その5
メガネの子は、枕元にそのメガネと靴下を置き、すやすやと眠っていました。
とりあえず、飛影くんは袋の中に手を入れました。するとその中からは、新種のゲームハードとソフトが出てきました。
飛影くんは、出したこれをどう処分するか迷いました。
なんたってこの子は、いつも飛影くんのいたずらを見ると、すぐに先生に報告し、自分はいい子なんだということをみんなにも見せつけていて、なんとなく前から飛影くんにとってはいけすかない子どもだったのです。
そしてこの前、飛影くんが幼稚園に行ったとき、飛影くんの楽しみにしていたサンタさんが,飛影くんのところには来ないと言い出して、
そのうえ飛影くんにお母さんがいないことまでネタにして飛影くんを傷つけてしまった子なのです。
実際、飛影くんのところにもサンタさんは来ました。けれど、彼にはお母さんは本当にいないのです。
そのことを言われたのが悔しくて悔しくて、飛影くんは幼稚園を飛び出してしまったのです。
部屋の片隅で、飛影くんはゲームハードを抱えながら、じっと身動きせずに立っていました。
飛影くんには、この子にいいことをしてもらった覚えがなかったのです。
ふと、飛影くんは、メガネの子の枕元に置いてある、一枚のメッセージカードのようなものを見つけました。
飛影くんは目がいいので、それを遠くから眺めて読みました。
そこにはこう書かれてありました。
『サンタさんこんばんわ きてくれてありがとう。
ぼくはこのまえはつばいされたげーむそふとがほしいです。
でもぼくはこのまえ、ぼくのおともだちにいやなことをしました。
たぶんぼくのおともだちはぼくがいやになったとおもいます
ひえいくんがかわいそうです。
ぼくがわるいこどもだとおもったらぷれぜんとくれなくていいよ。
ひえいくんにこんなこといってたよっていってひえいくんになにかあげて』
飛影くんは声を上げそうになりましたが、こんな時間にこんなところで、さすがに声は出ませんでした。
なにより飛影くんは驚きました。この子のいう「おともだち」とは、飛影くんのことに相違ありません。
そのおともだちが自分を嫌な子だと思っているなら、自分は悪い子だから、プレゼントはいらないというのです。
こいつがこんな奴だったとは、全くいい子ぶる奴だと、飛影くんは表層上の意識ではそう思いました。
けれど、飛影くんは抱えていたゲームハードを、そのカードの上にそっと置いて、あとはもう振り返らないでその家を出ていったのです。
そのとき、飛影くんの目の前にサンタさんが降りてきました。
「ホホホ。見とったよ飛影くん。やっぱりお主はいい子じゃ。友達を許してあげたんじゃな」
飛影くんは、ちっと舌打ちしながら
「なんのことだ」
と言いました。
「それより早くこの服を脱がせろ。この格好じゃ目立ちすぎる」
サンタさんがニヤリと笑う前に飛影くんは鋭く言いました。
「ああそうじゃったな」
サンタさんは手をパンパンとたたました。すると、こんどは飛影くんの周りから光が飛び散っていき、彼はもとの服に戻りました。
「さてと。飛影くんありがとう。ご苦労じゃったな。お礼に君に、素敵なものをお見せしよう」
そう言うと、サンタさんはひょいと飛影くんを抱えました。飛影くんはあせって、幼児誘拐かと必至に手足をばたばたさせましたが、ちっさい飛影くんは、そのままソリに乗せられてしまいました。
「さあ出発じゃ!」
サンタさんが綱を引くと、彼らの乗っているソリを引いて、トナカイたちが聖夜の空の中を、高く高く駆け昇っていきました。
飛影くんは最初はドキドキしていて、おろせおろせとサンタさんをポカポカたたきましたが、上がっていくうちに、飛影くんはすぐに大人しくなりました。
「あ………」
飛影くんは目を輝かせながら、下界の様子を眺めました。サンタさんはにこにこしています。
サンタクロースのソリから眺める下界は、クリスマスの色とりどりの飾りで、街という街がきんきらきんに輝いていたのです。
飛影くんはどきどきしながら街の様子をじっと見つめていました。
この美しい街のどこかに、幽助くん、蔵馬くん、桑原くん、他の友達、そして自分が住んでいたのかと思うと、飛影くんは嬉しくてたまりません。
「きれいじゃろう?これはサンタクロースだけが見れる特権なのじゃが、特別に君にだけに見せてあげようと思っての」
自慢げに、サンタさんは声高らかに笑いました。
サンタさんと飛影くんは、ずっとその街の様子を空から眺めていました。けれど、飛影くんはだんだんねむたくなってきてしまい、ソリの上でうとうとし始めてきました。
「お疲れさま。飛影くん。じゃあわしはもう帰るぞよ。君が目覚めたとき、わしから君に素敵なプレゼントを置いていこう。ゆっくりお休み」
飛影くんは夢見心地でうなずきましたが、そのまま彼は、深い眠りに落ちていきました。
次の日、よほど疲れていたのか、飛影くんが目覚めたのはお昼でした。
もとの木の上に、ちゃんと足を組んで座って眠っていたようです。飛影くんが、昨日のあれは夢だったのかと思っていたら、
彼の耳に、急に元気な声が飛び込んできました。
「わーーーーっっ!!飛影くんちってすっごーい!」
たくさんの子ども達の声でした。なんだなんだと、飛影くんは腰を浮かせました。
「わーきれーー…」
うっとりしている女の子の声が聞こえます。
「!!」
なんと、飛影くんが寝ていたその木は、たくさんのきれいな飾りにつつまれていて、まるでクリスマスツリーのようにきらきら光っていたのでした。
「飛影くんてこんなところの中に住んでるんだ。いーなー」
何が起こったのかよくわからないので、飛影くんは木の下に飛び降りました。
「あっ飛影くんだー!」
と、みんなの目が一斉に飛影くんの方に向けられました。たくさんの視線を浴びて、飛影くんは目を見開いてどきどきしていました。
「よっ飛影!メリークリスマス!」
みんなをかき分けて、飛影くんの前に幽助くんが出てきました。手に大きな箱を持っています。
「おめーが全然幼稚園に来なかったからよー、みんなでてめーにプレゼントでもあげようかなって、持ってきたのさ」
横にいた桑原くんが言いました。
「ずっとすねてたって可愛くないですよ。ほら、見てください」
と、蔵馬くんが指さしたさきには、あのメガネの子が、おどおどした顔つきで飛影くんの方を見ているのでした。
その子は、やはりずっと来ない飛影くんのことが、とても気にかかっていたのです。
「プレゼントの中身はみんなで考えたんだよ。早くあけてごらん」
ぼたんちゃんが幽助くんの持っている箱をぐいと押して言いました。
「飛影さん、受け取ってくれますか?」
優しい笑顔で雪菜ちゃんもいいました。
飛影くんにはお母さんがいませんでした。でも、彼には、とてもたくさんの友達がいました。
みんなが温かく、みんなが優しい子ども達でした。
「フン…。いいだろう。受け取ってやる」
そう飛影くんが言うと、みんなはわーっと歓声を上げて、どきどきしながらリボンをといていく飛影君の姿を、じっと見つめていました。
☆おしまい☆
お〜〜わ〜〜り〜〜ま〜〜し〜〜た〜〜!
ここまで読んでくださってどうもありがとうございます!
たった5章しかない短いお話なんですけど、HP開いて最初にやり始めた
連載ものですのでちょっと思い入れが入って
けっこーしんどかったです(汗)
たった5章で値を上げてどうするよといいたいとこですが、
もともと体力ないみたいなんであまりせめないでね(死)
ほんとはこれ夏休みに書き始めたもんなんです。うまい具合に、クリスマスの季節に書き終えれましたが
最初の方書いてたころは暑い盛りだったので
雰囲気よくつかめてませんでした。
最初に広場物語に置いてた、「氷泪石」と「炎の絆」が結構シリアスものだったので、
次のはほんわかした可愛い話にしようと思ったんですね。
んで幼稚園児の飛影をかこうと思ったわけです。
どうでもいいけど、実は先生を螢子にするかぼたんにするかでけっこー悩みました…。
幽助へのつっこみ役としては螢子のほうがいいんですが、
うち的に螢子は口調とかがよくわかんないキャラだったので ぼたんの方を生徒にしました。
コエンマ園長とかちょっと出したかったなあ…(笑)
あともうひとつ。うちが幼稚園の年中さんだったときと年長さんだったとき
担任の先生「けいこ先生」だったんですね…。
年中さんのときがりす組で、年長さんのときがすみれ組でした。
うち実は今でもサンタさんは本当にいるって
結構信じてるんだよなあ…。
とりあえず、黒タカ初の連載小説「クリスマスチルドレン」はこれで終わりです。
次回作にご期待下さい。(こんな事書いていいのか!?)
最後にまた、ここまで読んでくれたあなたに感謝します!
それではっ!メリークリスマス!!
2002年12月17日
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