當麻町は、奈良県の西北部に位置し、金剛生駒連峰の連なる
大津皇子ゆかりの二上山(にじょうざん)東側のふもとにある町。
万葉の時代は 『ふたかみやま』と呼ばれたので
この道の駅も「ふたかみパーク當麻」と銘々されている。
この地域は、奈良時代から白鳳文化発祥の地として開けた。
その当時の文化遺産であり、中将姫で知られる當麻寺は牡丹の名所としても有名だ。
日本最古の石仏が発見された石光寺や
また、當麻は日本の国技「相撲」の発祥地としても知られる。
当麻蹴速(たいまのけはや)と出雲の野見宿禰(のみのすくね)がその昔、
垂仁天皇の御前で、力比べをしたのが大相撲の始まりと言われる。
今もゆかりの「蹴速の塚」や「相撲館 けはや座」がある。
このあたりを貫く古道、竹内街道は
日本最初の官道として飛鳥から難波を結んだ。
作家、故司馬遼太郎氏も幼年時代この近辺で過ごした。
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道路状況にもよるが、大阪市内から約1時間ほどでここに着く。
(西名阪自動車道柏原ICから国道165号を大和高田方面へ10分)
奈良県南部に出るには、程よい休憩場所になる。
ちょうど、この4月の季節は、吉野山の花見客などで
駐車場は平日でも観光バスで一杯になる。
この道の駅には、「ふたかみパーク」と言う公園に隣接している。
小さな山がひとつ丸ごと公園になっているような感じで
長い階段(約456段)を上がると山の頂上にいける。
そこから間近に見る二上山は実に秀麗である。
頂上にある展望台からは、大和三山(畝傍、耳成、香久山)や
大和平野南部をゆったり見下ろすことができる。
この公園の中には、カラクリ人形が出てくる時計台、芝生大広場、
錦鯉が泳ぐ池に水車小屋、ハーブ園、近辺の昆虫や動物などを紹介している
展示室もあり、小さい子供が居る家族連れなら絶好の遊び場になる。
公園の門のそばに、ヤギや羊など小動物を飼っているユニークなカフェまである。
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さて、なぜこの「道の駅ふたかみパーク當麻」が
食文化と関係するのか述べて行きたい。
この駅(以下駅と言う)の愛称は「郷土食 当麻の家」、
キャッチフレーズは「丸ごと安心 旬の味」。
その名のとおり、有機低農薬で育てた野菜や、花をたくさん並べている。
また、この駅の特徴として、「食品加工場」が併設されている。
味噌やお餅、ゴマ、パンなど手作りのものがたくさん売られている。
売り場面積は狭いが約400品目がびっしりと並び、しかも安い。
私の自宅から近いこともあり、この駅の売店の大ファンで、
2週間と置かず買出しにいく。
なんと言ってもおすすめはお漬物である。
まずは、キュウリの古漬け2本で100円と言う安さ。
最初は塩辛いが、慣れると病みつきになり、このキュウリの古漬けが残っている
2〜3日間の食卓の時間が幸せである。
他には、白菜、蕪、大根の根、瓜の酒粕漬け(奈良漬)、大根の根
梅干、たくわん、と化学調味料など一切使わない季節の漬物が多く並ぶ。
少量づつ販売されており、値段も150円〜300円程度の手頃な価格である。
次に、味噌。麦味噌、金山寺味噌、おかず味噌と種類も豊富で
ワンパック150グラム150円程度の少量販売。
もちろん、味噌、砂糖、みりんだけで作る添加物なしのモノである。
そして手作りの(おさしみに適している)胡麻入りコンニャクや舎コンニャク。
250円〜400円。残念ながら凝固剤を使っているが
市販の工場製品より数倍うまい。
他には、カボチャ、ヨモギ、ハーブなどあらゆる粉末野菜
よもぎもち、小麦もち、おかき、しそジュース、イチゴ、イチジクなど各種ジャムな
どなどとても全て紹介しきれない。
また、そんな地域の食材を使った料理が出てくる「レストラン」も併設。
郷土料理を今風にアレンジした月替わりの「けはや御膳」が目玉。
名産の大和鶏をメインに地元農家で栽培された旬の野菜を組み合わせたもの。
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大阪市内と奈良南部の観光名所の中間点にある地(交通)の利が
幸いしている事もさることながら、こういった特徴のある地域の食品の販売もあり
この道の駅は大繁盛だ。
正確にはわからないが売り上げは3億円以上、利益も1000万円以上とも聞く。
この繁盛を聞きつけ500以上の各種団体が次々視察に来ているらしい。
この駅は、平成7年オープンしたが、その2年ほど前
當麻町は、町内の各グループに駅への参加を呼びかけた。
朝市の会、JA女性会など十四グループが応募してきた。
各グループを中心に一口五万円の出資を募り、
農事組合法人「当麻町特産加工組合」を設立。
組合員の平均年齢は60歳近く3分の2が女性であるそうだ。
この組合には生産、加工、販売、食堂の四部門があり
当番で10人から15人で仕事をしているらしい。
地域に密着した人と物が、組み合わさって風情のある
特産物を提供し、食を通じて他地域の方と交流している
文字どおり素晴らしい駅である。
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さて、ここで 道の駅事業自体に触れてみたい。
1993月、旧建設省と自治体の協力で、全国100カ所が近くが登録された。
国や県が駐車場やトイレを整備し、各自治体が管理すると言う方式だ。
現在、全国に700以上ある。
「道の駅」の定義とは、休憩機能、情報発信機能、地域の連携機能
の3つの機能を持ったものだと喧伝されている。
つまり、駐車場、トイレの施設や、道路や地域情報を提供していく所と
言うことだ。もちろん、人的交流が活性すれば、農産物の販売が雇用につながり
地域振興にも発展する。
当然のことながら、各地の道の駅事業全てが順調というわけではない。
苦しい経営を強いられている所も多々ある。
逆に言えば、「ふたかみパーク當麻」のような成功例は珍しいかも知れない。
悪口を言うわけではないが、高速道路上にあるサービス・エリアの売店を
思い出して欲しい。
確かに、道の駅などと比較すると近代的な設備だし規模も大きい。
場所により、地元特産物を多く販売しているが
そのほとんどが、いわゆる企業論理で運営されている。
例えば、菓子箱。〜饅頭だとか、〜クッキーとかパッケージこそ
その土地の名前を印刷しているが、同一業者が作っている例が少なくない。
つまり、町のスーパーや百貨店に並べられた全国流通商品
と考え方は同じである。
道の駅にしたって、このような観光客向け食品商品を提供する業者が
高速道路上にあるサービス・エリアと同じ商品を提供している。
むしろ、駅によっては、業者商品がメイン展開させている
所が多いのではないだろうか。
「名物にうまいものなし」と悪評もあるが、やはり旅人にとって
その土地でしか味わえないものを食し、土産に買って帰るのが
最上の喜びではないであろうか。
特に、地元の天然素材を利用した、昔ながらの手作りの食品こそ
欲しいと思うのでは、ないだろうか。
〜饅頭、〜クッキーといった御当地名を冠しただけの商品には、
厳しい消費者は段々遠ざかっていくかもしれない。
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外見ではなく、地域の文化と特産物などを組み合わせた食文化の提供こそが
道の駅にしても、その他の観光施設にしても生き残る術であるような気が
私にはする。
地酒の如く、地域ごとにその特産物を各「ブランド」を作り上げるべきで
マネのできない特徴を持ったモノ創りへの挑戦が必要だ。
いやむしろ、人的交流が多く見込まれる道の駅こそが、
21世紀の各地域の食文化を伝承する大きな舞台になると
私には思えてならないのだ。
◆祭 作太郎 2003.4.8
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