で大スターになる直前のジョン・トラボルタがキャリーをいじめる悪役女子高生の彼氏で出ていたんですね。冒頭のシャワーシーン、日本で公開されたものはボカシがかかっていたのだろうと思われます。
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Destination Moons「月世界征服」
50年ながらカラー。ロバート・ハインラインの「宇宙船ガリレオ号」を原作にした、黄金の50年代の冒頭を飾るにふさわしい名作です。
映画の中で、ロケット打ち上げの原理を説明した映画内映画が楽しい。ウッドペッカーを使って、それだけでも短い科学映画に仕上げています。
アポロ11号から20年前とは思えないほど、科学的にも考え抜かれたストーリーです。NASA と違って、民間の力で月にロケットを飛ばそうという設定は、いかにもハインラインらしいものです。政府は発射反対にまわっています。
途中での無重力状態の描写も、カメラワークと役者の演技だけで成り立たせているのも凄いです。特に主役のジョン・アーチャーは、うまく無重力状態の動きをみせていました。また月の描写も的確で、書き割りながらも美しい映像を見せていました。ロケットを月に飛ばすだけという映画ですが、月に人間を送る試みが中断されている現在、今なお魅力ある作品です。
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「ノストラダムスの大予言」Last Days of Planet Earth
74年東宝。日本ではソフト化・テレビ放映が困難な作品として有名。
英訳は複数あるようですが、意訳されていました。タイトルはおそらく日本語タイトルが出る直前の絵にかぶせて、静止させています。吹き替えで、英語のしゃべれる丹波哲郎は本人の声を期待しましたが、変えられていました。
問題のニューギニアのシーンは、「調査隊の一人がヒルにかまれて、その夜に狂い始める」「キャンプに狂人集団が襲いかかり、銃で撃退」「態勢を立て直して追跡、洞窟の中に意識不明の先遣隊を発見、丹波哲郎が射殺」という展開でした。英語がわかりませんでしたが、発狂したのは放射線のせいなのか、ヒルのせいなのかわからず、あまり問題なさそうです。また、核戦争後のシーンは、「ミュータント(子供)が登場」「うなぎに驚く」「もう一人のミュータントと取っ組み合いする」で終わっています。序盤で、畸形児が生まれるシーンは、レントゲン写真を眺めるだけでした。本上映では畸形の赤ちゃんが映像化されたんでしょうか? これらに比べるとどうでもいいことですが、由美かおるはほとんど肌を見せていません。
BGM は、少し減らされているのかもしれません。テーマアレンジが繰り返し使われているだけでした。また、ナレーションが会話にかぶるシーンが何度かあったので、海外版作成の歳、説明不足と思った部分をナレーションで補ったものと思われます。上映されたものと比べ、当然カットが入れられていると思われますが、この形でソフト化に問題があるとは思えません。1999年7月は過ぎましたし、傑作とまではいきません(日本沈没や世界大戦争からの流用もあるような気がします)が、十分見る価値のある作品だと思います。
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Last Man on Earth
64年白黒。ヴィンセント・プライス主演。リチャード・マジスンが脚本に参加していますが、作品の出来が不満で、クレジットではペンネームが使われています。そのせいか、並み以下という評価が多いと思うのですが、私はこういうの好きです。
「The Omega Man」 より10年前の映画ということで、時代的にも10年ほど前の 1968 年を舞台にしています。1965 年に世界規模の疫病が起こり、人類のほとんどがゾンビと化したという設定です。「ナイト・オヴ・リビング・デッド」の4年前の作品で、ゾンビがのろのろと動く様子は恐怖感こそありませんが、ゾンビ映画としてももう少し評価されてもいいかもしれません。ゾンビの特徴づけが不明確で、鏡とにんにくに弱い、心臓に杭をさされると死ぬ、などバンパイア(ドラキュラ)的扱いをされています。
プライスはさすがの存在感ですが、ゾンビたちにリアリティが欠けます。ヘストンが高級マンションの最上階に住んでバンパイア対策に余念がなかったのと違って、数で力押しされれば簡単に壊されてしまいそうな家に住んでいます。終わり方は「The Omega Man」と似て非なる結末です。いい主役とよくできた脚本があれば、いい映画ができるはずなんですが、それを支える周りが弱かったと思います。
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Panic in Year Zero!「性本能と原爆戦」
62年白黒。レイ・ミランドが主演と監督を兼ねています。
日本語題はなんとも強烈ですが、「性本能」が「原爆」的に爆発するわけではありません。核戦争でロス・アンジェルスなどの都市が破壊され、治安が乱れた中、レイ・ミランド一家が生き延びようとするストーリーです。レイ・ミランドは相変わらず、適当に鬼畜で、適当に善良です。保守的なアメリカ人の典型なのかもしれません。
ストーリー的には、冷戦時代の「ザ・デイ・アフター」ものとして平均でしょう。人類が壊滅するほどのことはなく、一時的に治安維持が空白状態になった中でのサバイバルが描かれています。他のレイ・ミランド作品に見られる珍妙さがないので、妙にがっかりしてしてしまいます。
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The Omega Man「地球最後の男/オメガマン」
71年カラー。チャールトン・ヘストン主演です。
「Last Man on Earth」と同じ原作を使っています。チャールトン・ヘストンが光に弱いバンパイアたちが夜の街を支配する世界で、一人生き残っているという近未来(1975年)ものです。73年に世界戦争があって、細菌兵器(?)で人類が全滅し、一部はバンパイアになってしまいます。
チャールトン・ヘストンは、いかにもヘストンしていて良いのですが、それ以外に見るべきところが少ないです。バンパイアの描写も平均的です。終末ものとして、可も不可もなしという感じです。
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When Dinosaurs Ruled the Earth「恐竜時代」
70年カラー。「恐竜100万年」から3年後に作られた、ハマー・フィルム製作の非ホラー映画です。
生贄にされそうになったヒロインが逃げ出して、別の集落に逃げ出しますが、そこでも彼氏を取られそうになった女性から追い出され、またまた逃げ出す中、ストップモーションで作ったさまざまな恐竜が現れてきます。とにかく「ディノザウルスが地球を支配していた時代」ですから、会話も「アキタ」「ニクル」と原始語でずっと続きます。ちょっと聞いていて疲れます。
主演のビクトリア・ヴェトリは68年のプレイメイトで、彼女を見せるのが大きなポイントでしょう。ラストシーンは迫力がありますが、全体に単調です。
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She「炎の女」
65年カラー。
「She」という題名の映画は他に3本くらいあって、特に、80年代のは SF 映画史上に残るワースト・ムービーの一つとして有名です。これはハマー・フィルム製作のもので、カッシング、リーのおなじみのメンバーも重要な役どころで出ていますが、ホラー映画ではないせいか、クリストファー・リーはあまりそれらしく見えません。カッシングとリーの対面シーンはあまりないのですが、お互い慣れているのか、もう目で分かり合っているような感じです。
2000年前の女王が、自らが不死になる原因となった男性の生まれ変わりに出会い、再び愛し合おうとする話で、全体の雰囲気は失われた財宝探しという感じです。砂漠の旅、現地人との軋轢、失われた王国でのトラブルなど、押さえどころをしっかり押さえており、古代王国のセットも上手に作ってあります。
続編が作られているだけあって、ハマー・フィルムの非ホラー映画としては、最も優れたものの一つでしょう。女王を演じたのは、3年前の「ドクター・ノー」でボンド・ガールとして名を残したウルスラ・アンドレスです。
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Time Travelers「タイム・トラベラーズ」
64年カラー。
タイムトラベルの研究をしていた科学者たちが、たまたま160年後(?英語聞き取れなかった)の世界への窓を開いてしまい、未来へ旅立ってしまう話です。60年代ということで、未来社会は核戦争によって滅びてしまい、ミュータントと化した原始人と地下にほそぼそと隠れ住む文明グループに分かれているという設定は「World Without End」などと共通するものです。単なる終末世界ものにとどまらず、未来人グループが、生活できなくなった地球を捨てて、(毎度おなじみ)アルファ・ケンタウリへ脱出を図ろうとするというのが、ちょっと変わっているかも。このロケット建設の部分は、「地球最后の日」の影響を受けています。
未来人社会の描写は暗いですが、アンドロイドの製作シーンなど、ところどころ面白いところがあります(BGM は遊びすぎ)。現代人は、タイムマシンを作りなおして過去に戻ろうと試みるので、時間ものとしても工夫を凝らしていますが、あまり成功したとは言い難いです。終末世界もの、脱出もの、時間ものなど、いろいろなジャンルから既存のアイデアを借りてきて一つにまとめてきた映画です。
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