法隆寺大講堂保存修理工事’09.11.17
平成21年11月17日高田良信師のご好意で修理中の大講堂大屋根に入れてもらい修理の状況を見学させていただいた。都合で見学できなかった会員の皆様に写真を添えて報告します。(DATAは修理を担当している奈良文化財センターの資料を参考とした)
1.修理の概要
  屋根葺き替えおよび部分修理(屋根葺替、屋根野地・下地の補修、壁補修、塗装補修、軒  
  内床面の補修)
2.工期  平成21年4月1日〜平成23年3月31日

3.事業費   総額     :2億6千万円
         平成21年度: 1億1千万円
         平成22年度: 1億5千万円
4.建物の特徴
 現在大講堂が建つ位置には当初食堂が建てられ、天平19年(747)以降に講堂に転用したものと考えられる。前身の建物が延長3年(925)に焼失後、正暦元年(990)に再建された。当初は桁行8間で、後世に西庇が増設され、元禄年間の修理でそれを取り込んで九間堂とした。
 また、この建物では、下から見えている軒の化粧垂木の上に軒をはねあげる構造材を一本置き、その上にさらに野垂木をかけて屋根を葺いている。このように化粧垂木と屋根の間に隙間を作ったものを野屋根という。この野屋根は平安時代に考案されたが、大講堂は野屋根を持つ現存最古の建物である。
年号 西暦 建立および主な修理の経過
延長3年 925 前身堂焼失
正暦元年 990 再建
久安2年 1146 軒廻り、屋根、壁などの修理
建永元年 1206 土間床を板敷きに変更
貞応2年 1223 板敷きを土間床に復する
応永12年 1405 軒廻り、屋根葺替修理
慶長8年頃 1603 妻飾り、小屋根、屋根、戸口などの修理
元禄年間 17世紀末
西庇を取り込み九間堂へ
昭和13年 1938 全解体修理
5.破損状況
 昭和13年の大修理において正面の屋根(南側)は新しい瓦で葺き替えたが、その他の屋根面は古い瓦を用いて葺いてあった。古い瓦は推定江戸時代、古くは鎌倉時代の瓦も使われていたようだ。特に北側の屋根は日当たりも悪く常に湿っている状態であり冬季には凍結などの影響で割れや、葺土の劣化による瓦のずれが生じていて、銅板を差し込んでかろうじて雨漏りを防いでいる。その他軒廻りに雨漏りによる腐朽、塗装の剥がれが見られる。
5.写真による説明

正面(南側の屋根

東側入母屋の屋根

丸瓦ガすべて取り外され平瓦が並べられている状態

葺土が完全な状態で残っている部分

この番号は昭和大修理のときのものか?

軒丸瓦のところでずり落ち防止のため20cmくらいの銅製の長釘で止められている。

ひびの入っている丸瓦。すべて仕分けられている。

丸瓦をとめる銅製の釘

正面東側のそりのある部分

素屋根の構造。すべて杉の丸太を現地で曲げ加工して作られている。このように人力で曲げるため何本もの杉丸太が折れてしまったとか。

瓦は約4万枚使われている

屋根の上から見た西院伽藍

上御堂東側の土塀には葵紋と桂昌院の家紋の軒丸瓦があった。(元禄時代のものか)

南面西側から平瓦をはずし始めている。

鬼瓦

上から見た鐘楼


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