白骨温泉・白船荘 新宅旅館 (長野県)
所在地 : 松本市安曇白骨 (旧 南安曇郡安曇村)
2005年4月1日、白骨温泉が位置する安曇村は、他の3村とともに松本市に実質吸収された。
今回の合併により、松本市は日本を代表する山岳観光地(上高地・乗鞍岳・乗鞍高原)と白骨・乗鞍高原温泉などの温泉地を一挙に手に入れることになった。
旧安曇村は、松本市の西方に位置し、西は岐阜県に接している。村は、槍ヶ岳・穂高岳・乗鞍岳などの山岳地帯から標高660m〜1,500mの乗鞍高原に及んでいる。
安曇村は、スイス最大の山岳観光地グリンデルバルド村と姉妹都市(村?)を結んでいる。
この村は、アイガー・メンヒ・ユングフラウ・ベッターホルンの巨峰が聳え、前方に美しいアルプが広がる、スイス一番の美しい山岳風景だ。
安曇村の山々は1000mほど低く、スケールにおいて見劣りするが、総合的な山岳美は同等と言っていいだろう。

温泉名 : 白骨温泉
昨年7月、白骨温泉の公共野天風呂に草津温泉の湯の花から作った入浴剤を入れて、乳白色に偽装していたことが報道され、その後、旅館3軒も同じ偽装をしていたことが判明した。
これがきっかけで、温泉偽装が全国的に飛び火し、さすがのお役所(環境省)も重い腰を上げて、全国調査を行い、温泉法改正に着手した。
実家からの帰途、少し遠回りして、この話題の温泉に宿泊することにした。
長野自動車道・松本ICから国道158号線で高山方面に向かう。
この道は、中程の安房峠(標高1,790m)が最大の難路でり、
豪雪地帯の為、11月中旬から5月上旬まで約6カ月にわたって通行止めになる上、 非常に険しい地形で火山地帯の為、地質がもろく、降雨によりしばしば通行止めになることがあった。

平成9年12月、 長野県と岐阜県の県境をくり貫く長さ4.4kmの安房トンネル(有料)が開通し、首都圏方面から奥飛騨温泉郷・高山方面への通年通行が可能になり、所要時間が著しく短縮された。
白骨温泉へは、この安房トンネルの前後で国道158号線から分岐する2つのルートが有る。

一つは(松本側から来て)トンネルのかなり手前、「乗鞍高原(温泉)」方面の標識に従って左折、県道84号線(乗鞍岳線)を進み、乗鞍高原にいったん出てから、乗鞍林道を少し走って白骨温泉に向かう。ルートの2/3に当たる県道が2車線の道路で、乗鞍岳を遠くに見ながら快適なドライブが楽しめる。

もう一つは、(高山方面から来て)安房トンネルを通過し、その後県道300号線(白骨線)に乗って、1.5車線の道を7kmほど進むルートだ。

冬季は、この県道は閉鎖されるのに対し、県道84号線は通年可能だ。
乗鞍高原の素晴らしい風景も楽しめるので、県道84号線ルートを取ることをお勧めしたい。


何れのルートでも最後に白骨温泉の案内所に到達する。
ここでマップなり情報を入手すればよい。(但し、大きな露天風呂で有名な旅館「泡の湯」に宿泊・立ち寄り湯をする場合、県道84号線ルートを取ると、案内所の前に位置しているので注意)。
案内所の目の前の谷底に、問題になった「白骨温泉野天風呂」がある。上から風呂を見下ろすと、男性用の湯船は丸見え状態だ。
私が到着した日はここが再開したばかりで、5月末まで無料公開になっていた。

13軒の宿は、この案内所を中心に、半径1km以内の山間に点在している。標高1,400m、山深い乗鞍岳北東中腹にある白骨温泉は、旅館数が多いので、世間的には秘湯と呼ばれることが少ないが、周囲の厳しい自然やアクセスの不便さからすれば、まさに秘湯と言っていいだろう。

「白骨」という特異な名前は、もともとは「白船(しろふね)」と言われていた。この白船は、温泉に含有されている石灰成分が、木製の湯船に付着して白くなることに由来している。
明治時代の「大日本地名辞典」には、白船・白骨の両方で紹介されている。その後、中里介山の長編小説「大菩薩峠
(机龍之介が懐かしい)で、「白骨の巻」として登場したので、全国的にこの名でが知れ渡り、「白骨」の名が定着した、というのが通説のようだ。

白骨温泉の旅館の中で、温泉を着色していたのは、共同浴場の「野天風呂」の他、「白船グランドホテル」「つるや旅館」「小梨の湯 笹屋 」の3軒だったが、現在はもちろん取り止めている。
これらの施設で温泉を着色していたものの、白骨温泉はもともと湯量が豊富なので、全旅館が掛け流しになっている(一部が加温・加水)


日帰り入浴は、再開した「公共野天風呂」の他に、旅館「泡の湯」の名物巨大露天風呂と外来専用風呂、大石館、白骨ゑびすや、笹屋、丸永旅館、柳屋旅館、外来専門の煤香庵などで可能だ。
また食事どころが5ヶ所ほどあるので昼食の心配はいらない。
国道158号線、高山・上高地・乗鞍高原の標識。
1.5車線部分もある乗鞍林道
湯川の激流が横を流れる野天風呂
当然のことながら、以前の乳白色から僅かに青味がかった透明な湯になっていた。
新宅旅館は、慶長元年の創業、今年で140年目を迎える老舗だ。
旅館名の前に「白船荘」とあるのは、白船が白骨に取って代わられ、消えつつあるのを惜しんで付けられたということだ。

新宅旅館を予約した理由は消去法によった。
・トイレが付いていること。(白骨温泉にはトイレ無しの小さな旅館がけっこうある。)
・源泉掛け流しであること。(後で分かったがすべての旅館が掛け流しだった)
・風情ある内湯・露天風呂があり、湯の色が白骨温泉のイメージである乳白色であること。(ガイドブックでは、新宅旅館の風呂の色が一番鮮やかだった)
・宿泊料金がリーズナブルであること。(これで、人気旅館「泡の湯」(27,000円〜)が脱落した。
・夕食が部屋食でなく、専用個室であること。(部屋食は好まない)
こうして残ったのがここだった。

新宅旅館は、遅い新緑の落葉樹の中に建ち、2階建ての本館の周囲を新旧3つの宿泊棟が囲む。
ロビーはごく標準的な観光旅館スタイルで、赤色系の絨毯が敷き詰めてある。
部屋数は全部で39室あって、白骨温泉にあっては大きい方だがサービスが行き届く規模だ。案内されたのは、平成10年に新築された「渓山館」の窓が2方にある角部屋(BT付)、10畳に2畳程度の踏み込みが付いた新しい部屋だった。
部屋の眺望は絶景とは言いがたいが、雑木林の緑が鮮やかだった。

宿泊料金は@15,000円(平日2人泊)で、ガイドブックで表示されている@15,900円(平日・4人泊)と比べると、BT付きの部屋でもあり、だいぶ割安になっていた。(当日の宿泊客は6〜7組)

食事は専用個室で取ることになっていて、部屋食が嫌いな私にはとても嬉しいことだ。
夕食は、左のもの意外に、岩魚の塩焼き、手打ち信州そば、煮物、山菜などの揚げ物など全13品、凝った料理でなく、地元の食材をシンプルに料理したうれしい料理だった。
(但し、覚悟していた馬刺しは、牛肉と一緒に焼いて食べた。)

新宅旅館は、湯温が50℃前後、毎分250リットル前後を湧出する自家源泉を持ち、すべての風呂が湯量を調整することによって、加水・加温なしの源泉掛け流しとしている。
風呂は、男女別内湯と露天風呂、それに貸切風呂が2ヶ所。
何よりも内湯が素晴らしかった。浴室の床・壁・湯船・窓枠など、すべてが木造。
湯船は3mx8mくらいの大きなもの、そこにこれこそ白骨温泉のシンボル、わずかに青味がかった乳白色、硫黄臭の温泉が惜しみなく流れ出ていた。
泉質は「含硫黄ーカルシウム・マグネシウム・ナトリウム炭酸水素塩泉」。
手で皮膚をなぞると、「きゅっきゅっ」と音がしそうな濃厚な湯だった。

源泉はももとは無色透明だが、温泉に溶けこんでいる炭酸ガスが発泡して、カルシウムと反応して炭酸カルシウムが形成され、これに硫黄が反応して白濁するそうだ。
炭酸カルシウムは、浴槽の縁や床に付着して湯船を白く覆い、「白船」に仕上げていく。
一般的に、硫化水素(硫黄)型の温泉は、酸性が強く飲むことができないケースが多いが、この湯はpHが6.5とほぼ中性なので、飲泉の許可も得ている。

山の斜面を利用し、木々に囲まれた露天風呂もかなりの広さで、周辺で見かけた溶岩のような岩石で縁取られている。
湯は同じように白濁、内湯よりはややぬるめで、マイナスイオンたっぷりの涼風を受けながらの入浴は、なんとも言えず快かった。
内湯と合わせてこれぞ日本の温泉、日本人に生まれてよかったと心底から思うような見事な風呂だった。

着色の不祥事があったが、白骨はやはり名湯と呼ばれるに相応しい温泉だった。

施設名 : 白船荘 新宅旅館 (宿泊日:2005.5.30)
「白船」の名の由来がこれだ。
新緑の木立の中に。
館内の一角
部屋番に「4」は珍しい。
部屋はピカピカだった。
信州黒毛和牛の朴葉味噌焼き
造りには馬刺しも。
丸ごとのトマトに帆立貝・、蛸・さより・アスパラガスなどをのせてゴマ酢のドレッシング。
品数が多い朝食は美味しかった。
データは変更されている可能性もあります。お出かけ前にご確認ください。
,白骨温泉から乗鞍高原に向かう途中で見た乗鞍岳。
住 所 長野県松本市安曇白骨温泉
電 話 0263(93)2201
交通機関 (東京から)長野自動車道松本ICから国道158号線等で約40km
(大阪から)東海北陸道飛騨清美ICから(高山経由)国道158号線等で約90km
松電新島々駅から松電バス白骨温泉行きバスで55分、終点下車
施 設(日帰り) 外来入浴不可
宿 泊 39室  平日16,000円前後から。詳細は下記HPでご覧ください。
泉 質 炭酸水素塩温泉(硫化水素型)
泉温49〜52℃、pH6.5、湯量240〜260リットル/分
適応症 不記載(理由は「温泉の基礎知識ー温泉の効能」参照)
入浴時間〔立ち寄り) 不可 宿泊者は24時間可
定休日 無休
入浴料金 立ち寄り湯不可
入浴施設 内湯男女各1 露天風呂男女各1家族風呂2
浴室備品
(日帰り)
観光スポット 温泉街周辺(天然記念物の噴湯丘跡中里介山文学碑)
上高地、乗鞍高原、乗鞍岳、安曇野、奥飛騨、高山、松本
お土産・食事 土産は館内で可能
近くの温泉 乗鞍高原温泉、さわんど温泉、奥飛騨温泉郷(平湯・福地・新平湯・焼岳・栃尾・新穂高)・坂巻温泉、中の湯、上高地温泉
松本市HP
旅館組合HP

新宅HP
http://www.city.matsumoto.nagano.jp/
http://www.shirahone.org/
http://www.shintaku-ryokan.jp/
雑記帳 白骨温泉から乗鞍高原(温泉)までは有料の乗鞍林道で30分足らず、白樺の木が生い茂る高原は清清しくて美しい。