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杉の板材を利用した水平構面の性能実験


Cまとめ

流しダボ仕様においては、流しダボと床板及び梁材にめり込みが生じることにより、変形の増大と共に耐力も上昇して安定した挙動を示し、脆性的な破壊は見られなかったが、隠し釘仕様においては、床板材が水平方向にズレるに従って、釘が床板材へのめり込み及び、曲げによる抜けが生じ、床板材と梁材との一体性があまり無く、剛性は流しダボ仕様に対してかなり低くなっている。

一般的に行われている施工方法での床倍率は、合板張りに比べるとかなり低いことが分かる。

横架材との一体性が低いのが欠点になり、初期剛性もほとんど期待できないのである。

これは、水平力を耐力壁に十分に伝えられないということである。

つまり、耐力壁がバランスよく配置されている(偏芯率 0.15以下の)住宅では、特別に剛床とする必要はなく、隠し釘打仕様のように柔らかい床としてもよいが、意匠計画上、四角四面の住宅はメーカーの企画住宅以外では非常に少ないといえ、一般的に住宅の間取り等の平面計画は敷地条件等により決定したり、また生活スタイルで決定されることが多く、それらの要素を含めて多様なプランで構成されているのが現状である。

流しダボ仕様ならば、耐力壁の配置があまりバランスのよくない場合(偏芯率 0.3程度)であっても、十分に水平力を耐力壁へ伝達することが可能であると言える。

実務で流しダボ仕様の水平構面を使用する際は、横架材及び厚板の溝に隙間なくダボを設置することで、初めて実験で得られたような性能を確保できるので、このような施工上の注意を守る必要がある。

また、今回は杉板の止め付けにコーススレッドビスを使用したが、釘(CN90)を使用しても性能は確保できるので、釘とコーススレッドビスのどちらでも可能である。


今回の実験により、杉の厚板による流しダボ仕様の剛性と耐力及び靭性等の構造性能が、構造用合板に匹敵する位の性能であることが確かめられた。

構造用合板による水平構面の剛性確保だけではなく、流しダボ仕様で住宅レベルの空間を、構成するのに必要な剛性確保が出来るので、杉の有効利用がさらに広がる可能性がある。


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 ©Tahara Architect & Associates, 2003