白浜温泉
●日本三古泉
白浜温泉(正確には湯崎温泉・・後述)は、有馬温泉(兵庫県)・道後温泉(愛媛県)と並んで、「日本三古泉」の一つに数えられている。出典は不明だが、三温泉とも日本書記などにその名が出ており、妥当な選択だろう。
白浜には、斉明天皇(女帝)、持統天皇(女帝)、文武天皇が行幸された記録が、日本書紀、万葉集、続日本書紀などに記載されている。
飛鳥・奈良時代には、「牟婁の温湯」「紀の温湯」の名で登場し、湯崎七湯に数えられる「崎の湯」「砿湯」は、白浜温泉の中で、もっとも歴史が古い。現在の外湯の露天風呂「崎の湯」と「弁婁の湯」がそれだ。

海岸に自然湧出していた湯崎温泉は、江戸時代になって湯治場として発展、当時は現在の田辺市から舟で来ることが多かったという。大正時代まではこの源泉場所に浴槽を掘って、下に石を敷き詰めただけの、原始的な(今になってはなんとも贅沢な湧きたての源泉風呂)共同浴場だった。明治20年に紀州航路が開設され、大阪から直接白浜に来れるようになって、湯崎温泉はじょじょに発展していった。

湯崎地区だけだった温泉地が、大正末期から各地区において開発会社による温泉掘削が行われ始め、湯崎山の手、東白浜温泉、大浦温泉、古河浦温泉などが誕生。一方で道路網が整備され始め、国鉄(当時)の白浜駅が開通、阪神方面からの客が増加し、町全体が温泉観光地として発展していった。

白浜温泉は、田辺湾から鉛山湾にかけて点在する新白浜・古河浦・大浦・網不知・東白浜・白浜・湯崎温泉などの総称で、ホテル・旅館が25軒、最大収容人員は8,570人(何れも「白浜旅館協同組合」のホームページから算出)の大温泉地である。(この他に多数の民宿・ペンション有り)
先日、白浜に宿泊した際にデジタルカメラで撮影した写真を編集しながら気がついたが、これらの旅館・ホテルの多くが白色、エーゲ海を観光した際に訪れたミコノス島を思い起こさせる風景だった。
白浜温泉の魅力は、恵まれた湯量、洗練された設備・料理・サービスのホテル・旅館、白良浜・円月島・千畳敷・三段壁などの景勝、新鮮な魚介類、数多いテーマパークなどのレジャー施設、それに夏の海水浴など、単なる温泉地という枠を超えた総合力にある。山間(やまあい)の温泉は雨や霧の日が情緒を増すが、白浜は快晴・青い空が似合う温泉リゾート地だ。
昭和30年ごろから団体客が増加、これらを受け入れるために旅館の大型化が進んだ。
昭和35年ごろからマイカー時代に入って車による客も次第に増え始め、昭和43年に南紀白浜空港が開港、首都圏からの受け入れも可能になった。

現在の白浜は、ジェット化された空港、スピードアップした「スーパー黒潮号」が走り、長年の夢であった高速道路の阪和自動車道が20km弱手前の南部町まで伸びてきて、阪神方面からの所要時間が著しく改善された。
2004年6月、実際に走ってみて、白浜が近くなったのに驚いた。かわりに御坊から海沿いを走る日本版「グランコルニッシュ(南仏の海を見下ろしながらの断崖道路)、42号線の景観を見ることが出来なくなって残念だったが。

白浜温泉は熱海温泉・別府温泉と並び「日本三大温泉」の一つとして数えられる。いつ頃から呼称されたのか不明だが、ホテル数、収容人員、温泉地の面積などをベースにすれば、この三温泉は妥当だろう。
大型温泉地はバブル崩壊、団体客の減少・温泉嗜好の変化などにより軒並み宿泊客が減少し、倒産も相次いでいる。近年では熱海、鬼怒川などがその例だ。これらの温泉地と比較すれば、関西圏の不況というハンディを抱えながら、白浜よく奮闘しているように思える。

白浜温泉の魅力は、恵まれた湯量、大小さまざまな宿泊施設、白良浜・円月島・千畳敷・三段壁などの景勝、新鮮な魚介類、アドベンチャーワールドなどのレジャー施設の充実、それに夏の海水浴など、単に温泉地というよりはリゾート地と呼ぶべき総合力にあると言える。
白浜町のホームページによれば観光客の推移は下表の通りである。
バブル崩壊の1992年に宿泊客が大幅に減少、その後、漸減傾向にある。一方、日帰り客が増加傾向にある。
2004年度は、高速道路の延伸(但し、高速道路の整備は、日帰り圏の拡大を招来し、宿泊客を減少させる危惧がある)、紀伊山地の世界文化遺産登録、関西経済の浮揚など追い風がある。
一方、自助努力として、個人・グループの集客力強化、、紀伊山地の世界遺産登録を契機とする紀伊半島南部の温泉・観光地のリング形成によって、白浜がそれらの中心部としての地位を確立する諸対策が望まれる。また、長期的に見ればもっとも大切な温泉そのものの管理、湯脈の保護、湯量に見合った入浴設備、宿泊しやすく特徴のある中小旅館の充実などが重要になってくるだろう。
いずれにしても、宿泊客の下止まり、さらには増加に転ずることを強く願い、祈る次第だ。
                               (単位:1000人)
年 度 宿泊客 日帰り客 合 計
1990 2,361 1,140 3,501
1995 2,163 1,178 3,341
2000 2,017 1,303 3,320
2002 1,943 1,316 3,259
2003 1,957 1,305 3,262

資料:白浜町HP、2003年は町から送っていただいた資料による。
尚、観光客の数字について、1995年の宿泊客と日帰り客の合計が合わない。合計が誤りとして算出した。
●日本三大温泉
●湯量と高温泉
湯量
白浜温泉の源泉は、昭文社発行「関西温泉&やど」(2004年度版)によれば「約45ヶ所」とある。
手元に湯量についての統計的な数値がない。したがって安易に湯量が豊富とは言えないが、少なくとも日本三古泉の中では、白浜がもっとも湯量に恵まれているようだ。日本経済新聞社発行「日本百名湯」(松田忠徳著)の記事を引用させていただく。
【以下引用】
日本三古泉のなかで、白浜は最も湯量に恵まれている。100軒余(民宿・ペンションを含む:管理者注)の宿の多くが自家源泉を有しているのである。なにせ湯崎半島の突端に湧く露天風呂「崎の湯」などは、1344年前に斉明天皇が入浴された当時のままの「日本最古の風呂」といわれ、湯質も白浜で群を抜いている。」
高温泉
白浜の温泉は32℃から85℃と幅があるが、高温の温泉が多い。
なぜ、火山帯でもない紀伊半島南部に高温泉が湧くのか謎であったが、先日、読売新聞に次のような記事が掲載された。

「火山が近くにないのに高温の湯が湧く南紀白浜付近の温泉の熱源は、これまで考えられてきたような岩が溶けた高温のマグマでなく、地下深くに太平洋から潜り込んだプレートからにじみ出た高温の水分であることが核燃料開発機構の調査でわかった。
高温の岩盤に地表から染み込んだ地下水などが接して、加熱され、和歌山県の白浜温泉(78℃)や湯の峰温泉(92・5℃)などで高温の温泉が湧き出す原因になっている。」

(詳細は当サイトの「全国温泉事情」参照)

この記事を読んだとき、近い将来予想される南海大地震で、地下のプレートの構造が変わり、白浜温泉や湯の峰温泉で湧出がストップしたり、とんでもないところから温泉が噴出すのではないか、と考えてしまった。大地震後、白浜の温泉湧出が止まらないことを願うこと切である。

崎の湯手前の源泉
湯の峰温泉の源泉「湯筒」
●外湯
温泉地の評価をする場合、そこに外湯があるかどうか、そこの湯量と質がどうか、という観点を重く見ている温泉評論家がいる。もっともなことだ。外湯が多い、ということは概して湯量が豊富、またそこが温泉発祥の場合が多く、源泉に近いので生に近い湯で入浴できるからだ。白浜には6ヶ所の外湯(日帰り温泉施設を除く)がある。
崎の湯・牟婁の湯 しらすな 白良湯 松乃湯 綱の湯の6つだ。
外湯の案内は別掲。
●足湯
近年、温泉情緒を高めたり、日帰り客・立ち寄り客のために足湯を新設する温泉地が多い。
白浜では、白良浜の「しらすな」と「柳橋」に設けられている。ベンチが据えられ、気軽に温泉気分、足の疲労回復に利用できる。
建物がみな白いでしょう!?
日本で一番古い温泉・崎の湯
崎の湯・鉱湯(まぶゆ)の2つの源泉掛け流しが楽しめる弁婁の湯
前方に白砂の白良浜を望む
崎の湯と並ぶ白浜のシンボル、円月島(白浜町作成絵葉書、使用ご了解済み)
ハワイ・ワイキキと姉妹ビーチを締結した白良浜(白浜町HPから借用)
アドベンチャーワールド・日本一のパンダ6頭。双子の赤ちゃんに引き続き2005年8月にまた赤チャン誕生。(写真は同園HPから)
町役場に「パンダの町白浜」の横断幕がかけられていた。
牟婁の湯
白浜温泉では、上記の外湯すべてに入浴した客に、記念品(湯の花)を贈呈している。(2004年7月6日現在)
白浜温泉旅館協同組合加入の各旅館、観光案内所、白浜町役場・観光協会、白浜温泉旅館協同組合事務所の各所で左の「外湯めぐり」パンフレットを受け取り、各浴場で入浴記念スタンプを押したものを、各浴場管理人に提示して記念品を受け取る。

尚、パンフレットを持参すれば、どこでも50円割引で入浴できる
私もこれを使って崎の湯と牟婁の湯に入浴したが、ここで湯疲れ、ギブアップした。
●旅館・ホテル
白浜温泉旅館組合のホームページによれば、旅館・ホテルは25軒(他にペンション・民宿多数)。
最大収容人員は8,570人/日(管理者集計)、関西最大の温泉地だ。
白浜の旅館は広い地域の7ヶ所に分布、いずれも田辺湾や鉛山湾を望む風光明媚な地区に建てられている。これに対し、同じ日本三大温泉の一つ、やはり海浜沿いの熱海温泉は、狭い地域に密集、海岸線も短く狭く、自然美に欠ける。白浜の旅館・ホテルも高層が多いが、白砂の海岸線や緑の多い岬に点在し、また建物が白亜がほとんど、周囲の環境と見事にマッチしている。癒し・保養・観光・レジャーなどの観点からは、はるかに白浜温泉が上回る。
旅館・ホテルの概況については別掲(準備中)
南紀白浜
ゆめぐり札
組合加盟の旅館・ホテルに宿泊すると、「南紀白浜ゆめぐり帳」を購入できる。(2004.7.6現在)
料金は1,300円。これを利用すれば、20の旅館・ホテルの内、3ヶ所で入浴できる。
高級ホテルの3ヶ所を選んで入浴すると、個別に入浴するのと比べて半額以下になってお得。
また立ち寄り入浴ができない旅館の風呂にも入れるので、この点でも嬉しい。
但し、入浴可能時間をチェックして計画的に行かないと、宿泊した旅館・ホテルの風呂にゆったりと
入浴できない羽目になるのでご注意。
●椿温泉
白浜から南へ約10km、白浜温泉とは対照的に、旅館5軒、国民宿舎、民宿2軒が小さな入江にひっそり佇む静かな温泉地。
旅館から徒歩5〜10分のところに水のきれいな椿海水浴場がある。
旅館付近の海は岩礁が多く、貝拾いや磯遊びが楽しめる。
また、椿温泉は釣り場としても名高く、ハマチ、タイ、イサギ、グレなど付近の磯で釣れる。
外湯めぐり
外湯めぐりパンフレット
しらすな
柳橋