木構造建築研究所 田原

本ページの内容は2004年改訂版の耐震診断法に関する説明です。2012年改訂版の内容には対応していません。
2012年版については「耐震診断ができる、わかる。耐震補強マニュアル」をご覧ください。

2.3.2-3 劣化度による低減係数 D

一般診断法の劣化度の判定は下のチェックシートを使って行います。チェック内容は構造に直接影響すると思われる箇所を中心として、外観によりチェックできる箇所を主体にチェックしています。

チェックは次のような手順で行います。

(1)存在点数のチェック
調査建物についてチェック対象部位をチェックし、表の存在点数欄でチェックされた箇所の数字を合計して合計欄に記入します。(築年数により点数が違うので、適切な方でチェックします。)
(2)劣化点数のチェック
調査建物のチェック対象部位について劣化の有無をチェックし、表の劣化点数欄でチェックされた箇所の数字を合計して合計欄に記入します。但し、築10年未満の建物で対象部位に劣化が見られた場合は、築年数10年以上の建物として再度(1)から集計をやりなおします。
(3)劣化点数の算出
(1 - 劣化点数/存在点数)0.7のうち大きい方を劣化点数Dとします。
老朽度の調査部位と診断項目
部位 材料、 劣化事象 存在点数 劣化
部材等 10年未満 10年以上 点数
屋根
葺き材
金属板 変退色、さび、さび穴、ずれ、めくれがある 2 2 2
瓦・スレート 割れ、欠け、ずれ、欠落がある
軒・呼び樋 変退色、さび、割れ、ずれ、欠落がある 2 2 2
縦樋 変退色、さび、割れ、ずれ、欠落がある 2 2 2
外壁
仕上
木製板、合板 水浸み痕、こけ、割れ、抜け節、ずれ、腐朽がある 4 4 4
窯業系サイディング こけ、割れ、ずれ、欠落、シール切れがある
金属サイディング 変退色、さび、さび穴、ずれ、めくれ、目地空き、シール切れがある
モルタル こけ、0.3mm以上の亀裂、剥落がある
露出した躯体 水浸み痕、こけ、腐朽、蟻道、蟻害がある 2 2 2







木製板、合板 水浸み痕、こけ、割れ、抜け節、ずれ、腐朽がある   1 1
窯業系サイディング こけ、割れ、ずれ、欠落、シール切れがある
金属サイディング 変退色、さび、さび穴、ずれ、めくれ、目地空き、シール切れがある
外壁との接合部 外壁面との接合部に亀裂、隙間、緩み、シール切れ・剥離がある   1 1
床排水 壁面を伝って流れている、または排水の仕組みが無い   1 1
内壁 一般室 内壁、窓下 水浸み痕、はがれ、亀裂、カビがある 2 2 2
浴室 タイル壁 目地の亀裂、タイルの割れがある 2 2 2
タイル以外 水浸み痕、変色、亀裂、カビ、腐朽、蟻害がある
床面 一般室 傾斜、過度の振動、床鳴りがある 2 2 2
廊下 傾斜、過度の振動、床鳴りがある   1 1
床下   基礎の亀裂や床下部材に腐朽、蟻道、蟻害がある 2 2 2
合  計      

一般診断法における劣化度のチェックは、内外観からチェックできる項目を主体として、構造耐力に直接影響を与えると考えられる項目を抜粋して、短時間で調査を行うことを目的として作られています。

チェック内容が築10年未満と以上で分けられていますが、これは築10年未満の建物では劣化の発生確率が極めて低いという研究結果等から、短期間では構造体の劣化に影響しない項目(バルコニー手すり壁等)をチェック対象から省くためです。

©2005, tahara architects. last modified 2005/01/07