2002年FIFA日韓共催ワールドカップ 記念エッセイ

今週の話題 『泣きながらプレーしていた男』からの贈り物

平成14年6月29日


ワールドカップも今日と明日で終焉を迎える。
様々な思いを人それぞれに焼きつかせて。

トルシエ・ジャパンのベスト16入りもさることながら
私は韓国の大躍進を同じアジア人として隣国の友として心から祝いたい。

ワールドカップ中で最も心に残った言葉がある。
アン・ジョンファン選手が、イタリア戦の終了後語った
『泣きながらプレーしていた』と言う言葉である。

ベスト8最後の椅子を巡って熾烈な戦い挑んだ韓国とイタリア。
アン・ジョンファンは前半大チャンスであったPKゴールを外した。
その後、イタリアが先制し、スタジアムは一瞬静まりかえった。

後半、韓国はフォワード陣をつぎ込むんで賭けに出るが
イタリアの固い守りは崩れそうで落ちない。

もう誰もが終わりと思った終了間際88分、
韓国ソル・ギヒョン選手が同点ゴールを押し込んだ。
90分終了の笛、熱戦はついに延長戦に突入した。

延長後半残り3分、PK戦を誰もが予測した直後
イ・ヨンピョがゴール前に絶妙のクロスを入れると、
この日外し続けたアン・ジョンファンがついにヘッドでゴールデンゴールを決めた。
真っ赤に染まったテジョン・スタジアムは興奮の渦だった。

倒れこむアン・ジョンファン。
歓喜と安堵の両者が爆発した瞬間であろう。

グループ競技をしていた者なら誰でも一度は経験したことのある、あの恐怖感。
『己の犯したミスやエラーでこのまま試合が負けてしまったらどうしよう』

もちろん、アン・ジョンファンの置かれた立場、
プレッシャーのレベルは普通とは全く違うであろう。
背負った国民の期待の大きさや栄誉の光に潜む影。
一握りの限られた人しか味うことのできない天国の地獄の境目の綱渡り。
だからこそ最初PKゴールを外した後
あの『泣きながらプレーしていた』という凄い言葉が出るのである。

私は果たして『泣きながら仕事を』したことがあるのであろうか。
『泣きながら仕事を』するぐらいの気概が
これから本当に必要なのだとあらためて思う。
私が受け取った貴重な贈り物である。

◆祭 作太郎


今週の話題 「ワールドカップとスズキさん」

平成14年6月22日


2002年6月18日(火)は忘れることが出来ない日になりそうだ。
日本代表は残念ながらベスト8に進出できなかった
が大健闘であることは疑いもない。
だが、ヤケ酒を飲んだサッカーファンも多くいたことだろう。
道頓堀川では何百人もが飛び込んだとか。

さて、その後の韓国対イタリアの試合。
私はその日真っ直ぐ帰宅しテレビ観戦した。
あえて何かを解説する術は持ち合わせていないが
この試合は本当に膝が震えた。
終了間際の韓国の同点劇から延長戦の逆転勝利。
一人テレビを見ていた私もテジュン(大田)スタジアムの熱気が伝染した。
もちろん私も必死で韓国を応援していた。

この日本にとってワールドカップ開催の一番の収穫は
海を挟んだ隣国:大韓民国との庶民レベルの心の交流ではないかと思っている。
隣同士、アジア同士、共催国同士と様々な距離の近さが
かつての不幸な歴史を覆しつつある。

理屈は抜きにして、韓国チームを日本人が応援する
日本チームを韓国人が応援する。
しかも日本人と韓国人が同席の場で。
こんな単純なことが日本でも韓国でも報道され嬉しい限りである。
単純であるからこそ難しいのである。

ただ、よくよくお互いの顔を眺め合うと、民族の違いがつかないぐらい似ている
蒙古班同士の兄弟だと気がついたのかもしれない。
それぞれ背負ってきた歴史や文化は違うと言えども
未来をかなり近い部分で共有できる、私はそう願いたい。


それにしても運が悪いと言うか『ムネオ』さん。
国民が少々静まった日本が負けた翌日
(ワールドカップの試合も2日間小休止中)に逮捕。

まるで、日本が負けたのは彼が悪いと言わんばかりのバッド・タイミング
で全国民が負の注目。
『もっと悪いヤツ他におるやろ!』
『ごもっとも!』そんな声させ聞こえそう。

さてこんな状況でもアメリカ大陸で黙々とバットを振り
しかもトップ成績を誇っている我が国の英雄『スズキ』さんもいるのです。


◆祭 作太郎

 

今週の話題 「ワールドカップと浪花節」

平成14年6月15日




グループリーグ一位の好成績で日本ワールドカップ決勝トーナメント進出。

大阪・長居スタジアム発の熱狂的青色ウェーブは道頓堀川に波及、
日本中にこだました。
2002年6月14日(金)歓喜に沸いた一日だった。

初めてアジアにやってきたワールドカップ、
各国の熱い戦が日夜繰り広げられている。
早くも32チーム中の半分が去っていくことに一番の寂しさを覚る。

もちろんサッカーのゲーム自体も素晴らしいのだが
私はワールドカップにまつわる全ての事象に
大きな関心と興奮を胸に焼き付けている。

前回フランス大会で初めてワールドカップなるスポーツ大会を初めて目にしたのは
私だけではないだろう。
その時は時差の関係もあり、テレビ観戦も少なかった。

今回も開催するまでは日本戦以外は余り興味なかったが
実際始まると、とんでもない。ワンダフルの連続だ。

国中の期待と重圧を背負った各選手の活躍はもとより
私は各国のそれぞれの事情が面白くてしょうがない。

ワールドカップでの戦いを、特別国家事業レベルまで
持ち上げている国がいかに多いことか。
またその国民の関心度の度合いが高い国ほど、歓喜と落胆の落差が激しく
様々な物語を見せてくれる。

冬の仇を足で返し、市庁を埋め尽くした赤い群集。
町中暴徒化した北都の悲劇。
国際電話で各選手に激を飛ばす某国の大統領。
経済危機の落胆をサッカーにかけ無残にも散った優勝候補国。
全く国民の関心がない中黙々と勝っている世界一の大国。
伝統(優勝経験)とプライドを涙で濡らしたいくつかの強豪国。

とても紙面を埋め尽くせないエッセンスの宝庫である。
また、各国についたネーミングも最高だ。

無敵艦隊・・・・・・スペイン
レッドデビル・・・ベルギー
カルタゴの鷲・・・チュニジア
などなど。

また、ワードカップを日韓で共催することによって得た多大な恩恵は計り知れない。
中津江村のカメルーンとの交流をはじめ各地域でのそれぞれのドラマ。
日本国(日本人)を世界の人がサッカーを通じて
紹介(報道)してくれていることだろう。
外国人に対して親切であるとか。日本の観戦客はマナーが良いとか。
おとなしい国民だと思っていたが実に熱い部分があるとか。
もちろん、お隣韓国との良い意味での連帯意識も特筆すべきである。

さて、ワールドカップの後半戦はこれから。
日本の試合をまだ見れるという幸運を感謝したい。

だが、この幸運は決して偶然でなない。
トルシエ監督のコメント・・・・・『森島は大阪の選手だから使った』。
この浪花節こそが日本人の共感を呼び、
新しい歴史を刻む原動力だと私は思っている。

◆祭 作太郎

 

今週の話題 「ワールドカップと村おこし」

平成14年6月8日


ワールドカップ、いざ開幕するとテレビに釘付けになってしまいます。
開幕して直ぐに日本戦があり、プロ野球も3日間オフだったのが大きな理由かも。
その間にわかサッカーファンになってしまいました。
やはり堂々たる逸品の各一流選手のプレーには魅せられてしまいます。

ところが元々サッカーや大会自体の予備知識がなく戸惑う事も多いのも事実。
例えば日本・韓国と合わせて多くの会場がある。
私は各会場で毎日多くの試合をするものとばかりと思ってました。
が実際は一日3試合ずつぐらいしかしないのですね。

先週の日本×ベルギー戦では午後6時からでした。
私は就業時間は午後6時までで職場から自宅まで約1時間かかる。
何とか後半戦を見ようとダッシュ。
すると地下鉄も私鉄も私と同じ御仁が多く、
ホームの階段や改札口では何となく駆け足状態で思わず笑ってしまいました。
でもこのウキウキ感は心地よいもの。

また、細かい部分は無視するとサッカールールは
ゴールにボールを入れれば一点。
子供でも老人でもわかりやすい所がよい。


さて、私のワールドカップの楽しみ方です。
各国を代表する選手達が抱えるプレッシャーに一番魅力を感じています。
・・・・・お国を背負って・・・・・このフレーズです。

経済破綻の深刻さを吹き飛ばせアルゼンチン
前回王者の誇りをかけてフランス
このままでは国には帰れないサウジアラビア

などなど各国のサッカーに対する情熱度とお家事情とがうまく調和。
時に悲壮感をあおり、時に笑みを醸し出し
何とも言えない複雑な面白さがあります。

その線では、なんと言ってもカメルーン。
ワールドカップに余り興味がなかった層の日本国民を
見事注目させたのはカメルーンの功績だと私は思います。

もちろんカメルーンはサッカー自体の実力もあるのでしょうが
最初悪いイメージを抱かせたあのキャンプ地遅刻問題から、
地元民との心温まる交流で一転して人気者に。

ユーモラスな風貌や服装、独特のパフォーマンス。
まだまだ遠いと感じるアフリカの大地の息ずかいを感じさせてくれます。

この遅刻問題にしても選手達のベースアップ交渉のもつれが原因とのこと。

選手一人あたり約300万円。
カメルーンの国民平均年収は約5万円。
ワールドカップに出場する選手に一人につき何十名の親戚縁者がよってたかる。
こんなカメルーンのお家事情の報道が詳しく報道されている。
それだけカメルーンに一般(熱烈なサーカーファン以外)の関心が高い証拠である。

私もカメルーンの記事が好きで、読む内に何だか思わず微笑んでしまう。
そう、日本人のワールドカップを面白くさせているのはカメルーンである。

もちろん全国津々浦々、今やその町の名前を知らない人を探すのが難しい
『大分県中津江村』。
これまた微笑ましい名パートナーがいたからだとあえて言わせて頂きます。

◆編集長

 

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