従来(基準法改正以前)は、木造軸組工法の建物では「雑壁効果」として、建物全体の耐力の1/3は雑壁が受け持っているとしてきた。これは筋かいが主な耐力要素の時代で面材がそれほど重要視されていない時代の見解であったといえるだろう。
この仮定は壁量計算でも取り入れれられていて、木造の住宅を設計する場合は暗黙のうちに雑壁効果を利用させられていた。しかし、この1/3という値は実大実験や過去の被害統計から推定された値で、個々の建物全てについて検証されているものではない。
最近では軸組工法の住宅の形態は多様化している。窓の垂壁類に限っても、窓の大型化や、通風のために窓上部にさらに開口(欄間等)が設けられたりする場合(図3)があり、1/3という雑壁効果の仮定が成り立っているか不明な場合もある。
さらに面材耐力要素である耐力用としてのいわゆる新合板(OSB、MDF等)が出現し、以前に比べて格段に面材を使ったパネル化が進んでおり、従来の1/3のおまけ(雑壁効果)が2倍も3倍にも多くなって来ているのが現状である。
このような状況に対応する為には、雑壁類も耐力要素としてきちんと検討する必要があるといえる。
こうした現状を踏まえ、改正後の建築基準法では壁量から雑壁の寄与分が除かれている。しかし、評価方法の見直しや金物仕様の強化を理由に、壁量や壁倍率の数字上では全く変化がない。木造の構造の考え方の大きな変化があったにもかかわらず、見た目は変わらないため世間一般には知られていないという奇妙な状態になっているのは問題である。