風のささやき G


【森の中】


「母ちゃん、どうしてパパはこんな青い顔してるの?」

「お黙り! 黙って掘るのよ」


【国民性の違い】


豪華客船が沈んで、大勢の客が救命ボートに乗り込んだ。

大勢乗りすぎて、今度は救命ボートが沈みそうだ。

船長が指揮をとって、元気のよい若い男性から、救命着をつけて、

海に飛び込んで岸まで泳いでくれるように頼みことになった。

そのとき、いろいろな国の人がいるので、どのように言えば

飛び込んでもらえるかという話。

イギリス人には、

「あなたは紳士ですね」

と言えば飛び込む。

ドイツ人には、

「船長の命令である」

と言えば、それに従う。

アメリカ人には、

「生命保険をたくさんかけたよ」

と言うのがよい。

イタリア人は、

「飛び込むな」

と言うと飛び込む。命令されるのが嫌いなイタリア人には、これがピッタリだという。

最後に日本人には、船長が目立たぬようにそっと耳元でささやく。

「みなさん、飛び込んでいますよ」


【女、この強きもの】


軍隊で、あるとき、いっせいに兵隊が、女房がこわいと言い出した。

どいつもこいつも口をそろえて、こわい、こわいと言う。

女房がこわいようでは戦争なんかできないぞと、隊長は説教するが、兵隊は口々に、

「戦争なんかヘッチャラです。いますぐでも行きます。だけど女房は戦争よりこわいです」

と言いたてる。

そこで兵隊の勇気を試してみようと思って隊長は命令を出す。

「女房のこわい兵隊は右へ出ろ。こわくないのは左へ出ろ」

するとたちまち百人の内九十九人の兵隊が右へ出た。左へ出たのはたった一人きりだった。

隊長は感動して、その男のところへ駆けつけ、おまえだけが人民英雄だと

叫んで、肩をたたいた。するとその男は恐縮し、低い低い声で恥ずかしそうに、

「いえ、ナニ、女房にはいつも、みんなのあとについていってはいけないと、

言われてているものですから」

と答えた。