いよいよ性能規定の時代が始まろうとしている。
木造でも大変形時(終局時)の建物の挙動を考えて設計をすることが主流となってくるだろう。
大変形時に一番危険になるのは急激(脆性的)な破壊がおきる場合である。
たとえば接合部が外れてしまえば、最悪、建物として立っていることすらできなくなるし、そうならなくても、梁などがはずれて落下すれば内部にいる人間が危険である。
そういった危険を避けるためには、補強金物はきわめて重要である。
職人の間では「ナットがすぐにゆるむので、金物なんか当てにならない。」といった声を聞くが、ボルトが外れなければ壁倍率は下がるが木材がはずれないので、人命に影響を与える事はないのである。
耐力壁の場合、1番問題になるのは柱脚部である。
・ 水平力としてどれぐらいの大きさが想定されるのか。
・ 浮き上がりの押さえ込み力として階上の建物重さ等はどの程度期待できるのか。
・ 柱脚部は浮き上がり力が生じるのか、その大きさはどのくらいになるのか。
・ 接合部の強度は十分あるか
・ その結果として補強金物が必要になるのか。
木造住宅を設計する場合、耐力壁とそこに使われる金物については最低限これらのことよく考える必要があるだろう。
このようにして、他の部分についても、個々の部位の性能をきちんと設計することで建物全体の性能を把握することができるようになる。
そうなれば、建物の構造安全性能を施主に数値の形で目安を示し、相手の望む性能であることを理解してもらえるようになるだろう。
参考文献
*1 財団法人日本住宅・木材技術センター、木造住宅実大振動実験報告書、1996.8
*2 建築技術1997年9月号
*3 村上・稲山・田原他、日本建築学会、1998年度大会梗概集
在来軸組工法木造住宅の構造設計手法の開発その1〜その13、1998.9
*4 村上・稲山・田原他、日本建築学会、1999年度大会梗概集
在来軸組工法木造住宅の構造設計手法の開発その14〜その22、1999.9
*5 建築知識1995年12月号、補強金物と施工のポイント
*6 (財)日本住宅リフォームセンター、木造住宅の耐震性向上リフォーム 基礎編、1996