第5話(酷似した肉体)

その球の割れ目に内側から見覚えのある白く長い指がかかり、バリバリと音を立てて
押し開いた。

そこから出てきた物は。

一糸纏わない姿のサンジだった。

「!!!!!っ」ゾロは目を疑った。

球から這い出てきたサンジは、いや、正確にはサンジの姿をしたそれは、地面にははいつくばったままゾロを見た。

ゾロの頭は大混乱した。

これはなんだ。
サンジなのか。


それは、ゆっくりとゾロに近づいた。
そして、サンジの声でゾロに向かって言葉を吐いた。

「オマエトコウビヲスル」

「なんだと?」ゾロはその言葉を聞き返す。
(・・・・交尾?)

「オ前ガ気ニイッタ。嫌ナラ、目ノ前デ」
それは、自分の胸を指した。
「コノ男ヲ殺ス。」

一体、どう言う事なのかゾロには全く分からない。
「説明ぐらい、聞かせろ。」
ゾロは数秒、頭の回転が止まった所為で、言葉に詰ったが、
それだけをいうと、目の前にいる正体の分からないサンジの姿をした物を
凄い目で睨み付けた。
それは、サンジの声でゾロに語った。


100年に一度、繁殖期を迎えること。
肉体的にも、精神的にも、強い人間と交わる事でより強い子孫を残せるということ。
人間と交わるためには、人間の姿にならなければならないこと。
人間の姿になるには、その人間の血液が必要なこと。

「・・・・てめえみたいな化け物とやる趣味はねえ。」と
ゾロが憮然とした態度でそう言うと、

「私ハ、オマエガ欲シクテ、コノ姿ニナッタ。」
「オマエガイヤダトイウノナラ、コノ姿ニナル必要ハ無イ。」

「オマエハ、アレヲ見殺シニスルノダナ。」

突然、ゾロの頭の中に触手に絡まれ、ぐったりと動かず、
苦悶の表情を浮かべたサンジの姿が浮かんだ。
目の前に突然現れた映像にゾロははっと息を呑む。

「私ハ、血ダケヲ食ウダケデハナイ。オマエ達ノ体ヲ動カスえねるぎーモ好物ダ。」
そういうと、サンジの顔でにやりと笑った。

「この化け物が・・・・」ゾロは歯軋りが鳴るほど、口をかみ締めた。

「望みどおりにしてやる。だが、それが終わったら俺達を自由にしろ。」

「交尾サエ出来レバ、オマエ達ニハ用ハ無イ。好キニスルガイイ。」

ゾロを拘束していた触手が解かれる。

「私ハオマエノ頭ノ中ヲ自由ニ覗ク事ガ出来ル事ヲ忘レルナ。
妙ナ事ヲスレバアレノ命ハナイト思エ。」

「俺のやり方で良いのか。」ゾロは憎しみを込めた目でそれを睨み付けた。

それは口の端を釣り上げて笑った。
「オマエノ交尾ノ仕方デイイ。コノ体ガ悦ブナラバナ。」

ゾロはいきなり抱き寄せた。そして、驚愕した。
その肌の質感も、温度も、匂いもサンジのもの以外何物でもない。

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