ちびナスへ
この手紙がお前に届くころ、俺は恐らく海に還っている事だろう。
だから、これが最初で最後の手紙だ。読んだら破くなり、燃やすなり、好きにするといい。
俺が死んだら、バラティエの資産はすべてお前の名義に変えておく様、手配をつけておいた。
店の経営はパティ達がするから、お前は何も心配しなくていい。
お前が店を要らないなら、もう処分してもいい。
無理に店を継ぐ必要もない。お前のやりたいようにやれ。
やりたいように生きたから、何も心残りはない。
ただ、お前の事だけが今になって気にかかって仕方ない。
それで、面倒くさいと思ったが、俺からの遺言だと思ってこうして手紙をしたためている。
お前は、すぐに自分の命を軽く考える癖がある。
人の命も大切だが、自分の命もひとつしかない事ぐらい、いいかげんに理解しろ。
お前の命はお前だけのものじゃない。
あの時お前を助けたのはおまえの命がちっぽけなものじゃなかったからだ。もっと、自分を可愛がってやれ。
俺の夢を奪ったとお前は思っているようだが、何時までもそんな寝ぼけた事抜かしてんじゃねえぞ。
俺はお前からたくさんのことを与えられた。
お前と出会えたから、奪うばかりの人生から人へ与える事の出来る人生を送る事が出来た。
そして、それは俺にとってはもったいないほど幸せなことだった。
こうして、満ち足りた気持ちでいられるのはお前が俺に与えてくれた事だ。
だから、お前は俺に恩など感じなくてもいい。
俺の方こそ、お前に感謝している。
それに、お前は俺の夢を継いでくれた。おまえなら、きっと俺の夢をかなえてくれるだろう。
お前の夢がかなう時、俺はきっとお前の傍らにある。
だから、まっすぐに生きて行け。
もし、お前が夢をかなえられずに倒れるような事があったとしても、心配する事はない。
お前の夢は必ず誰かがついでくれる。お前が俺の夢を継いだように。
だから、ただ前を向いて生きて行け。
お前の幸せを心から願っている。
わが息子 サンジへ
バラティエオーナー
ゼフ
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