(12) △ わたしのいるところ (ジュンパ・ラヒリ:新潮クレストブックス) 2025.6.8
原書2018年出版 翻訳2019年 (2025.5.4 一乗寺ブックアパートメント)
以前、ジュンパ・ラヒリの「停電の夜に」を読んだ。その時は彼女がベンガル人であったり、登場人物がインド系の人が多いことを意識して読んでしまう、と感想を書いた。
ジュンパ・ラヒリ「停電の夜に」
「停電の夜に」は評判が良かったようだが、作者は生まれが関連して作品を読まれることから抜け出たかったのかもしれない。本作品はあえて出自と関係のないイタリア語で書いているそうだ。登場人物の国籍や人種は一切書かれていない。
では、作品としてどうかというと、僕には成功したとは全く思えない。短いエッセイ風の文章をたくさん並べた小説という形式がうまく機能しなかったということかもしれないが、消さなくても良いものまで消そうとしてしまったような気がする。
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(11) △ 論理的思考とは何か (渡邉雅子:岩波新書) 2025.5.26
2024年10月 (2025.3.22 近鉄百貨店橿原店ジュンク堂)
思考方法の参考になることがあるかと思って読んでみた。思考法を4つに分けて4つの領域と1対1で対応させていると思って最後まで読んで関連が全くわからなった。説得(レトリック)の箇所を再読してみると、思考法の4つとその後の4つの領域は全く別だった。そこがわかれば理解が進むかというとそうでもなく、4つの領域とそれぞれの作文の型との関連もすっきりとはしなかった。どうも今得られるものは残念ながらなかった。
(メモ)
・論理には文化的側面がある。
・目的に応じて異なる論理的思考法を使いこなすことが重要
・思考法を4分野に分けて比較。@論理学 Aレトリック(一般大衆の説得) B科学 C哲学
[レトリック]
・常には正しくないが、多くの場合に正しい「蓋然的推論」
・「蓋然的推論」の前提となるのは、人々の「常識」あるいは「通念」とも呼ばれる社会一般に共通して認められている考え
・レトリックとは、ある主張への人々の同意を求めてなされるあらゆる種類の議論そのものであるため、そこには、何を優先すべきか、どこに道理があるのか、目の前の状況に対して何をすることが適切なのかの判断が示されている。
・レトリックは、長年の経験の蓄積から抽出した「論証の型」を学び、そこから時と場合に応じて選択することをすすめる。
[合理的行為の4類型と4つの領域]
・何が「論理的」だと感じさせるか。論理的であること=読み手にとって必要な要素が読み手の期待する順番に並んでいることから生まれる感覚
・何を優先し何を後回しにするかは、何を目的にするかによって決まる。
・形式的合理性=手段に関わる合理性
・実質的合理性=目的に関わる合理性
・目的と手段のつながりが「個人の主観」によって決まるのか、「集団による客観」によって決まるのか。
@経済領域(形式合理性による主観的判断)
A政治領域(実質合理性による客観的判断)
B法技術領域(形式合理性による客観的判断)
C社会領域(実質合理性による主観的判断)
上記の4つの領域の論理を使いこなすことで多元的思考ができるようになる。
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(10) 〇 西洋の敗北 (エマニュエル・トッド:文藝春秋) 2025.5.25
2023年10月著述 日本語版2024年11月 (ふたば書房紫野店)
トッドの見立てがどの程度正しいかは分からないところはあるけれど、興味深いところはたくさんあった。いろんな指標を用いている。その中に白人のイギリス人が高等教育を受ける割合が33%、黒人49%、アジア系55%という数値があった。白人のイギリス人の感覚として他の人種に支配されてきているという思いが強まっているのかもしれない。僕が思っていたよりこの指標のような大きな動きが既に起こっている。これに対する反動がヨーロッパやアメリカで起きている。
トッドによると、ロシアはこの10年ほどで社会も安定し経済制裁に耐えられる力を付けた。でも戦っているのは国境付近だけで新たな侵略の可能性はない。
ウクライナは東部の中流階級がロシアに移住し、国としては破綻している。戦争が生きる意味であり、生きる手段にもなっている。
ヨーロッパ、アメリカに関しては、プロテスタンティズムの消滅と新自由主義の観点から分析している。プロテスタンティズムは教育と経済を発展させたが、一方で不平等を助長する面があった。アメリカではプロテスタンティズムが弱まるにつれ、平等化が進み、相対的に白人の力が弱まった。しかも新自由主義と相まって金儲け主義が進み、法律・金融・ビジネスが好まれエンジニアが減少した。GDPは世界一だが、実情はサービスが占める割合が大きく実体よりも膨らんでいるだけで、社会として弱体化している。
(メモ)
【ロシア】
[ロシアの現状]
・ロシアのウクライナ侵攻後の大きな驚きの一つはロシアの強靭さ
・西洋諸国はロシアを過小評価してしまった。
・道徳統計が大きく改善
アルコール中毒による死亡率(10万人当たり) 25.6人(2000年)→8.4人(2017年)。自殺率39.1人(2000年)→13.8人(2017年)→10.7人(2021年)。殺人率28.2人(2000年)→6.2人(2017年)→4.7人(2021年)。乳幼児死亡率(1000人当たり)19人(2000年)→4.4人(2020年)
・2000年から2010年にかけて生活水準向上。2010年から2020年はクリミア併合の結果としての経済制裁で減速。
・道徳統計は経済データより安定。ロシアの社会的平穏を表している。
・ロシアでは失業率が低い
・食料の自足自給を達成。世界の主要な農作物輸出国になった。2020年農作物加工品の輸出は天然ガス輸出収入を上回った。
・世界2位の武器輸出国。世界1位の原発輸出国
・2014年のミンスク合意。ロシアにも経済制裁に耐える準備の時間稼ぎになった。
・2014年のクリミア戦争後の制裁以降にロシアが見せた適応力:小麦生産2012年からの10年で倍増。完全な保護主義路線は取らず。
・プーチン政権下では、出国の自由、反ユダヤ主義不在
・民主主義の第1段階は男性識字率50%超え。第2段階は世代の20から25%が高等教育を受けること。ロシアでは1985年から1990年が第2段階に相当する。共産主義崩壊を引き起こした要因は、高等教育を受けた中流階級の台頭ではないか。
[今後の見通し]
・ロシアには低出生率という根本的な弱点がある。現在1.5人。2021年人口1.46億人。2030年予測1.43億人。2050年1.26億人。新たな領土の征服はない。
・現在のロシアは人口減少を前提としている。ウクライナ侵攻初期に12万人の兵士しか送らず、チェチェン連隊と民間軍事会社ワグネルを活用したのもそのため。
・ロシアの優先事項は最大限の領土征服ではなく、犠牲者を最小限に抑えること。人員不足を考慮し、安全が脅かされた場合の戦術核攻撃を認めている。西側はこの警告を真剣に受け止めるべき。ロシアの外交・軍事慣行の特性は「公約」の信頼性の高さにある。
・アメリカもロシア人口減少問題を認識している。しかし、国民の教育と技術水準が高い国家は人口が減少してもすぐには軍事力を失わないことを見落としている。
・ロシアの立場としては、紛争は5年以内に終わらせなければならない。以降の動員は難しくなる。
【ウクライナ】
[ウクライナは破綻国家だった]
・1991年から2021年の30年間でウクライナの人口は5200万人から4100万人まで約20%減少。
・出生率2020年1.2人(ロシア1.5人)。それ以上に出国移民が多い(ロシアや西欧へ)
・営利目的の代理母出産。世界の25%を占める。ウクライナ人の身体を借りて西洋人の子どもを作り出す。ある種のソ連的な「遠慮のなさの名残」に新自由主義が加わった。なお、ロシアでも代理母出産は合法だが、外国の顧客には禁止されている。
[中流階級のロシア移住]
・2010年大統領選挙で西部と中央部がティモシェンコに投票。南部と東部がヤヌコーヴィチに投票。ヤヌコーヴィッチの得票率は東南部のドネツク州、ルハンスク州、クリミア州で90.4%、89.0%、78.2%。西部のリヴォフ州、テルノービリ州、イヴァーノ=フランキーウシク州で8.6%、7.9%、7.0%。「ロシア寄りのウクライナ」と「純粋にウクライナ的なウクライナ」に顕著に分かれる。
・都市化が進んでいた東部には中流階級が多くいた。中流階級に属するロシア語話者は、ウクライナ語話者のナショナリストの敵意の対象となる中で、ロシアの繁栄を目の当たりにし、2014年以降ロシアへ移住した。ロシアからすればロシア的要素がウクライナに残り続けることがウクライナに対する支配を永久に保障するはずだった。
・戦争開始以降に西洋ではEUへのウクライナ移民が盛んに取り上げられた。しかし、もっと以前から始まり今も続いているロシアへのウクライナ移民についても伝えるべきだった。
・1989年から2010年にかけてウクライナ西部と中央部西半分は都市部の人口動態は安定し人口増加もあった。東部の多くの町は人口の20%以上を失った。これこそがウクライナ社会の真の危機。
・ロシア語話者の中流階級の流出はユダヤ人の流出の後に起きた。
1970年頃 ロシアに81.7万人(0.6%)、ウクライナに77.7万人(1.7%)。2010年にロシアに15.8万人、ウクライナに7.1万人。ロシアで80%、ウクライナで90%減少。
[民主主義的希望の終わり]
・2014年大統領選。ロシア語地域で棄権率上昇、60〜80%
・ウクライナ西部:大部分が農村、ウルトラ・ナショナリズム。中央部:あいまいで無秩序。南部・東部:もともとロシア寄りだったが中流階級が離れ、ロシア軍に占領されていない場所は地域として形をなしていない。
・戦争が中央集権構造の台頭を促したが、ワシントンからの資金に依存する軍・警察組織でしかなかった。
・現在のウクライナでは、この戦争こそが生きる意味になり、生きる手段になっている。「反ユダヤ主義」ではなく「ロシア嫌い」
・ロシアの要求は@クリミアの維持、Aドンバス地方のロシア系住民の生活と地位の保障、Bウクライナの中立的立場。
・ウクライナはロシア人と共存できないと認めて、ドンバスを切り離して本来のウクライナとして一部の国から支援を受けながら国際的に承認される真の国民国家建設に注力できたはずだ。しかし、ドンバスとロシア系住民を奪還するために戦争を続けてしまった。ロシアとの離別を拒み、繋がり続けることを望んでいるように見える。
【西洋全体】
・産業基盤の深刻な弱体化
・プロテスタンティズムの死が「西洋の敗北」の原因となっている。
[プロテスタンティズム]
・プロテスタンティズムは支配下の人々を常に識字化する。そして読み書きできる人々の存在が技術および経済の発展を可能にする。こうして意図せずして非常に有能な労働力を形成した。
・プロテスタンティズム圏は、「選ばれし者と地獄に落ちる者がいる」つまり「人間は平等でない」という人間観を共有している。・・・カトリックの考えと対立 →人種差別が最も激しいのがプロテスタンティズムの国(ナチスドイツ、1935-1976のスウェーデン、1907-1981のアメリカ)
・プロテスタンティズムの良い側面には教育と経済の発展があり、悪い側面には人間は不平等だという考えがある。
・宗教的実践と宗教的統率の弱体化は、世俗化の第一段階(ゾンビ状態と称す):ミサの出席率低下と新任聖職者減少。まだ火葬は行われない。
・次の段階はキリスト教ゼロ状態:洗礼なくなり火葬を大規模に実施。さらに同性婚合法化。
・同性婚合法化:オランダ2001年、ベルギー2003、スペイン・カナダ2005、スウェーデン・ノルウェー2009、デンマーク2012、フランス2013、イギリス2014、アメリカ2015、ドイツ2017、フィンランド2017。バチカンがあるイタリアは認めていない。
・あらゆる集団的信仰(共産主義含む)から一斉に解放された私たちは今、空虚を経験し、小さくなっている。→ニヒリズム
[リベラル寡頭制]
・今日の西洋は、「ロシアの専制体制」に対抗する「自由民主主義」を体現するのは自らだと主張しているが、自由民主主義の発祥地であり核心部だったイギリス、アメリカ、フランスにおいて自由民主主義が危機に陥っている。
・「エリート主義」と「ポピュリズム」が激突:エリートは民衆が外国人嫌いへと流されていることを非難。民衆はエリートが常軌を逸したグローバリズムに耽っていると疑う。両者が協調できなければ代表制民主主義の概念は意味をなさない。
・西洋のリベラリズム民主主義は、代表制が機能せず、少数者の保護の対象になっているのは超富裕層。したがって、民主主義という言葉は使えず、リベラル寡頭制となっている。
現在の戦争は、リベラル寡頭制とロシアの権威主義的民主主義の争い。
・西洋のリベラル(自由な)寡頭制が戦争の手段として経済制裁を取り入れたのは、制裁によるインフレと生活水準低下に苦しむのは下層民だから。
[EU]
・EUはNATOの背後に消え去り、かつてなかったほどアメリカに従属。
・2023年6月からのウクライナの反転攻勢は失敗に終わった。それ以降、ロシアが負けることはないとわかっている。ではなぜ終わりのない戦争に執着するのか。
・ロシアは自国の国境線上で戦っている。ロシアは西ヨーロッパにとっていかなる意味でも脅威でない。ロシアはヨーロッパ、特にドイツと経済的パートナーシップを結びたいと望んでいる。
・自国の軍隊は送らず、物資と資金の提供で満足し、ウクライナの軍人や民間人を犠牲にしている。「道徳ゼロ状態」。
・「この終わりのない戦争が最終的にすべてを破壊してくれるだろう」という希望を持っているのではないか。ロシアにすべての責任を押し付けることができる。
・ドイツの「権力放棄」:東西統一を経て、さらに2007年から2008年の危機を通して金融財政面での力を高めたドイツは、ヨーロッパのリーダーになりアメリカとも一線を画す存在となるはずだった。しかし、2022年ドイツは寝てしまった。
・ヨーロッパはより高次な実体を創造することで国家を超えられると信じた。しかしそれは誤りで「アトム化した個人の寄せ集め」になってしまった。「無気力国民」になった。
【イギリス】
[イギリスの好戦主義]
・イギリスが戦争を激化させてきた。ロシアの最初の攻撃の後、ゼレンスキーはプーチンと議論する用意があるように見えた。しかし、交渉を思いとどまらせ軍事的役割だけを果たさせようとした一人がボリス・ジョンソンだった。
[イギリス国民の内部崩壊]
・政界の最上位レベルで驚くべき「カラー(有色人種)化」が進んだ。:トラス内閣の重要閣僚4人が男性でも白人でもなかった。
・イギリス国内でBAME(黒人、アジア人、少数民族)の人口比率は7.5%。政界において人口比率以上に存在感。
・2019年若い白人の高等教育を受ける比率は33%。黒人は49%、アジア系は55%(中国系に限ると72%)
・2021年イギリスで登録された医師のうち、イギリス人37%、EU出身13%、その他の国が50%。インドやパキスタン出身者が多い。
[新自由主義と宗教崩壊]
・新自由主義がイギリスをアメリカ以上に困難な状況に陥らせた。・・・脱工業化
・工業労働人口:仏・米19%、イギリス18%。一方、ドイツ28%、イタリア27%、日本24%
・エンジニア不足:学生のエンジニア比率 米7.2%、英8.9%、ドイツは24.2%、ロシア23.4%
・背後に宗教崩壊がある。「強欲」
・新自由主義はウェーバー的資本主義ではなく、精神面でプロテスタント倫理から解放された資本主義を築こうとした。
・プロテスタンティズムの特徴は、労働と貯蓄。消費社会の対極にあり、禁欲と同義語。どの国も経済的に成功した。
・1960年代、プロテスタンティズムはゼロ状態へ以降。高等教育の発展(教育による階層化、社会のアトム化)、洗礼件数の減少、婚外関係激増、離婚・再婚・片親世帯増加、火葬急増(1888年0.01%、1939年3.5%、1947年10.5%、1960年34.7%、2021年78.4%)、同性婚合法化2014年
・新自由主義が理想とする「純粋で完全な市場」に存在するのは、道徳を欠いた人間、単なる金の亡者だけ。
・単に高等教育を受けただけの人々がイギリス全体を支配しているわけではない。アメリカとつながりのある超富裕層たちが支配している。
【アメリカ】
[現状]
・アメリカは先進国で唯一、平均余命が全体的に低下している国:2014年78.8歳、2020年77.3歳、2021年76.3歳(英80.7歳、独80.9歳、仏82.3歳、スウェーデン83.2歳、日本84.5歳)。ちなみにロシアは71.3歳だが、2002年の65.1歳から上昇。
・乳幼児死亡率(1000人当たり)がロシアよりも悪い:2020年米国5.4人、ロシア4.4人、英3.6人、仏3.5人、独3.1人、伊2.5人、スウェーデン2.1人、日本1.8人
・死亡率の上昇と世界で最も高額な医療費:GDPに占める医療費の割合・・・18.8%、仏12.2%、独12.8%、スウェーデン11.3%
・一部の医療費が人々の破壊に使われていたとの指摘もある。製薬会社が精神的苦痛を訴える患者に危険で中毒性のある鎮痛剤を提供し、死亡やアルコール中毒・自殺に繋がったというもの。→一部上流階級の背信行為「道徳ゼロ状態」
・言語能力・数学能力が1965年から1980年にかけて低下。その後2005年まで横ばいだったが2005年以降低下。
・勉強に励む時間も減少
・2006年から2018年にかけて全人口のIQ低下。低下スピードが速かったのは高等教育を受けていない人々。
・教育成果の低下は、プロテスタンティズムの消滅と関連している。
・1950年代、中流階級に労働者階級が含まれ、むしろ労働者が大部分を占めていた。いま中流階級に残っているのは、上位0.1%の少数富裕権力者にしがみつき没落しないことに必死になっている人口10%前後の上層中流階級だけだ。累進課税の復活に上位の富裕層よりも強欲に反対しているのは上層中流階級だ。超富裕層の資本の大部分はそもそも海外の課税逃れで守られている。
[実体を反映していないGDP]
・1928年米国の工業生産高は世界の44.8%を占めていた。2019年16.8%に落ち込んだ。中国は2020年28.7%まで上昇。
・「工業中の工業」ともいえる工作機械を見ると、2018年中国が世界の24.8%を占め、アメリカはわずか6.6%。
・農業でも衰退。小麦の生産高は1980年6500万トンが2022年には4700万トンに減少。ロシアは2022年8000万トンで2012年の3700万トンから倍増以上。
・アメリカのGDPは対人サービスが大きな部分を占める。法外な高給取りの弁護士、略奪的な金融業者などが含まれる。医療費を見ても実質はあやしい。15140人の経済学者の仕事を付加価値として計上しているが真の富の生産に繋がらない。実質のあるものに落とし込む必要がある。
・国内実質生産の試算:医療費(GDPの18.8%)×0.4倍。工業・農業・建設・交通・炭鉱などはGDPの20%程、これは真の生産なのでそのまま。残りはサービス×0.4倍。この数値を使うと、一人当たり3万9520ドル(一人当たりGDPは7万6000ドル)
・アメリカ人は生産する以上にはるかに多くを消費している。
・アメリカは国債発行で貿易赤字を補填している。それができるのはドルが世界の基軸通貨だから。富裕層のタックス・ヘイヴンに資産をため込むのにも使われている(流通ドルの1/3程度を占めると推定)。貿易赤字は2000年から2022年にかけて173%増加。物価を考慮しても60%増加。
[新自由主義と金儲け主義]
・アメリカ学生のうちエンジニアリングを先行する学生は7.2%。社会の内部で「頭脳流出」が起きている。流出先は法学、金融、ビジネススクール。高い収入を得られる可能性のある分野。教育の発展がもたらした究極の悪影響。
・不足するエンジニアを海外出身者で埋めている。科学・技術分野(STEM)の海外出身者割合は2000年16.5%から2019年2301%に増加。
・外国人は同業のアメリカ人よりも優秀な資格を有している。STEMワーカのうち学士号を持つのは米国出身者で67.3%、移民86.5%。
・人々が法律、金融、ビジネスを好んで学ぶのはドルが湧き出る「聖なる泉」に近づけるから。
[WASP(ホワイト・アングロサクソン・プロテスタント)エリートの消滅]
・名門大学(ハーバード、イエール、プリンストン)学生人種比率:白人46%、アジア系28%(米国全人口では白人61%)
・プロテスタンティズムの消滅がアメリカの伝統的な人種差別の消滅をもたらした。他方で「教育重視」「努力尊重」に気風も消滅し、白人の学力は低下した。
・社会上層部にユダヤ人比率が高いのはユダヤ教の教育熱心さが際立っていたから。特に1965年から2010年にかけてプロテスタントという競合相手がいなくなることでユダヤ人の存在感を大きくした。
・しかし、アジア系アメリカ人の教育熱心さが勢いを増し、ユダヤ人の競合不在に終止符が打たれた。ハーバード大のユダヤ人比率は1990年から2000年代は25%を占めていたが、今日は10%未満に低下。ユダヤ人もアメリカ社会に同化。1980年以前は結婚したユダヤ人のうち、非ユダヤ人と結婚したのは18%だったが、2010年から2020年は61%に達した。
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(9) 〇 白夜 (ドストエフスキー:角川文庫) 2025.5.14
原作1848年 翻訳1953年 (おそらく1984年頃) 再読(初回2010.10.21)
先日再読した村上春樹の「神の子どもたちはみな踊る」に収録されている「かえるくん、東京を救う」の中にドストエフスキー「白夜」が出てくる。かえるくんが地震を起こそうとするみみずくんと闘っているときにドストエフスキーの「白夜」を思い出した、ドストエフスキーは神に見捨てられた人々を優しく描き出した、ということが唐突に出てくる。
ドストエフスキーの印象はちょっと違うけど、それはさておきドストエフスキー「白夜」が気になりだした。
そう思っている時に、京都出町座の映画上映スケジュールを見ると「白夜」と記載がある。1971年作品を4Kにして再上映しているとのことだった。見なければいけない気になって日帰りで出かけて見てきた。印象はあれって感じだった。混沌とした中でもそこに自分自身が存在するようなドストエフスキーを感じられなかった。
そこでやはり原作に戻って「白夜」をもう一度読むことになった。
舞台はペテルブルグ。孤独ではあるが周りを意識しながら町を歩きまわっている青年。恋した相手と1年後に会う約束をし、ちょうど1年後に約束の場所で待つナースチェンカ。二人は4夜にわたって熱っぽく語り合う。かみあっているのか、ずれているのか、わからないまま。最後にかみあったはずだったのだが。。。
今読むと実にドストエフスキーらしい作品だと感じる。熱を帯びた長い演説のような語りに耐えられない人もきっと多くいるだろう。でも僕はそこに人間の本質的なもの、例えば自分よがりの信念、その一方での迷い、強さと弱さ、統一感と矛盾したもの、を感じる。
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(8) □ イワン・イリッチの死 (トルストイ:岩波文庫) 2025.5.10
原作1886年 翻訳1928年 (2025.4.27 アマゾン)
トルストイの短編。
僕が読んだトルストイの作品に出てくる人物は、トルストイが完全に掌握し、トルストイが意識した範囲内で動いたり言葉を発したりしているように感じる。だから主題が明確になり、トルストイの考えを聞いているような感じになる。
同じロシア文学でもドストエフスキーの登場人物は、ドストエフスキーの思いがどうあれ勝手に話しだして止まらなくなるように感じる。だから何が主題なのかはドストエフスキーとは無関係に、読む人自身が考えないといけなくなる。
さて、本作品は裁判所判事イワン・イリッチが不治の病に侵されてから死の瞬間を迎えるまでを描いている。どういう人生を歩んできたとしても死を迎えるときはこういうものだとトルストイが考えているということだろうか。それとも考えを改めて到達した地点を示しているのだろうか。
まだ僕とは距離を感じているけれど、また読んでみようという気になるときがあるのかもしれない。
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(7) □ 京都「私設圖書館」というライフスタイル (田中厚生:コトコト) 2025.5.2
2018年 (2025.4.26 ホホホ座浄土寺センター)
京都市左京区の銀閣寺道交差点のそばに「私設圖書館」がある。著者は大学卒業後に就職せずにアルバイト状態で結婚し、25歳の時に読書・勉強の場所として図書館を創設する。それも趣味ではなく、仕事として。1973年に開館して現在まで50年以上継続している。
開館した時はまだ前を市電が走っていたそうだ。僕が大学生の時に前を通ったことはあったはずだが全く記憶にない。
本書には開館に至るまでの経緯や開館後の様子、お客さんがノートに残した書き込みなどが紹介されている。
大学を卒業して何をするかを卒業後にアルバイトをしながら考えている。「型にはまらない生き方」にこだわり、根本的には疑問を抱かずに続けてこられたように感じられる。そんな生き方もあったのかと思うと同時に、僕の場合は大学卒業後に早くどこかに属さないと精神的に持たなかっただろうとも思う。著者の言う「型にはまらない生き方」を目指すことは到底できなかった。
僕の精神状態は学生時代に想像していたよりはるかに充実しているので現状に不満はないけれど、他に道はなかったのかは今後も考えてしまうだろう。
(メモ)
・著者が図書館創設を考える前に友人に出した手紙に、人の役に立つこと、個としての自分を発揮できること、そのためには少々の苦労や世間的な目はいとわない、というようなことを書いている。その手紙に関して「(大時代的で青臭いと思われそうで気恥ずかしい)しかし、さらに気恥ずかしいのは、この気持が、いまもあながち変わっていない、あのころも今も似たようなことを考えて暮らしている、ということである」
・「本を読み、物事の仕組みを理解し、真実を追求することが、戦争を退け平和な世界を導いてくれる唯一の方法だろう、と私は信じている」
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(6) □ 神の子どもたちはみな踊る (村上春樹:新潮社) 2025.4.28
2000年 (2000.4.30 ジャスコ桜井店 池田書店) 再読(初回2000.5.1)
NHKが今月、ドラマ「地震のあとで」を放送していた。初回の「UFOが釧路に降りる」を見てあまりにもわからなさすぎて原作はどうなっているんだろう、と気になった。残りを録画したままにしていたら新聞で最終話の紹介を読んだ妻がこの話読んだことがあると言った。そこに至ってようやくこの本が家にあることに気づいた。本に書いた日付を見ると、買った翌日に読み終えている。中身は全く覚えていなかった。
本作品は6編の連作小説となっている。心の奥に持っている何らかの思いがどの作品にもありそうだが、中身をはっきりとは説明していない。だからこそ誰でもあるものとして共感を呼びやすいかもしれないし、逆に理解されないかもしれない。
僕にとっては今のところ後者にあたるような気がする。
それにしても村上春樹はセックスを書くのが好きだなあ。ここでそうなるのって思うところが結構ある。
(メモ)連作6編
「UFOが釧路に降りる」
空っぽとは?中身とは?
「アイロンのある風景」
焚き火、アイロン、神の不在
「神の子どもたちはみな踊る」
心の奥に宿る人
「タイランド」
体の中の石、
「かえるくん、東京を救う」
ドストエフスキー白夜、
「蜂蜜パイ」
箱の中身
・本書の冒頭の引用文は、ドストエフスキー「悪霊」から。
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(5) □ 「ふつう」の私たちが、誰かの人権を奪うとき (チェ・ウンスク:平凡社) 2025.4.18
原書2022年 翻訳2024年11月 (2025.2.15 鴨葱書店)
韓国の国家人権委員会の調査官として働く著者が出会った陳情請求人や同僚などを書いている。
拘置所で会った男は中華料理店の料理長だと言い、料理長になるまでの人生を生々しく語った。しかし、店に行って関係者に話を聞くと誰も彼のことを知らず、事実は全く異なっていた。なぜ嘘をついたのかと問うた調査官に対して、「そんなんじゃありません・・・そういうことでは・・・」と言葉を濁した。
本書にいろんな陳情人が登場するが、上記の嘘が特に印象に残った。弱い立場に追い込まれると嘘をつきやすいのだろうか。
自分自身を振り返っても小さい頃は小さな嘘を言っていたような気がする。最近は嘘を言わなくなったようにも思う。精神的に安定したからなのだろうか。そして弱くなったらまた嘘をつくのだろうか。
(メモ)
『あの男の真っ赤な嘘』
すぐにばれる明らかな嘘をつく陳情人
「人は誰でもそれぞれの人生を夢見て生きる。私が他の時代に生まれていたら、他の家庭で育ったら、あの時あの選択をしていなければ、またはしていたら。」
『神ではなく私たちの責任だ』
ラーメン店で無銭飲食をした「おかしな話」をする女性が精神病院に6年も監禁された。彼女は財布を忘れた工場労働者。「おかしな話」がネパール語だと明らかになるまでに6年も要した。
「人権侵害には故意が必須なわけではない」
『絶対にそうしない人はいない』
「性暴力事件の被陳情人が普段から評判のいい人だと、被害者は不利な立場に立たされる」
『囚人の白い手』
人権委員会に書面でなく「面前陳情」を申し込んできた老人がいた。老人は文字がわからず、調査官の面前で話すしか方法がなかった。面談後、彼は字を知らないことが罪であるかのように頭を下げた。
『調査局の脱穀機の音』
毎日電話をかけてきて迅速な処理を頼んでくる人がいた。陳情人の多くは自分の問題が人権侵害や差別にあたることを説明する代わりに、ひたすら心情に訴えようとする。
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(4) □ 随筆 本が崩れる (草森紳一 :中公文庫) 2025.3.23
新書2005年 文庫本2018年 (2025.3.3 アマゾン)
本書の解説に次のように書かれている。
「(本書のカバー写真:乱雑に本が積み上げられた密閉空間:に対して)たじろぎ、怖じ気づいたとしても、気を取り直し、書名や著者名の小さな文字を懸命に読み取ろうとした人種は、本書『随筆 本が崩れる』へのパスポートを得たといえよう」
本書を手にしてまさに僕がしたことだ。どうやら読む資格はあったようだ。
家中に本があふれ、いたるところに本が積まれている。そして風呂のドアの前の本が崩れて中に閉じ込められたというのが前半の話。閉じ込められてもさほど動じていない。状況を楽しんでいるように思える。
著者によると、読書家の本はさほど増えない。物書きだから資料調べの本が増殖していく。収入の7割が本代に消えるというのだから凄まじい。
本を積むにも技術がある。同じ大きさの本を揃えて積むと倒れやすい。左右の本とジグザグに並んでいると支え合って安定する。こんな発見の記述は楽しい。これは僕がリビングに2列に積んでいる本に採用した。
著者の自由な姿を見て、自分の本との関わりを振り返ってみると根本的に異なっている。僕は読み始めたものは何とか最後まで読み切ろうとして苦行のように読んでいる。だから読んでいる最中より、読み終わった時の方が喜びがある。読み終えても別に偉くなるわけでも褒められるわけでも何でもないのに。
これを期に違う読み方もしてみようかと思い始めている。
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(3) □ 自転車泥棒 (呉明益 :文春文庫) 2025.3.8
原作2015年 翻訳2018年 文庫本2021年 (2025.1.8 bookfan(au Pay))
浜田家はもともと愛媛県三崎町に家があった。祖父が家族を連れて日本の植民地だった台湾に移り住んだ。給料のいい外地の公務員の募集に応募したらしい。末っ子の父はそこで昭和4年に生まれた。米陸軍がフィリピン攻略後に硫黄島、沖縄と進むのでなく台湾に上陸していたら、僕は生まれていなかっただろう。
僕が小さい頃、年季の入った古そうな黒いどっしりした自転車が家にあった。両親に最近聞いてみると、その自転車は当時広島に住んでいた父の兄からもらったそうだ。広島から大阪まで送ってもらい、父が天王寺で受け取り、住んでいた富田林まで父が乗って帰った。昭和30年代半ばのことだ。
伯父は戦争で南方に派遣された。生き延びて終戦を迎えたが、戦いを続けようとする上官に反対して虐待を受け、生涯ずっと傷跡が残っていたそうだ。でも家族にもそのことは話したがらず詳細を聞いた人はいない。
自転車をどこで入手したかも、終戦時に何があったのかも気になるのだが、伯父は既に亡くなっているので調べようがない。
呉明益は台湾の作家。失踪した父と共に消えた自転車を探し、さまざまな人と出会い、その人たちの歴史に触れていくお話。台湾、自転車という要素が上記のことと結びつき自然と興味を惹かれる。
戦争の話が多く登場する。
1941年マレー半島攻略に貢献したとされる自転車部隊である銀輪部隊。事前に訓練を台湾で実施したことやイギリス軍のほとんど抵抗なき降伏で8万人が捕虜となり、大部分が日本軍がタイ・ビルマ間の鉄道建設工事に従事し多くが亡くなったことが記されている。
1944年頃からのビルマ戦、ゾウ部隊。狙撃の成功率を高めるために狙撃兵を縄で樹に縛り付けた。こんな信じられないことがあったらしい。当然ながら敵の標的となり全員死んだ。台湾人である登場人物の父がこの部隊に入っていた。敗走する日本軍には日本人以外も含まれていた。
戦時中の動物園の動物処分。日本国内でも似たことがあったが、台湾の動物園でも爆撃に備えて動物処分が行われた。
こういった話にチョウの貼り絵、自転車の細部の説明などが加わり、一つの小説に多くの材料を盛り込んでいて内容は豊富。ただ、豊富過ぎるうえにいろんな人の過去の話が出てくるので、発散気味に感じられ、あまり読みやすくはなく、一度読んだだけではとても消化しきれない。
(メモ)
・仕立て屋の父。1992年失踪
・アブー:コレクター、友人
・アッバス
・アニー
・サビナ:アニーの友人
・ラオゾウ、シオガシラ
・バスア:アッバスの父。台湾での秘密訓練、銀輪部隊、南方軍、インパール作戦(アラカン山脈越え)、ゾウ部隊
・ムー隊長、静子さん
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(2) ◎ 少年が来る (ハン・ガン:クオン) 2025.1.18
2016年刊行 (2024.12.29 近鉄百貨店橿原店ジュンク堂)
常に臆病さを持って生きている僕にはかなりこたえる本だった。つらいのはその瞬間だけではないことに怯えてしまう。
光州事件で市民軍側に関わった人たちを登場させている。僕はそういう場をできるだけ避けるだろう。けれど避けきれずに残ってしまうかもしれない。そうなった時、僕は何を考えるだろうか。
決して希望が書かれている作品ではない。希望を求めようとも思わない。これまで読んだ彼女の2つの作品には希望を求めてしまっていたが、そんなことを考える余地なく全く異なる力で迫ってくる作品だった。
(メモ)
・「(同庁に残った市民軍)大半の人たちは銃を受け取っただけで撃つことはできなかった。敗北すると分かっていながらなぜ残ったのかという質問に、生き残った証言者たちは皆同じように答えた。分かりません。ただそうしなくてはいけないような気がしたんです。」
・(チンス兄さんが言った)「人々が家から外に出るように呼び掛けてください。夜が明けたら直ちに同庁前が市民でびっしりと埋め尽くされているように。僕たちは、何としても朝までは持ちこたえるつもりです。」
・「銃声がやんで三分ほどが過ぎ、向かい側の路地からかなり小柄なおじさんが一気に走り出てきた。倒れた一人に向かって全力で走った。再び立て続けに銃声が響いて彼が倒れると、今まで君と身を寄せ合っていたおじさんが分厚い手のひらで君の目を覆って言った。
今出ていったら犬死にだぞ。
おじさんが君の目から手を離した瞬間、まるで巨大な磁石に引き寄せられたように向かい側の路地から二人の男性が倒れた女性に駆け寄り、腕をつかんで起こすのを君は見た。今度は屋上から銃声が響いた。男たちがのけぞって倒れた。
もう誰も倒れた人たちに駆け寄ろうとはしなかった。」
・トンホ
・チョンデ、チョンミ姉さん
・ウンスク
・ソンジュ
・キム・チンス
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(1) 〇 量子力学の反常識と素粒子の自由意志 (筒井泉:岩波書店) 2025.1.4
2023年12月刊行 (2023.12.8 京都駅八条口ふたば書房)
「量子もつれ」という言葉を使って量子力学の不思議な世界が紹介されることが増えている。いくつかそのような本や記事を読んでいたけれど、本書を読んでみて、不思議さがもっと深まった。
個別の状態は決まっていないが、トータルの状態のみが固定された2つの粒子があるとき、離れた2つの粒子のうちの片方の粒子の特性を測定したら、別の粒子の特性が瞬時に決まってしまう。僕が把握していた不思議な現象はここまでだった。
でも不思議さはもっとレベルが高いものだった。
測定はたくさんの中から選ぶことが可能だ。例えば一つの条件(角度など)で測定するとする。測定した側はその条件での状態に固定される。すると、離れた別の側の状態がその条件での状態になってしまう。つまり、測定する人の選んだ条件が、離れた場所の状態を決めてしまう。
こんなことがあるとすると、どういうことなのか。測定する人がどの条件を選ぶかを含めて、事前に決定されているという事なのか。それを含めて神のような存在が全てを決めているということか。
残念ながら不思議だということは多少わかっても、それ以上には踏み込めそうにない。
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