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No.6 木造住宅における接合金物の施工上の注意点

2003年6月


1−2 なぜ接合金物をつけるのか(告示1460号の解釈)

'00年(平成12年)に、建築基準法が大改正され、構造耐力上主要な継ぎ手・仕口には国土交通大臣により緊結方法が定められた。

その方法とは、前述のZマーク表示金物を使用することが前提とした内容となっており建築基準法・令・告示1460号に定められている。

改正前までは、設計・施工監理者等の判断により「その部分の存在応力を伝えるように緊結しなければならない」としか定められていなかった。

しかしながら多くの設計・施工監理者等は「存在応力」の大きさがわかっていない為に、全く仕口が緊結されていない接合部や耐力の低いかすがい打等で緊結される場合が多々あった。

その結果、阪神淡路大震災では耐力壁の性能を100%発揮する前にその周辺の軸組の接合部が「存在応力」を伝えきれず、軸組がバラバラになり木造住宅の多くが倒壊する要因となった。

そこで改正基準法では、「存在応力」がわからない設計・施工監理者等に対しては仕様的な緊結方法を提示し、また同時に「存在応力」の簡易的な計算方法(N値計算法)も提示した。

さらに詳細な検討(許容応力度設計)を行えば、告示1460号による接合金物仕様より、耐力の小さな金物にすることや設置個所数が減らせることが可能となった。

これからの設計・施工監理者等は金物の数が増えたことによる施工単価の費用よりか人命の方が断然高いことを認識し、「存在応力」の意味や接合金物の意義がわからない場合は、告示1460号を必ず準拠することが二度と同じ過ちを起こさない為の義務となる。

同時に詳細な検討(許容応力度設計法による詳細法の検討)を行えば、個々の建物の仕様から適切な接合金具が選択できる。

しかしながら、接合金物は闇雲に設置しても、耐力は比例して向上しない。きちんとした正しい施工方法で取り付けられることによりその性能が発揮される。(写真1、写真2)

木軸部材に金物を設置する際に発生し易い「割れ」は、接合部の性能を極端に低減させる。

それを防止する為には 、あらかじめ予備穴を設けたり、接合金具と母材側との端距離・縁距離を十分確保する等のちょっとした手間・工夫をかけることでかなり「割れ」を防止できる。

そのような努力をしない人に限って、「改正基準法にならって金物をたくさん設置する方が、木が割れ易くなり、余計に弱くなる」という安易な発言をすることが多い。

接合金物が全ての問題を解決する要素ではないが、現在のところ、コスト的に安く合理的に出来、性能を担保する方法としては、金物を使用しない接合方法(伝統的接合方法等)よりも良いといえるが、金物も使い方によっては、危ない破壊を誘発する恐れもあるし、木材に対して劣化等を促すこともあるだろう。

しかし、法律で定められた以上は、守ることが法治国家のルールであり、欠陥問題を無くす第一歩と思われる。


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 ©Tahara Architect & Associates, 2003