木構造建築研究所 田原

本ページの内容は2004年改訂版の耐震診断法に関する説明です。2012年改訂版の内容には対応していません。
2012年版については「耐震診断ができる、わかる。耐震補強マニュアル」をご覧ください。

2.2 基礎・地盤の診断

立地条件(地盤)と基礎の性能は建物の性能に影響を与えますが、建物上部構造の耐震性能とは必ずしも相関していない面があります。

そのため、軟弱地盤による地震動の割増効果と基礎梁の曲げ体力以外は上部構造の診断に反映させず、立地条件・基礎に関する注意事項として指摘するにとどめています。

立地条件に関する診断

調査結果にもとづき、下記の分類に従って区分します。

地盤施されている対策
よい 
普通 
悪い地盤改良
杭基礎
対策無し
地形施されている対策
平坦・普通 
がけ地・急斜面コンクリート擁壁
石積み擁壁
対策無し

地盤の良し悪しや地形が建物に及ぼす影響は、様々に考えられますが、発生する現象によって分類すると (1)鉛直支持能力の不足(沈下)、(2)地震動の増幅効果、(3)地盤の破壊 の3つにわけて考えることができます。

以下に各現象の分類について解説と注意すべき事項を示します。

鉛直支持能力の不足(沈下)

建物の全重量を基礎底面の面積で割った値を地反力といいます。地反力が地盤の耐力を上回ると支持力が不足する可能性があります。

また、地盤が軟弱な場合、建物に不等沈下が生じるなどの問題が発生する可能性があります。

しかし、耐震性に関しては直接的に上部構造に影響するわけではないため、上部構造の評価には反映しません。

支持能力に関しては次のようなことが考えられます。

私見ですが、木造住宅程度の重量が2階建で1.5t/m2程度であることを考えると、強固な基礎梁で建物が一体化されている建物であれば鉛直支持能力が問題になることは少ないと思われます。

地震力の増幅

沖積層などの軟弱な地盤において、地表の地震動が基盤より増幅されることをさします。

建築基準法においては軟弱地盤における地震動の割増(令88条2項)として1.5倍に割り増されます。本診断法でも同様の扱いとしていて、この項目は上部構造の診断に反映します。

地震力の増幅と地盤改良との関係について次のような注意事項が考えられます。

地盤の破壊

液状化により支持力を失う場合とがけ地等が崩壊する場合に分けられます。

液状化が生じる場合
がけ地等の崩壊の場合
がけ地の危険性

基礎に関する診断

調査結果にもとづき、下記の分類に従って区分します。

基礎形式状態
鉄筋コンクリート基礎健全
ひび割れが生じている
無筋コンクリート基礎健全
ひび割れが生じている
玉石基礎 足固めあり
足固めなし
その他基礎
(ブロック基礎など)

基礎についても上部構造の耐震性能に直接影響を及ぼす項目とそうでない項目にわけられます。

直接影響を及ぼす項目については、低減係数として上部構造の評価に反映します。

その他の項目については、注意事項として注意を喚起します。

上部構造の耐震性に直接影響を及ぼす項目

上部構造の評価においては、基礎梁と柱脚金物により柱脚の浮上りが生じない場合を1.0(低減なし)としています。

そのため、基礎梁(又は足固め)の強度が小さい場合や金物類の引き抜き耐力が小さい場合は低減が必要となります。

これらをふまえて基礎は構造に応じて以下のクラス分けがされています。

基礎のクラス含まれる基礎の種類
I鉄筋コンクリート基礎(健全)
II鉄筋コンクリート基礎(ひび割れあり)
無筋コンクリート基礎(健全)
玉石基礎(足固めあり)
III上記以外

健全な鉄筋コンクリート基礎である クラスI を1.0(低減なし)として、数字が大きくなるほど低減が大きくなります。

具体的な数値は柱頭・柱脚金物のクラスと組合わせて与えられています。「2.3.2 保有する耐力の算定」の項を参照してください。

上部構造の耐震性に直接影響を及ぼさない項目

直接上部構造の性能に影響しないが、問題となる項目としては以下のものがあげられています。

©2004, tahara architects. last modified 2004/08/18