構造計画・設計がきちんとされていても、施工がいいかげんになされていると、建物の性能が十分に発揮されない。
既存建物の構造性能を評価するにあたっては、施工状態による建物の性能の増減をどのように評価するかが問題となる。
しかし、内外装が行われた状態で外部から施工状態を確認することは難しく、資料等が無い場合は、推定により評価せざるを得ない場合がある。
後々のことを考えると、新築時にきちんとした監理を行い、資料を残しておく必要があるといえる。
例えば、震災直後の現場でも下記のような施工が見受けられた。
柱の下に換気口が。 換気も必要だが、構造耐力的に問題あり。 |
2箇所も柱の下に基礎が無く、宙に浮いて いる。両方とも遇角部なので問題あり。 |
また、デザイン・設備との兼合いで問題が生じる場合もあり、構造設計上の性能と実際の状況に違いが生じる可能性が有る。
各部納まりの調整・修正は、どうしても施工段階で行わざるを得ないことが多くあり、この段階で、特に設備との取り合いの調整で構造上の問題がしばしば生じている。
住宅設備の高度化にともない、配線・配管類は増大する一方となって来ている。構造−設備間で調整し、配慮しておくことが望ましいといえる。
配管によって土台が切り欠かれた例。 土台がほとんど切り取られてしまって、 土台が固定されていないのと変わらない 状況になってしまってる。 |
電気配管で耐力壁が切り欠かれた例。 弱電配管を2重床内部に収める際に、 耐力壁を切り欠いてしまった。 |
このように、施工時においては構造上の様々な不具合が生じる可能性があり、 このことも既存住宅の性能評価を複雑にしている要因である。