宿屋のある方向とは逆に、少し丘の上に登って行く。夜道だが、十分に明るいくらいの光を、月は惜し気もなく地上に降り注いでいる。透明な空気は辺り一面を包み、すべてのものを鮮明にしているかのようだ。 「・・で、俺、きっとあの花が『月の滴』なんじゃないのかなって、思うんだ」 買い物の帰り道、八戒に聞いたことを三蔵にも話す。『月の滴』『妖精』・・・。普段の三蔵には全く縁のない単語が並び出てくる。 所詮、伝説は伝説。観光のため、好奇心を満たすための一つの言い訳に過ぎない。 「でな、八戒は、悟空なら『見れるかも』っていってくれたんだぜ!」 本当に嬉しそうに話す悟空に、しかし、そんな現実的なことを言う必要もないだろう。それに・・ 「確かに、お前なら・・」 (目に見えないものも、見えるのかもしれない・・) 何百年もつながれていたくせに、キレイなままの心。 -一体『誰が』悟空の心を『守って』いたのか? 「さんぞー、」 不機嫌になってしまいそうな思考方向へいきそうになっていた三蔵を悟空は、少し不安げな声で呼びかける。 「・・・なんだ、悟空?」 視線を悟空に向けずに、目の前に広がる闇に固定したまま呼びかけに応じる。痛いくらいの真っすぐな視線をほおに感じる。 「さんぞー」 「・・だからなんだ」 「さんぞー、さんぞー!」 しつこく、楽しそうに自分を呼ぶだけの悟空に、三蔵の強くもない堪忍袋の緒が音を立てそうになる。 「なんだってんだ、このバカ猿!」 ついには立ち止まってしまった子猿の方へ、仕方なく視線をやる。 隣にいるハズの、無敵の笑顔の少年。 しかし、自分を見上げてくる、その表情はその逆。薄氷の上に展開されている、危うい感情の表出。 少しの『言葉』が小さな亀裂を作り、やっと一人で立てるようになっていた子供の心は、また『水』にのみこまれてしまうだろう。 「さんぞー、おれさ、」 ふっ、と右手にかかる温かい重量感が消える。 たたたっと駆け出し、三蔵の5メートルほど先まで走っていく。 「こーゆーの大好き!」 へへっと、いたずらっぽく笑う悟空の姿が、透明感を帯びる。よるの空気に溶けて行きそうな・・。 「?」 不可思議な感覚に、三蔵は悟空を呼び止めようとするが、その声は悟空の元気な声にかき消されてしまった。 「さんぞー!着いたぞ!すっげー!」 三蔵に背を向け、下り坂になっている、そのしたをのぞき込んで、感嘆の声をあげた。 再びたたたっと三蔵の近くに寄ってきたかと思うと、ぐいぐいとひっぱていく。 「ほら!速くってばー」 のろのろと歩く三蔵をなんとか坂の上まで引っ張り上げる。 そして、その眼下に広がる光景。 白い、いや、黄色い、違う。そう、これは悟空の瞳と同じ色。淡い黄色のはずの花びらが、月の光に照らされ、ぼんやりと金色に姿を変えている。 ところどころ虹色にきらめいているのは、夜露のせいか。 幻想的な、光景。 月が見せる、少しの間の芸術作品。 二人はゆっくり、坂を下りて、その花畑の端までやってくる。 八戒の言った伝説も、あながち嘘ではないのかもしれない。それほどまでに、非現実的なビジョン。 隣で、悟空が一歩進む足音が聞こえる。 「なんだろ、コレ。すげー変な気分」 戸惑うような悟空の声に、いぶかしげに三蔵は隣を見やる。 じっと、その光景を見つめる悟空の瞳から、透明の涙が頬へ、頬から足下に咲く花びらへと落ちていく。 その涙を受けて、さらに花びらの輝きは生命感を帯びたように輝く。 小さな声が響く。 「そっか・・そーなんだ・・。」 「悟空?」 「俺、分かった気がする!」 そう言い残すと、悟空はぴょんっと花畑に飛び込む。できるだけ花を踏まないように、悟空にしてはとても気を使ってゆっくり花のじゅうたんの中を歩いて行く。 ちょうど、花畑の真ん中まできたところで悟空は頭上で静かに輝く三日月に向かって、腕を伸ばした。月の光が一筋になって、悟空の指先から全身を包み込む。目を閉じると、気持ちのいい、あったかい感覚。 昼は、太陽に。 夜は、月に。 ずっと、自分はその光にむかって呼んでいた。 確かに知っている『誰かの』名前。 そしたら、来てくれた。 『三蔵』が。 自分が呼んでいたのが『三蔵』かは分からないけれど。 ゆっくり悟空は目を開いていく。 そう、さっきの疑問。やっぱり、きたら分かった。 -懐かしいって気持ち。 「え?」 目の前に、光ってゆらゆらと飛び回る、小さな光。形の朧げな・・・。これは? 「・・・よーせい?」 その声に返事するかのように、ひらひらっと羽をならして光の粉を宙にふりまく。 「さんぞー、ほら!」 花畑の端にいて、自分を見てくれているはずの青年に、大きな声で呼びかけたのだった。 一人何かに気づいたように、悟空は走り去ると、花畑の真ん中で、まるで、月に身を捧げるかのように目を閉じて立つ姿に、三蔵は、何か焦燥の念が沸き起こる。そのまま、囚われて、自分の目の前から去ってしまうのではないか? 悟空の存在などは『別にどうでもいい』はずだった。 自分があいつのそばにいるのではない、悟空がいつも側にくるのだ。 『ついてきたいなら、ついてくればいい』 ・・でも、『待たない』。潜在的なイミ。 始めはそうだった。ならば・・『今』は? 「さんぞー、ほら!」 優しい月光に包まれた悟空の笑顔に、囚われる。出会ったときから、変わっていないようで、確実に『変わっている』。 ざくっと、花畑に足を踏み入れる。花を踏み付ける感覚。気にはならない。どうでもいい。 「さんぞー!」 こちらはできるだけ踏まないようにしているのか、ぽてぽて、よたよたとつま先で悟空は自分に向かって走ってくる。 いつもそうだ。 絶対に、コイツはオレの所へ帰ってくる。 「絶対に?」 (本当か?) 二人の距離が手をのばせば届くところで、悟空はぴょんっと三蔵の胸に飛び込んでくる。 小さな体は、難無く自分の胸に収まる。 「さんぞー、オレ見えたよ?ほら、ようせー!」 嬉しそうに三蔵に報告する。 『目に見えないもの』を映す、金の瞳。 「悟空」という名前をつけたものの存在が、三蔵の中でにわかに大きな存在になる。 「あ、今、俺の肩にのっかってるよ!」 三蔵の瞳には映らないもの。 悟空の背中に回した腕に、力が入る。 「オレには見えない」 「え?・・じゃあ、俺が頼んでや・・さんぞ-?」 三蔵は悟空の頭を自分の胸の中に抱え囲む。抵抗を押さえ込んで、抱き締める。 「そんなことしても見えるはずないし、俺もそんなもの見たくもない」 悟空は、なんとか息をするスペースを確保する。が、この状態だと、三蔵の顔が見えなくて・・。 「苦しーじゃん!・・さんぞー?」 不意に片手で顔を上げさせられると、じっと怖いくらいに静かな紫の瞳と出会う。 三蔵の形の整った唇が、言葉を発する。 「俺は、お前しか見えなくていい」 「さん・・ぞー?」 強い言葉に、悟空の体が強ばる。 「だからお前も、俺以外、映す必要はない」 互いに映すものは、お互いだけ。 そう、『今だけ』は。 「俺も・・さんぞーしか見えないよ?さんぞーしか、今、見ねーよ」 「・・・八戒も、悟浄も映すなといっても?」 悟空は、にこっと笑う。 「さんぞーが側にいてくれたらいい!」 きゅっと、悟空の細い腕が三蔵の首に回される。しがみつくように。悟空の温もりが浸透していく。「悟空、こっちを向け」 「ん?なんだ?」 三蔵の胸に顔をうずめていた悟空は、三蔵の顔を再び見つめる。 その表情は、月の光のせいか綺麗で、真っ白に透き通った白い肌は三蔵の目にはとても鮮やかなものだった。 「じっとしておけ」 「さん・・」 静かに唇と唇が触れる。初めは、優しく、徐々に深くなるキスに、慣れていない幼い悟空の体はびくんっと震える。 「はっ・・んっ」 ゆっくりと悟空の白い肌が紅潮していく。時々角度を変えて、何度も繰り返されるキス。 「んんんっ、さんぞー・・・・」 短かったのか、長かったのか、分からない時が過ぎる。悟空にとっては、初めての経験で。 「あ・・さんぞー・・」 体の熱さを感じて、悟空は力の入らない体を三蔵に任せる。三蔵は、そのまま悟空を花のじゅうたんの上に寝かせ、上から再びキスを降らす。 抵抗する悟空の腕を、押さえ付けて、地面に縫い付ける。しかし、それもだんだんなくなっていく。「ん・・」 押さえ付けていた腕を緩めると、悟空の両腕はするっと、三蔵の首にしがみついてくる。 悟空の瞳から、涙があふれる。でも、さっきのとは違う涙で・・。 「んっ!」 三蔵の唇が、悟空の首筋に吸い付く。赤い印。 「さんぞー・・」 快感に支配されるのを我慢するような声で悟空は、三蔵を呼ぶ。 「・・お月様が、見てる」 「・・静かにしろ」 「・・・ようせーも・・見てるよ」 泣き出しそうな声。 三蔵は悟空の首筋に埋めていた顔をあげて、ぽっとした表情の少年を見下ろす。 「俺だけをみていろ」 「三蔵だけ・・」 小さな悲鳴を上げる悟空の、のけぞった細い首筋を丁寧になめ上げる。 慣れない場所への深いキスに気をとられている間に、三蔵は素早く服を脱がしていく。 あらわになるのは、少年特有のすんなりした綺麗な身体。透き通った肌に、月の光が投影され、白さを増す。少しずつ、薄いピンク色に染まっていく肌は、とても扇情的で。 その白い胸の、小さな二つの飾りも桃色から赤く熟していく。 誰も味わったことのない悟空の小さな果実を三蔵は口に含む。 「やめっ・・痛い!」 舌でそれを弄びながら、片方の手で、残りの果実を乱暴につまみあげる。 ひときわ、悟空の体は、ひくっとすくむと、さっきまでの泣き声に、甘い息遣いが加わっていった。自然に三蔵にしがみつく悟空に苦笑すると、押さえ込んでいた身体を自分の胸に引き上げる。ちょうど、三蔵を跨ぐ格好に固定される。 「やだ・・なんか、変だよ、・・」 「どうしてだ」 顔を上げるのが恥ずかしいのか、悟空は三蔵の胸に顔をうずめる。 「だって・・おかしくなりそーなんだもん・・」 「顔を見せろ」 「!・・ん、やだ!」 必死で抵抗する悟空に三蔵は、耳元で低く呟く。 「言うことを聞け」 冷たく言い放った三蔵に、悟空は即座に顔を上げる。上気したピンクの頬と、何度も三蔵の舌に弄ばれた紅い唇。 「さんぞー・・ごめん」 (だから、嫌わないで・・) ぎゅっと目を閉じてしまう悟空の前髪を、三蔵の指が優しく梳く。 「嫌ったりしねーよ」 「さん・・あ・・やだ、どこさわってんだ・・ん!」 髪をなでていた手は、悟空のすべてを触れるかのように降りてゆき、今までの刺激に熱を帯び始めた悟空の中心へと廻る。 それを手の中に収め、強弱をつけて嬲る。 「やだやだやだー・・、」 明らかに焦りの入る悟空の声を無視し、三蔵の指は悟空を刺激し続ける。 「ん・・もう・・」 初めての快楽に飲み込まれるのが怖くて、悟空は必死で三蔵の背にしがみつく。 「ぁっ、なんか・・出ちゃうよぉ」 何か分からないものが、悟空の意志とは関係なしに出てきそうで・・ (その塊がなくなれば、楽になれる?) 「我慢しろ」 「あっ!痛い、やだ!」 その『何か』をせきとめる、三蔵の指。 ふっ、と悟空の震える背に回されていた腕の感触が消える。支えをなくした悟空はあわてて、前かがみになって、少し腰を上げる。 「悟空、」 「ん・・」 三蔵の人差し指と中指が悟空の唇を開かせ、侵入する。無理やりくわえさせられた唇からは、苦しげな息遣いが聞こえる。 指で悟空の口腔を犯す。 三蔵から与えられたものに、一生懸命に答える少年の姿は、淫らだけれど、それは穢されないものにも思えた。 しばらくの後、三蔵は悟空の口から指を引き抜くと、それをためらうことなく、堅く閉じられた蕾をゆっくり、押し広げていく。 「いっ・・いたい!やだ、もぉ・・!」 触れられたこともない、自分でも存在していたことも知らなかった場所に、指が侵入していく。 強く抵抗する、身体。手加減しない三蔵。 肩を握る指にも力が入らなくなって、悟空は、それでも必死に『大切な人』に縋る。 指が、体の中に入ってくる感覚。 -『怖い』という感情。 -何に対して? こうされることに対してじゃない、 そうじゃなくて、このぬくもりが、消えること。 「んぁ・・」 引き抜かれる指。 ゾクっとする瞬間。三蔵が、感じられなくなる『怖さ』。 「悟空?」 小刻みに震える腕の中の小さな体の微妙な変化に三蔵は気づく。 顔を上げさせると、幾筋もの涙の跡と、不安に溢れる金色の瞳。 声が、頼りなく紡がれる。 「オレ・・ずっと側にいたいよ・・」 金の瞳の奥に映る、自分の姿を三蔵は見る。 再び、唇が動く。声にならない声。 唇の動きで、読み取る。 (-ヒトリハ、ヤダ) すっ、と自然に三蔵の唇が、悟空の唇に重なる。今までで、一番静かな口づけ。 そのまま、再び悟空の体を地面に無造作にちらばった服の上に押し倒す。 周囲の花が一瞬揺らぐ。 三蔵の体がゆっくり悟空に重なり、互いの心音が溶け合う。 「力、抜いておけ」 三蔵は耳元で静かに囁き、悟空の華奢な足を抱え上げ、ほぐれた蕾に、ゆっくりと自分自身をそこに埋めていく。 「ん・・あっ・・・さんぞー」 さっきとは全然違う、もっと激しくて、熱くて、・・全身で感じられる、あったかさ。 悟空は、三蔵に縋り付く指に、最後の力を込める。 自分の中に感じる優しさを、二度と失わないように。 自分の名前を呼んでみたら -元気になれた 大好きな人の名前を呼んでみたら -少し、強くなれた でも、それじゃ、まだ怖いから、今度は・・ 大好きな人に名前を呼んでもらったら -もっと、強くなれた それでも、なんか、不安。でも、これ以上、分からなくて・・ずっと怖くて。 「さんぞー・・」 「・・悟空?」 その声に、今までの不安がすーっと消えてく。 三蔵の動きが激しくなっていく。きっと、解放のとき。 すでに悟空の体は限界で、でも、三蔵の首に絡めた腕だけは、そのままだった。 ふわふわした感覚。そっと悟空は目を開ける。澄んだ闇色に浮かぶ三日月。 月光に包まれた感覚。まるで、寝台。 快感に意識がのまれるまえに、最後にもう一度だけ、名前を呼ぶ。 「さんぞー・・・好き」 しばらくして返ってくる声。 「悟空」 そう、コレ。 大好きな人の名前を呼んで、振り向いて名前を呼んでもらえたら -何か無敵になれる気分 三蔵を受け止めながら、最後にことばをつぶやいて柔らかい眠りについた。 「まったく・・・」 気持ちよく自分の胸の中で熟睡している子供を、優しく抱き締めた。 さっきまでの表情は完全に消え去り、ただ、子供っぽい、無邪気な表情で、無防備に三蔵にすべてを預けて眠っている。 流した涙の跡はすべて乾き、しかし、三蔵の残した紅い印はくっきりと、悟空の首筋を飾る。 その印を指でなぞりながら、眠ってしまった悟空をみつめる。 気を失う前に、口にした言葉、いや、名前。 あまりに微かだったので、音も読唇をすることもできなくて。 分かることは、4文字の名前。そして、それがきっと、悟空の・・・ 「ん・・さんぞー」 きゅっと、悟空の小さな指が三蔵の服に絡まる。その指を手に取り、だれにともなく、問うてみた。 「お前の本当の大切な奴っで、誰だろうな」 自分、それとも自分じゃない? 金色の瞳のずっと奥に住むもの。 悟空の唇に、三蔵は静かに、そして、今までで一番、優しくキスした。 「・・みてんじゃねーよ・・」 いまいましく、空を仰ぐと、三蔵は、月を睨みつけた。 ◇ ◆ ◆ ◇ 「・・ん・・・」 瞼にまぶしい光の渦を感じて、ゆっくり目を開ける。体のあちこちがぎしぎし痛い。しかも、頭もぼーっとする。 「ここ・・どこ?」 確か、三蔵とケンカして、でも、なんか知んないけど、許してくれて・・で・・・。 「・・・・・」 一気に頭が冴える。しかし、逆に体はががーっと熱くなる。 「そーだっ!さんぞーは!」 ガバっと起き上がった瞬間、思いも寄らない所からの激痛に泣きそうな声をあげる。 「いってーーー!!」 ううう、涙が出る。なんで?? かちゃっと、その瞬間、ドアが開く。 「さんぞー!?」 「悟空、大丈夫ですか?」 悟空の敏感すぎるおなかにきゅううっとくる香りとともに、八戒は部屋に入ってくる。 ぐるるるるー。おなかの主張。 「ううう・・」 駆け寄りたいのに、それより痛みが先行してしまう。そんな悟空に八戒は少し、同情の瞳を向ける。「悟空、僕が食べさせてあげますから。」 「うん・・・」 その前に、服、とりかえましょう、と八戒は悟空のシャツを脱がしにかかる。 八戒にされるままに、悟空はシャツを脱がされる。あらわになった肌を見て、八戒は、はぁぁっとため息をつく。 「これは、また・・分かりやすい人ですね・・」 「何?」 自分の胸を見つめて呆れた声を出す八戒に、首をかしげて尋ねる。 そんな悟空に、にっこり八戒は微笑む。 「これだけあったら、一つ増えてもいいですよね」 「???」 一人で納得してしまっている八戒に悟空は疑問符が飛び交う。 「今は、うるさい飼い主もいないようですし・・」 そういって八戒は、悟空の首筋に、唇を近づける。 「そこまでだ・・」 扉の方から、低い声が聞こえる。 「朝っぱらから、何してる」 「見て分かりません?昨日の掃除のお駄賃です」 はははっと笑って、ちゅっと悟空の首筋に触れるだけのキス。 「そういえば、悟空、昨日妖精に会えましたか?」 「おう!会ったぞ!」 「そうですか、じゃあ、今度は僕に、ね」 「うん!」 元気な子供ににこにこと笑いかける。 「多分、三蔵よりは上手にできますよ」 あはははは、と笑うと、ピクピクとこめかみに2、30個怒りマークが踊っている三蔵の横を通り過ぎる。 ドアから出る前に、再び無敵の笑顔で 「僕たちも、悟空には甘いと思ってましたが、やっぱり三蔵には適いませんね」 そういうと階段の方へ、洗濯物をもって降りて行く。 「あ、それから、外は衛生上悪いので、中でしましょうね、悟空」 下から、八戒のよく通る声が2階にかけのぼる。 「一番無敵なのはコイツだよな・・・」 廊下で一部始終を観覧していた悟浄は、そうつぶやく。で、常識人なのはオレかも・・と深い深いため息をつくのだった。 「・・・・八戒」 「なになに??」 一人、疑問の渦の悟空に三蔵は、八戒のもってきたご飯を悟空に食べさせる。 「今日は特別だ」 「うん!」 外は、気持ちいいくらいの秋の青空。 近くにいる『大切な人』 もう一回だけ、呼んでみた。 「三蔵」 「・・悟空?」 くすくすと笑う悟空の頭に、ばしっとハリセン。 「ま、幸せなら、それでいいんじゃないですかね」 にこにこ。 八戒は、ぱたぱたと、洗濯物をほしながらのほほん、と笑うのだった。 ピィ。ジープはうなづくように鳴いた。 〈了〉 |
コメント 終わりです・・・へたれなHシーンでスミマセン・・っていうか、実は私、ヤ○イ初書き・・・キンキでも最後まで書いたことなかったのに・・・。 でも結局、最後にはやっぱり八戒さんの勝ちのようですな。ダメダメだ・・・ ところで、題名の出所は、新居昭乃さんの「三日月の寝台」から。みなさんが知っての通り、ぼく地球の主題歌(?)です。すごく好きです、この曲特に。 ![]() |