建物内部に組み込まれた鉛直構面に水平力が作用し、柱に上向きの力 V が生じるときの力の釣り合いにより、破壊形式は以下のように分類できる。
VW ≦ N + R ---B
VW:耐震要素自体が破壊するときに柱に生じる引っ張り力
N:柱頭に作用する下向きの力(≫柱の長期軸力)
R:柱脚に作用する下向きの力(柱脚金物の終局耐力或いは基礎の抵抗力)
N は横架材を剛と仮定して、壁の上部の横架材(継ぎ手位置まで)全体を持ち上げるのに必要な力であり、柱頭が引っ張りとなる柱と横架材に取り付いた金物の抵抗力や、直交する梁に取り付く柱の柱頭、柱脚の金物の抵抗力や、直交する梁に取り付く壁の浮き上がりに対する抵抗力、及び、上階の壁により生じる転倒モーメントを考慮して、力の釣り合いから求められる。
この破壊形式の場合、柱の左右に取り付く耐震要素の耐力は、耐震要素の保有する耐力に等しい。
柱の左右に取り付く耐震要素の変形能力は、耐震要素の限界変形角に等しい。
V' = N + R ---C
R:柱脚金物の終局耐力或いは基礎の抵抗力(柱脚金物のない場合は、R=0)
この破壊形式の場合、i)と比べると、柱の引き抜けに対する抵抗力(柱カウンターウェイト)は ΔV= VW ‐ V'だけ不足していることになる。
柱カウンターウェイトの不足分ΔVによって、柱の右側の耐震要素により生じる上向きの力が VT' = VT - ΔV に低減される。そのため、柱の右側の耐震要素の終局せん断耐力は QUR' = VT × W / H < QUR となる。従って、柱1本に浮き上がりが生じる場合、浮きがりのない場合の耐力よりも QUR = ΔV × W / H だけ耐力が低下することになる。