従来、木造建物の床の構造的な役割は認識されていなかったが、「住宅の品質確保の促進等に関する法律」の整備によって「床倍率」という概念で水平構面である床の重要性がようやく認識され始めた。
そのような状態なので、旧建築基準法で設計・施工された20世紀の木造住宅にはその認識が非常に低い。
また、現行の多くの耐震診断法でも床の性能のチェックがないという問題がある。
壁量計算を含めた建物の構造設計では、床面は完全に一体となって変形は無視できることを前提としている。
前項の壁の「バランス」の良い配置(=偏心率を小さくする)等の規定もそのことを前提としている。
つまり、偏心率が大きい場合、上下階で耐力壁の位置が違う場合や前項で触れたような建物の形状が複雑な場合は、地震や風がくると屋根面や床面を力が伝って全体として抵抗する。
そして、強度が足りなければ建物が潰れる。
吹き抜けを作ると、その部分の床の強度が小さくなる。
それだけでなく、吹抜けのまわりにある梁の接合部(強度が弱い)を補強する効果もなくなる。
その事を頭に入れて、耐力壁や接合部などの配置を慎重に検討されている必要がある。
また、隠れた吹抜にも注意が必要となる。
階段や、PS(パイプスペース)、天窓その他の力を負担できない箇所は吹抜けと同じである。
セットバックした下屋の屋根の部分が、2階からの水平力を1階の壁に伝達できず壊れた例が多くある。