新安保懇の誤った発想 :2010.7.29
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 菅首相の私的諮問機関「新たな時代の安全保障と防衛力に関する懇談会」が
 首相に提出する報告書の概要が27日の新聞に
掲載された。
 朝日新聞には報告書案の骨子として以下の6点挙げられている。
  
  ・「基盤的防衛力」の概念が有効でないと確認
  ・非核三原則に関して、一方的に米国の手を縛ることは必ずしも賢明ではない。
  ・離島地域は、自衛隊の部隊配備を検討する必要がある。
  ・武器輸出三原則下の武器禁輸政策は見直しが必要
  ・PKO参加5原則は、修正を積極的に検討すべきだ
  ・(集団的自衛権について)柔軟に解釈や制度を変える必要がある

 非核三原則と武器輸出三原則に関しては、全く誤った考えだと思うので
 書いておきたい。

 非核三原則は「核を持たず、作らず、持ち込ませず」である。
 これは、日本だけでなく、東北アジアや世界全体へと広げていくことを目指して
 いくべきものである。
 非核三原則を特定地域で実現するという考えが、「非核兵器地帯」だ。
 「非核兵器地帯」とは、地域の複数の国家が条約を締結し、そこにおいて、核兵器の
 生産、取得、配備を禁止することを約束するものである。(黒沢満「軍縮問題入門」)
 これは概念だけでなく、キューバ等を含む地域の「ラテンアメリカ核兵器禁止条約
 (トラテロルコ条約)」など、いくつも既に成立している。

 忘れてはいけないのは、民主党が野党時代の2008年に岡田克也氏が中心に
 なって「東北アジア非核兵器地帯条約(案)」をまとめているということだ。
   東北アジア非核兵器地帯条約(案)
 既に実現している地域もあり、単なる理想や夢物語ではないのだ。

 日本の安全を守るためには、周辺国が核兵器を持たないようにすることが重要だ。
 そこに向かうためには、日本に核兵器を持ち込むことではなく、日本に核兵器が
 存在しない状態を保つことが重要なのだ。
 アジアの非核兵器化を目指さず、アメリカが核兵器を持ち込むことを認めるような
 考えに組することはできない。

 次に、武器輸出三原則である。
 武器輸出三原則は、共産圏、国連決議によって武器禁輸措置をとられた国、紛争地域
 などへの武器輸出を禁止したものである。ただ、1976年に三木首相が対象地域以外も
 禁止としたため、全面輸出禁止となった。しかし、現在は、アメリカ向け武器技術供与が
 例外となり、ミサイル防衛システムの共同開発・生産が対象外になっている。
 輸出禁止に対しては経団連などから見直しを求める声が公然と起こっている。
 
 日本は1945年の敗戦後、世界平和に大きな貢献をしてきた。
 世界第二位の経済大国でありながら武器輸出をしてこなかったことは、軍隊を派遣して
 戦争するという行為を一切しなかったこととともに、賞賛されて良いと思う。
 この良き伝統を金のために捨ててしまうのか。
 あまりに情けないではないか。
 武器輸出を認めだすと、貧しいアフリカに武器を売りつけるようになる。中国の軍事力を
 問題にしていながら、台湾に武器を売るかもしれない。国際平和を不安定にすることに
 日本も寄与するのか。
 
 報告書要旨から見ると、本報告書は視野が狭い。
 日本が進む道を他国も同じように進めば、世界が平和になるという普遍性を持った
 指針を示して欲しいものだ。