木構造建築研究所 田原


2. 20世紀木造住宅の耐震性

「兵庫県南部地震」後、2000年6月に建築基準法が大改正された。旧建築基準法での壁量計算では評価しきれなかった問題点がある程度改善され、これから21世紀の木造住宅の耐震性は飛躍的に向上したと思われる。


その裏返しとして、旧建築基準法で設計・施工された20世紀の木造住宅は下記のような問題点を抱えている。

メモ: 20世紀の木造住宅の問題点となるキーワード
@重い
Aバランス
B水平構面
C接合部
D老朽化
E施工不良
F耐力不足

(1)建物の重さの影響

木造軸組工法2階建までの建物では一般に、壁量計算と呼ばれる計算方法が用いられている。壁量計算では耐力壁の長さ(基準耐力に換算した壁長→Σ壁倍率x各仕様の長さ)と必要壁量と呼ばれる値を比較して耐力壁の長さ>必要壁量を確認する。

必要壁量は地震に対する必要な耐力を標準耐力で除して壁の長さに変換した値である。そのため、必要壁量はその建物の固定荷重(屋根・壁荷重)に比例するが、固定荷重を別個に計算するのは煩雑なので、標準的な建物仕様を想定した係数が与えられている。係数は、標準的な仕様の建物重量を床面積あたりに換算した係数の形で与えられ、必要壁量は係数×床面積で求められる。


  耐力壁の耐力の総和

建物質量に生じる地震力

耐力壁の耐力の総和建物質量に生じる地震力
基準耐力基準耐力
存在壁量床均し建物質量1m2あたりに生じる地震力X 床面積
基準耐力
存在壁量必要壁量の係数 X 床面積

この係数には軽い建物とそれ以外の建物の2種類が用意されている。が、それ以外の建物の仕様でも、シンプルな建物形状が想定され、仕上重量等が最も重くなる場合は想定されていない。

そのため建物重量がやや低めに設定されている。屋根形状が複雑なものや本瓦葺き(土有)に土壁等の伝統工法による建物の場合は、過小評価となる傾向がある。夏過ごしやすいように開放的な造りで重たい伝統工法は絶対的に壁量がたらず、倒壊した例が多くある。

その他に、多雪地域において積雪荷重が固定荷重に含まれていない為、冬季の地震に対して不安があることや、2階建ての必要壁量が「総2階建」をもとに設定されているため、不整形な建物で壁・屋根の面積が大きくなると、必要壁量が過小評価となる傾向があることがあげられる。

(しかしながら、多雪地域にて地震の被害が差ほどおおきくないのは、断熱対策による狭小の開口面積等が、功を奏していると思われる。)

被害を受けた土蔵の写真
大変形が生じた土蔵
けらば部分が崩落し、建物全体も変形している。


©2003, tahara architects. last modified 2003/06/26