転げ落ちそうな脱衣棚


仙郷湯

塩原温泉郷は、宿泊施設が70軒弱、年間120万人が訪れる関東有数の大温泉地で、西の別府温泉や東の草津温泉と並ぶ温泉地である。
同じ栃木県の大型温泉地である鬼怒川温泉と比較して温泉力で遥かに勝り、私が贔屓にしている温泉地の一つだ
塩原温泉郷は大同年間(806年~810年)に赤川河畔に湧く温泉が最初に発見され(現在の元湯温泉)、最近開湯1300年を迎えた。

塩原温泉郷は、渓谷美を誇る箒川及びその源流に沿って(1ヶ所のみ例外)多数の温泉が点在し、これを総称して「塩原11湯」と呼ぶ。
東北自動車道西那須野塩原ICから国道400号線に乗って西へ進むと、最初に現れる「大網温泉」から始まって、「福渡」「塩釜」「塩の湯」「畑下」「門前」「古町」「中塩原」「上塩原」「元湯」「新湯」までの11湯である。

11湯はそれぞれ独立した温泉地で規模・雰囲気・泉質などが異なり、1度や2度の宿泊ではとても塩原温泉郷の全貌は掴めない。
しかし共通しているのは素晴らしい風呂を持ち、湯量が豊富で源泉かけ流し、昔ながらの雰囲気を保つ趣ある宿が多いことだ。


東北自動車道西那須野塩原ICで下りて、国道400号線を西へ20分ほど走る。周囲が次第に山深くなり、箒川にそって巨岩・奇岩が見えてくる辺り、塩原温泉郷の入口に一軒宿の大網温泉が湯煙を上げている。


日帰り入浴の看板が国道沿いと玄関前に置かれていて、立ち寄り湯が歓迎されているのが分かる。

「野天風呂」は午前7時~午後10時(月・金は清掃のため午後3時~午後10時)、入浴料金は800円。

「展望風呂(大浴場)」は午後1時~10時、入浴料金は800円(野天風呂とは別料金)

事前予約は不要で、料金は何れもフロントで支払う。

湯上がり処

夕食は部屋食、朝食は食事処で取った。
湯守田中屋の夕食は、炉端会場で栃木和牛・新鮮高原野菜などの地元食材を自分で焼きながら食べる「囲炉裏料理」と部屋でゆったりと食事できる「湯守会席膳」の2種類から選べる。

囲炉裏料理は、炉端に足を折って座りながら食べるものと思い、膝・腰に支障がある私たちには辛いと考えて湯守会席膳を選んだ。
しかし、これは椅子・テーブル席で取ることが翌朝判明、夫婦で切歯扼腕した(囲炉裏料理のイメージは宿のHPを参照のこと)。

朝食はハーフバイキングで、基本的な料理に加えて、野菜サラダ・牛すじと高原大根の煮物・湯豆腐・焼鮭・ふきみそ・きゃらぶき、・うめぼし・果物・ヨーグルト等好きなものを自分で皿に盛って取る嬉しいシステムだ。

無色透明無臭、優しい感触の温泉

一度に30人位は入浴可能、低温サウナもある。

シャンプー類が充実。

男は7階、女は6階にある大浴場の「展望風呂」はとても広い。木造の風呂が3つ、ジャグジーと普通の浴槽、それに寝湯がある。中でも5人が横たわれる大きな寝湯が素晴らしい。オール木造、刻みが掘られているので横たわっても滑らないので、心行くままに浸かっていられる(もう少し温度が低かったら更に嬉しい)

手前からジャグジー、普通の浴槽、寝湯。木造なので温もり感が伝わってくる。

河原湯

河原湯の窓から見た淵。

河原湯内部、温泉はとても温い。

崖下の淵の横、トーチカのような湯屋の河原湯(混浴)

ここは足下湧出で温度調整が難しく、この日はやや熱めだった。地味な風呂だが、透明度抜群、新鮮な温泉を是非味わいたい。

2~3人程度の小さな石間湯(混浴)は深くて、底には大小の石が転がってるので、入浴の際は注意。

白い崖と巨岩と緑色の深い淵が造形する渓谷を見下ろす仙郷湯(混浴)

コーヒーにもこだわりがある。

自家焙煎珈琲業界でも数少ないカッパー(ワインにおけるソムリエ)として知られている軽井沢 丸山珈琲オーナーから買い付けた選りすぐりのコーヒー豆を使用している。(宿泊客400円・日帰り客500円)

出来あがったマイ朝食、那須高原の牛乳も美味しかった。

アツアツ・ふわふわ、感動の卵焼き

若き料理長の大竹健一さんが、客がテーブルに着くのを待って卵焼きを作りだす。

朝食はハーフバイキング


甘味

酢の物

揚物(替り揚げ)

温物(霧降高原牛鉄板焼き)

川魚炭火焼(岩魚)

凌ぎ(一口手打そば)

お造り

椀替り(紙鍋仕立)

前菜

先付

● 夕食

「出来あいでない先付や前菜」「地元食材への拘り(地産地消)」「全般に薄味仕上げ」「上質な栃木牛」「手打の蕎麦」など、滋味で心のこもった会席料理で、完食にもかかわらず胃もたれが残らなかった。

品のいい落ち着いた雰囲気のロビー

国道400号線沿い、塩原温泉郷入口にある大網温泉の一軒宿・湯守田中屋。国道の反対側は箒川が造る深い峡谷だ。

国道400号線を渡った反対側の箒川渓谷斜面に設けられた男女別の半露天・展望風呂。渓流は見えないが、何とも爽快な、それでいて木造の風呂なのでしっとり感がある。

デッキも風呂も木造で温もりたっぷり。4人位が入れる大きさで、浸かった瞬間、湯がザザァ~と贅沢に流れ出る。
一定時間(19時30分~22時45分)、貸切風呂となる。

掛け流し

塩原11湯の入口にある大網温泉の一軒宿・湯守田中屋は、源泉かけ流しの8ヶ所の風呂、若い料理長が作る美味な食事、それに女将以下のスタッフの心温まる応対と笑みがとても心地よい湯宿。
国道を挟んだ向かいの渓谷を300段下って入浴する「野天風呂(4ヶ所)」は、急峻な崖・巨岩と深い淵が構成する渓谷美を愛でながら入浴が楽しめる絶景露天風呂だ。

混浴野天風呂の一つ「仙郷湯」

湯守田中屋の最大の持て成しは、源泉3本の豊富な温泉を使った8つの風呂だ(客室付属分の風呂を含まず)。
男女別もあるので全部に入浴出来る訳ではないが、それでも滞在中に完全制覇はかなり忙しい。現在のチェックイン午後3時を、(多くの宿が実施している)午後2時に早めてほしいと思う所以だ。


風呂は大きく分けて3ヶ所ある。
出典は不明だが日本三大渓流露天風呂の一つと宿がPRしている野天風呂、男女別だが時間帯によって貸切となる渓流露天風呂、それに館内6階と7階に設けられた大きな内風呂である展望風呂がそれだ。
いずれも豊富な温泉を贅沢に使った加水・加温無しの純粋掛け流しだ。
その温泉の代表的な泉質は、泉温62.5℃、無色透明・無臭のナトリウム・カルシウム・硫酸塩泉で、皮膚に優しいやわらかな温泉だ。

崖道を300段下った峡谷の谷底、白い巨岩がごろごろ転がった不気味な深緑色の淵を臨む斜面と渓流沿いに4つの風呂がある。

混浴の「仙郷湯」「石間湯」「河原湯」と女性専用で屋根がある「美人の湯」がそれだ。

・仙郷湯は、斜面の途中にあり20人位が一度に入れる大き目の風呂で、眼下に峡谷を見下ろして眺望が一番素晴らしい。

・石間湯は、谷底の岩石の間にある小さな方形の風呂で、深めで底には大小の石がごろごろしている。
このときは気がつかなかったが、この風呂は底から温泉が湧き出す足下湧出風呂で、温度管理が最も難しい風呂と宿の方から聞いた。

・河原の湯は、渓流の目の前にあり、まるでトーチカ(鉄筋コンクリートで固めた防御陣地)の様に上部・左右をコンクリートで固めた風呂。増水したらすぐ水面下に沈む風呂だ。
温い温泉だが、これは川と同じレベルにあるので、川の水の浸水が激しいためだそうだ。

石間湯

女性には湯タンポ。初めて経験するサービズに家内喜ぶ。

独立した風呂・シャワー付きトイレ・化粧品等が充実した洗面所の他に水屋があって便利。

館内はどこも手入れが良くされていて清潔、洒落た雰囲気が漂う。

玄関先にある風情たっぷりの飲泉所(右側が温泉)


521号室。床の間付きの12畳+6畳+広縁代わりの小さな洋間と贅沢な広さ。

フロントに置いてある地元の里芋。好みで味噌をつけて頂く。

チェックインを左のデスクに座って行う。お客様志向の丁寧な応対だ。



住 所 栃木県那須塩原市塩原6 (合併前住所:那須郡塩原町下塩原6)
電 話 0287-32-3232
交通機関 東北自動車道西那須野塩原ICから国道400号線で約15km
東北新幹線那須塩原駅から塩原行バスで約30分の塩原大網下車
施 設(立ち寄り) ロビー、売店等  駐車場(40台)
宿 泊 1泊2食付13,650円~28,350円(2010年4月現在)
料金は、各種要件で異なるので予約の際は下記ホームページを必ず参照のこと。
泉 質 ナトリウム・カルシウムー硫酸塩泉(芒硝泉 泉温62.5℃、無色透明無臭 
適応症 不記載(理由は「温泉の基礎知識ー温泉の効能」参照)
立ち寄り入浴時間 「野天風呂」は午前7時~午後10時(月・金は清掃のため午後3時~午後10時)
「展望風呂」は午後1時~10時 いずれも事前予約不要
定休日 無休
入浴料金 野天風呂 大人800円 展望風呂(大浴場) 大人800円(別途料金) 
入浴施設 内湯:男女各1(サウナ、ジャグジー、寝湯、打たせ湯、水風呂等)、露天風呂:混浴3女性1、男女別半露天風呂2宿泊者専用 19時30分~22時45分は貸切制
浴室備品 内湯はシャンプー、ボデイソープ、ロッカー、ドライヤ
野天風呂は何もなし(洗い場もなし)
観光スポット もみじ谷大吊橋、回顧の吊橋、稚児ヶ淵、千本松牧場、回顧の滝、龍化の滝
お土産・食事 宿で土産物は買えるが昼食は取れない。
近くの温泉 塩原11湯、鬼怒川温泉、那須温泉郷、川治温泉
那須塩原市HP
旅館組合HP
湯守田中屋HP
http://www.city.nasushiobara.lg.jp/
http://www.siobara.or.jp/
http://www.tnky.jp/
雑記帳 栃木県は父親の出身地、疎開先として私も6歳まで県内で育った。三つ子の魂100まで・・・高校野球は育った東京でもなく、現在住んでいる奈良でもなく、栃木県から進出した高校を応援する。

食 事

湯守田中屋の創業は明治24年(1891年)、120年の歴史を有するが、近年になって短期間だが館名が温泉宿小町に変更され、2005年に元の名前に戻された。

長い歴史の間に、経営に関していろいろな課題を抱えたのだろうと推察するが、現在の田中屋は、2003年・2005年に館内・客室・風呂がリニューアルされて快適さが増し、加えて女将以下スタッフの心地よい応接と笑みに思わず心が和む。

部屋数は全部で26室と中規模だが、部屋タイプが「露天風呂付き特別室」から「次の間付き和室」「スタンダードの和洋室」等6タイプもあり、料金帯も13,650円~28,350円(2010年4月現在)と予算に応じて幅広い選択が可能だ。
料金に関しては季節に応じた割安なプランもあり、予約の際は宿のホームページを必ず参照ください。

今回宿泊したのは521号室「次の間付き和室」で、料金は1室2人平日で1人15,750円(税込)。
12畳・6畳の二間の和室に、広縁代わりの椅子2脚とテーブルが置かれた小さな洋室と2人には贅沢な広さ。
加えて洗面所・トイレ(シャワー便器)・浴室がすべて独立していて、とても使い勝手が良かった。

風 呂

塩原温泉郷 大網温泉 湯守田中屋 (栃木県)

所在地 : 那須塩原市塩原

渓流露天風呂

データ (データは変更されている可能性もあります。お出かけ前にご確認ください。)

2005年1月1日付けで黒磯市・西那須野町・塩原町が合併して那須塩原市が誕生した。

市は広大な那須野が原の北西一帯を占め、東京から150km圏の距離にある。

旧塩原町の西側、塩原地区は那須火山帯の山岳地帯で、湯量豊富な塩原温泉郷をはじめ板室温泉・三斗小屋温泉などが湯煙を上げている。

関東を代表する温泉地の一つ塩原温泉郷は1000m級の山々に囲まれ、 町の中央を箒川が流れ、多数の滝や渓谷が塩原温泉郷の素晴らしい景勝を作り上げている。

標高500m以上の高冷渓谷地帯にあるため、秋の紅葉は見事だ。
特に、日光方面から鬼怒川を経由する「日塩もみじライン」沿いは、季節になると全山が錦綾なす紅葉の名所である。

また酪農が盛んで、生乳の粗生産額は、本州で第一位(全国で第4位)を誇っている。

帰りのために設けられた崖道途中の休憩所。

 斜面の一番上にある女性用の「美人の湯」

野天風呂

チェックアウト直前の朝食は、宿泊した旅館の評価・印象に大きな影響を及ぼす。この点で湯守田中屋の対応は完璧だ。ここ独自のハーフバイキングシステムの朝食は質量ともに素晴らしかった。

何よりも宿泊した140ヶ所ほどの宿で初体験、目の前で作られるあつあつの卵焼きに感動した。それに野菜がたっぷり取れることが嬉しく、那須高原の新鮮濃厚な牛乳も美味しかった。

● 朝食

施設名 : 湯守田中屋 (入浴日:2003.7.17) (宿泊日:2010.3.17)

箒川沿いの塩原温泉郷

展望風呂

温泉名 : 塩原温泉郷大網温泉