耐力壁が水平力をうけると、耐力壁の内部には力の釣り合いからさまざまな応力が発生する。
このとき柱の足元や筋かいに引き抜き力が発生するが、普通の公庫仕様で作られた、耐力壁が取付く柱の接合部は大きな引き抜き力が発生した場合、それに対して木材のみでは対処できないことがある。
そこで耐力壁が大きな水平力をうける場合は金物による補強が必要になってくる場合がある。
筋かいの金物による緊結方法は下記のような仕様が金融公庫等により定められている。
1. "ひら金物"による、柱及び横架材への緊結(柱及び横架材に大入れの上、N75 3本斜め打ち)
2. "筋かいプレート"による、柱及び横架材への緊結(柱及び横架材に突き付け、角根平頭ボルト締め)
3. "N75釘5本の平打ち"による横架材への緊結(一部かたぎ大入れ、一部びんたのばし)
4. その他建設大臣が認めた工法等による。
以上の4点が大体筋かいの接合部を緊結する方法の仕様である。
ここで注意したいのは筋かいの耐力は引張りと圧縮では違うということである。
壁倍率を決める試験体は幅一間(182cm)の試験体でそのうち半間(91cm)が引張りで残り半間が圧縮できくように筋かいを山形になるようにセットして試験を行っていて、壁倍率は押しと引きの平均で決まっているのである。
たとえば、筋かい30×90の片方向筋かいを一間(182cm)の柱間に設置する場合、所定の筋かいプレートをつけても接合部の引張り耐力が小さく、引張り筋かいだけの場合壁倍率に相応する水平力でも耐えられない可能性がある。
この事が現場では理解されていない場合が往々にしてあり、行政や研究者の広報不足があるかもしれないが、筋かいを使う上でのあまりにも基本的な原則が周知されていないのが現状である。
とくに昭和50年代ではロまたはハの仕様が大半を占めておりこの仕様では引張り力が作用したときに不安がある。
阪神淡路大震災以後やっと筋かいの端部における金物の重要性が叫ばれるようになり、適切な筋かいプレートが使用され始めたが、まだまだ施工現場においては問題点が多く見受けられる。
さらに、伝統的木造住宅においては真壁造が基本でありそれに対して筋かいを設けない事には建築確認や金融公庫の検査も許可にならないのでとってつけたように三つ割筋かいが接合金物なしで露出して釘打ち止めされているのが見受けられるがこれは引っ張りにも圧縮にも効かない危険な筋かいの使い方である。
筋かいを露出して使うという事は座屈に対して抵抗する要素が少ないとうことであり、特に三つ割筋かい程度では露出して使用すると、所定の壁倍率相当の水平力でも座屈してしまう可能性がある。