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(2) ◎ 少年が来る (ハン・ガン:クオン) 2025.1.18
   2016年刊行 (2024.12.29 近鉄百貨店橿原店ジュンク堂)  

常に臆病さを持って生きている僕にはかなりこたえる本だった。つらいのはその瞬間だけではないことに怯えてしまう。

光州事件で市民軍側に関わった人たちを登場させている。僕はそういう場をできるだけ避けるだろう。けれど避けきれずに残ってしまうかもしれない。そうなった時、僕は何を考えるだろうか。
決して希望が書かれている作品ではない。希望を求めようとも思わない。これまで読んだ彼女の2つの作品には希望を求めてしまっていたが、そんなことを考える余地なく全く異なる力で迫ってくる作品だった。

(メモ)
・「(同庁に残った市民軍)大半の人たちは銃を受け取っただけで撃つことはできなかった。敗北すると分かっていながらなぜ残ったのかという質問に、生き残った証言者たちは皆同じように答えた。分かりません。ただそうしなくてはいけないような気がしたんです。」
・(チンス兄さんが言った)「人々が家から外に出るように呼び掛けてください。夜が明けたら直ちに同庁前が市民でびっしりと埋め尽くされているように。僕たちは、何としても朝までは持ちこたえるつもりです。」
・「銃声がやんで三分ほどが過ぎ、向かい側の路地からかなり小柄なおじさんが一気に走り出てきた。倒れた一人に向かって全力で走った。再び立て続けに銃声が響いて彼が倒れると、今まで君と身を寄せ合っていたおじさんが分厚い手のひらで君の目を覆って言った。
 今出ていったら犬死にだぞ。
 おじさんが君の目から手を離した瞬間、まるで巨大な磁石に引き寄せられたように向かい側の路地から二人の男性が倒れた女性に駆け寄り、腕をつかんで起こすのを君は見た。今度は屋上から銃声が響いた。男たちがのけぞって倒れた。
 もう誰も倒れた人たちに駆け寄ろうとはしなかった。」
・トンホ
・チョンデ、チョンミ姉さん
・ウンスク
・ソンジュ
・キム・チンス

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(1) 〇 量子力学の反常識と素粒子の自由意志 (筒井泉:岩波書店) 2025.1.4
   2023年12月刊行 (2023.12.8 京都駅八条口ふたば書房)  

「量子もつれ」という言葉を使って量子力学の不思議な世界が紹介されることが増えている。いくつかそのような本や記事を読んでいたけれど、本書を読んでみて、不思議さがもっと深まった。
個別の状態は決まっていないが、トータルの状態のみが固定された2つの粒子があるとき、離れた2つの粒子のうちの片方の粒子の特性を測定したら、別の粒子の特性が瞬時に決まってしまう。僕が把握していた不思議な現象はここまでだった。
でも不思議さはもっとレベルが高いものだった。
測定はたくさんの中から選ぶことが可能だ。例えば一つの条件(角度など)で測定するとする。測定した側はその条件での状態に固定される。すると、離れた別の側の状態がその条件での状態になってしまう。つまり、測定する人の選んだ条件が、離れた場所の状態を決めてしまう。
こんなことがあるとすると、どういうことなのか。測定する人がどの条件を選ぶかを含めて、事前に決定されているという事なのか。それを含めて神のような存在が全てを決めているということか。
残念ながら不思議だということは多少わかっても、それ以上には踏み込めそうにない。


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