(ちょっと、目を離したすきに、また・・・!)

すぐに辺りを見渡して探したが、人が多すぎて完全に見失ってしまった。


※※※※

サンジは、ちょっと喉が渇いたので、道に出ていたワゴンでジュースを買った。
その時は、ちゃんとゾロの姿は視界に入っていた。

余りに外が暑いので、涼む為に土産屋らしい店に入った。
ゾロは勝手に着いて来ると思って、棚の上のぬいぐるみをいくつか見た。

そして、気がつけば、完全にゾロを見失っていた。

今回は、ゾロの迷子癖は関係ない。
サンジがフラフラと気の向くままに歩き回った所為だ。

サンジが悪い。

だが、こういう展開になっても、サンジは自分が悪いとは微塵も思わない。
先に立って歩いていた自分を見失って、グズグズ着いてこなかったゾロが悪い、と言う
理屈しか頭に思い浮かばない。

(クソ・・・。一緒にいられる時間は限られてるってのに・・・!)と
自分の理屈で悪者になったゾロに対して腹を立てる。

じっと立っていても、(どうせ、あいつは俺を見つけられねえだろ)、と
サンジはデタラメに歩き出す。

わざと古びた町並みに建てられた路地をぶらつく。

なにか古い映画のセットに使われた、そのセットに似せて造ったらしいが、
残念ながら、古すぎてタイトルを言われても、サンジには

(・・・イマイチ、ピンと来ねえな)と思うだけだ。

ただ、この古い町並みの雰囲気は悪くない。
むしろ、好きだ。

ゾロを探すついでに、土産にと赤い可愛らしいぬいぐるみを一つ買った。
だが、紙袋には入れてくれるのに、手提げはくれない。

ぬいぐるみを紙袋に入れてガサガサさせながら歩くのも、なんだか窮屈そうで、
サンジはそのぬいぐるみを腕に抱いて、ゾロを探して歩く。


二人、また別々の生きる場所へと帰る時間は刻一刻と近付いている。

焦っても仕方ないが、どうしても焦ってしまう。

話したい事、聞きたい事はまだたくさんある。
それ以上に、ゾロの声を今度会うまでに何度でも思い出せるくらい
たくさん聞きたいし、今度会う時、必要以上に緊張しないように、
ゾロの鼓動や呼吸の音をしっかり覚えておきたいのに、

ゾロは一向に見つからない。
きっと、向うも必死に探しているに違いない、そしてその所為で
二人はどこかですれ違っているか、遠ざかってしまっているのだろう。

イライラする気持ちを持て余し、その気持ちを静めるためにサンジはまた土産物屋に入った。

格別欲しいワケでもないのに、せっかく二人で来たこの場所で、
鬱々した気持ちでいたら、ますます気が滅入るので、適当に物色する。

なんとなく、眠たげな顔が可愛くて、暢気そうな顔の犬のぬいぐるみをもう一つ、買った。

そして、汗だくになりながらまた歩く。



(・・・このまま、会えないで時間が来たら・・・)と思うと、
自分でもわかるくらいに顔が曇っていく。


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