道後温泉の苦闘
日経新聞 2005.6.20から要約
道後温泉(松山市)が厳しい状況に直面している。
他の観光地との競争激化や景気低迷を背景に宿泊客が減少。七月にはシンボル的存在である公衆浴場「道後温泉本館」の料金を約20年ぶりに引き上げる予定だ。

道後温泉の2004年度の宿泊客は約81万6千人で、2003年度から約4万人近く減った。今年度は愛知万博の影響が必至だが、80万人台を守りたい」と焦りを隠さない。
市が温泉本館の料金を引き上げるのはこうした逆風のさなか。最も一般的な「神の湯階下」コースは百円増の4百円になる。
料金値上げの最大の理由は、築百年以上になる本館の保存修復だ。

一方で、新しい動きも活発になってきた。
松山市は来春にも、本館前の道路(幅11m、長さ30m)を歩行者専用にする。
現在は1日平均5千台以上の車が走り、写真撮影に邪魔なばかりか危険でさえあるためだ。
合わせて、アスファルトを石畳に変わる。電線も地中に埋め、風情のある空間にする方針だ。

また、民間主導の街づくりも始まり、和ガラス300点を展示する「道後ぎやまんの庭」が1月に開業する。
NPO法人のアジア・フィルム・ネットワークは本館から徒歩数分の「ネオン坂」通りに雑貨や衣料などを扱う青空市を開き、将来はコミュニティFMや喫茶店も誘致して活性化を目指す。
さらに7月からは日曜朝市を始める。
さまざまな取り組みが実を結び、観光客の減少に歯止めがかかるか・・・。
歴史ある道後温泉が今、正念場を迎えている。
この道が歩行者専用となり、石畳が敷かれる入浴は午後4時〜6時の時間帯は避けた方がよい。
地元の人は、こちらの「椿湯」(記事準備中)にくる。
(道後温泉本館)
道後温泉本館は、公衆浴場としては唯一の重要文化財だ。
巨大なコンクリートの旅館・ホテル群に囲まれた入母屋造りの本館は、道後温泉のシンボルに相応しい豪壮な造りで、日本三古泉の歴史の重みを感じさせる。


しかし、配管をはじめ、内部はかなり痛みが激しくなっている。
また、内部の構造が複雑で客が迷う、公務員である本館従業員の所得が高い割にはサービスが悪い、女性用の風呂が男性用より小さい、入浴客が午後4時からの2時間に集中し、大混雑してクレームが多い、など、ハード・ソフト両面で、改善すべき点も多い

(資料:道後温泉審議会議事録)
(道後温泉)
道後温泉は松山市の中心部にほど近く、都市部の大温泉街だ。
高層の旅館・ホテルが建ち並び、緑も無くて、今時代が温泉に求める「癒し」からはほど遠い。
それだけに、道後温泉本館の役割が大きいが、記事の通り、本館前の交通量が多く、記念写真の撮影もオチオチ出来ない。この現状に対して、道路を歩行者専用にすることなどを検討しているのは当然だろう。

道後温泉は、「しまなみ海道」が開通した1999年に130万人の宿泊客があって、前年比で20万人以上増加した。
しかし、経済効果は1年のみで、2000年は開通前とほぼ同じ、それから減少の一途をたどり、2004年は約80万人すれすれまで減少した。
これにより旅館閉鎖が相次いでいる。

道後温泉の宿泊客の8割弱が旅行会社からの送客で、これは日本で一番団体客比率が高い温泉地である。
旅館の一部では、個人客への対応を進めて部屋の改造などを行っているようだが、道後温泉は「団体・歓楽」から「個人・癒し」の時代変化への対応が、明らかに遅れている。
(資料:道後温泉審議会議事録)
「ネオン坂歓楽街」
ネーミング自体が時代遅れでは?