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放射性炭素年代測定法(ほうしゃせいたんそねんだいそくていほう;radiocarbon dating)
 放射性炭素年代測定法、略称・炭素14法は、生物や炭素化合物中の炭素に1兆分の1程度含まれる放射性同位体炭素14の半減期を利用して年代を推定する手法のこと。

概要
 炭素14は約5,730年の半減期で減じていく性質をもっているため、これを利用して試料中の炭素同位体12/14比から年代を推定することができる。測定限界が元の約1/1000である場合、約6万年前が炭素14法の理論的限界になる(実用的なβ線測定法では3〜4万年程度が測定限界)。放射性炭素年代は、BP (Before Present) で表記されるが、これは大気圏内核実験による放射線の影響をあまり受けていない1950年が起点となっている。
 この測定原理を発見したシカゴ大学のリビー (W.F.Libby) は、1960年にノーベル化学賞を受けた。
 炭素14は、大気上層で一次宇宙線によって生成された二次宇宙線に含まれる中性子と大気中の窒素から生じ、二酸化炭素に混じって大気中に拡散する。

 n + 14N → 14C + 1
 炭素14の放射性崩壊(壊変)は常に一定の速度で進行しているが、大気上層からの供給速度と概ね釣り合っているので、大気中の炭素14量はほぼ一定と見なされる(厳密にいうと一定では無い)。
 二酸化炭素中の炭素14は、光合成によって植物に取り込まれ、食物連鎖で動物にも広まっていく。生物の細胞に定着した炭素14は、光合成で作られた時点から減じていくと見なせる(光合成で取り込まれる二酸化炭素は大気中のほぼ一定の炭素14量を反映しているが、光合成後は炭素14が新たに付加されないため)。つまり、生物の遺体から試料を得て測定した場合、その細胞に利用された炭素はいつ光合成が行われたかが分かる事になる。樹木の場合は、内側の年輪が古く、外側の年輪が新しく測定される。
 ただし、肉食動物の場合、餌の動物が取り込んだ炭素の由来が問題となる。光合成があまり行われない南極のように、非常に古い炭素が食物連鎖で何度もリサイクルされている例もある。また、海洋生物由来の炭素を陸上動物が摂取している場合、海洋中の二酸化炭素は一般に大気よりも数百年古い測定値を出す(海洋リザーバ効果)ことと、深海に蓄積された古い炭素が影響を与える場合もあるため、注意を要する。

2つの測定法
 最初に開発された測定法は、ベータ線計測法といい、炭素14が電子と反電子ニュートリノを放出して窒素14(普通の窒素)に壊変するときに放射されるベータ線を検知して数える。現代の炭素1gでも4〜5秒に1個しか壊れないので、計測には時間がかかり、試料もグラム単位で必要とされる。

 14C → 14N + e- + Ve

 1970年代末に、加速器で炭素14を直接数えるAMS法 (Accelerator Mass Spectrometry) が提案され、必要な試料量(1mg程度)、測定時間(30分〜1時間程度)共に大幅に改善され、また約6万年前まで測定可能となった。ただし、ベータ線計測法より測定器が大型・高価である点が難点となっている。


年代較正
 大気中の炭素14量は、宇宙線の変動や、海洋に蓄積された炭素放出事件を反映して変動してきた。そのため、計測結果に誤差が生じている。現在では年輪年代測定との照合により、およそ1万年を少し遡る時点まで放射性炭素年代値 (BP) と実際の年代の対応表が作られている。年輪年代の及ばない古い年代は、およそ24,000年前までは、サンゴのU/Th(ウラン/トリウム)年代と照合されている。較正された年代値は、calBPで表される(西暦紀元を基準とする場合はcalBC、ないしcalAD)。較正年代は、暦年代 (Calendar Age) とも呼ばれる。

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