既存の木造住宅は、多くの場合、@〜Eまでで説明した問題点が1つ以上含まれていると思われる。
よって、机上の計算では必要壁量が満たされていても、各部分の劣化等により実際の性能はそれよりも低下している可能性がある。
特にB接合部、D老朽化及びE施工不良については、一般に表面からの目視では判断できないにもかかわらず、耐力不足の要因としては非常に影響が大きい。そしてそのことが既存建物の性能評価を難しくしていることは今までに説明したとおりである。
その他にも、一般的に認識されていないが、既存建物の構造については下記のような場合も注意しなければ、正確な性能の評価ができない。
古民家のイメージ |
古民家というと太い柱と梁が地震にも抵抗するようなイメージを持たれていることが多いが、例え柱・梁の断面が大きくても、水平力に抵抗できる機構が無ければ、柱単体での抵抗力はたかがしれている。多くの場合、水平抵抗力の主体はやはり耐力壁(土壁)である。
貫構造は貫の断面がそれなりにないと、耐力が発揮できないし、貫材のめりこみ変形などによって全体の変形も大きくなること、つまり剛性の高い現代式の内装は破壊してしまう可能性があることも認識して性能を評価しなければならない。
小屋裏の剛性 |
何度も述べているが、小屋裏と耐力壁が構造的につながっていることは重要である。特に瓦葺屋根は屋根重量が大きいので影響が大きく、地震時に屋根だけが変形してしまっている例もしばしば見受けられる。