猿は友達? 

猿は友達?

祭 作太郎時事エッセイ

2001年6月

 

 

 

 

池田小事件は、日本中に様々な混乱や波紋を投げ掛け
多くの人々を暗く落ち込ませています。
 ここ数年に発生したその他の残忍な事件や若年者犯罪、幼児虐待
などの事象と合わせて日本人はおかしくなったとか、
安全神話(治安が良い国)は土地と同じように幻想に過ぎなかった。
 などと多岐に渡る議論が行き交う中、根本的な解決の糸口さえつかめないまま
日々過ぎ行く歯がゆさは耐え切れないものがあります。

 

 

さて、本題は猿(サル)の話です。
朝日新聞(6月15日:朝刊)の一面に掲載された
和歌山のお猿さんの記事から。

和歌山市と海南市が重なる山間部に元々生息していた「ニホンザル」
と「タイワンザル」が混血した猿が約200匹生息しているらしい。
和歌山県自然環境保全審議会とか申す方々は
なんとこれら「混血猿」を「安楽死」させる方針を知事に答申するとの事。

そもそも何故「混血猿」が出現したのか?
(朝日新聞によると)
近くにあった自然動物園(現在は閉館)に「タイワンザル」が飼育されていた。
が、55年頃に逃げて野生化した猿が、
地元の猿と愛を育み、子を産み今に到るらしい。

和歌山県は当初からこれら「混血猿」を「安楽死」させる方針を取っていたらしいが
県民から反対意見も多い為、今年4月に県民アンケートを取った。
回答者の64%の人が「安楽死」を支持したとの事で、
6月14日に前出の〜審議会鳥獣部で意見一致したとの事である。

が、チョット待って〜よく記事を読むと・・・・・・

アンケート対象者は1,000名(その内回答者は648人)
しかも質問は2者選択方針で、

1.去勢・不妊手術をして動物園で飼育・・・・・この場合20年で税金約11億円投入
2.麻酔薬で安楽死・・・・・・648人の有効回答者の約64%にあたる414人が賛成。

どこに民主主義の〜・・・とウンヌンを言うつもりはないけれど
・・・・チョット酷い誘導方式だと感じた。
そもそも、どうして「混血猿」が殺されないといけないのか?

その記事にコメントを寄せていた日本霊長類学会の会長さんの言葉は・・・・

この問題は、一匹一匹のサルがかわいそうとかで判断するのではなく
進化の中で各地で築かれた生物の多様性の意義を理解し
維持していくと言う観点で考えなければならない。
子供に聞かれたら、生物界全体でどう残すかとゆう観点で考えた結果だと
大人は説明してあげてほしい。


最初、会長さんの「生物の多様性の意義」を読んでいて
・・・つまり混血猿の存在を認める・・・と言う意味だと勘違いしました。

でも、語感がオカシイので何度も読み返すと・・・・・安楽死させよとの意味に取れます。

私は正直、生物の多様性の意義も霊長類学会の事も知識がありません。
本質部分を理解する力を持ち合わせていないのかも知れません。
ただ、子供にはうまく説明する事なんぞ・・・とうてい出来ないのは確かです。
教えて頂きたいのは、どうゆう観点でなら猿を殺して良いのかです。

この「混血猿」が何か病気を持っているとか、
とても悪い性質だとか言うのならまだしも・・・・・・
純正な「ニホンザル」の種を残すと言う観点・・・・なら
混血猿は何を思って死んでいけば良いのでしょうか!
「ニホンザル」はこの和歌山地区にしか生存していないのでしょうか。

ご周知のとおり人間は猿の進化系で、一番近い友達。
人間が生きる為に(知能指数の高い)動物を食べる事は
否定できるはずもありません。
ただ、独善的な人間の論理で生命をアヤメル事などできないと私は思います。

日本におこりつつある薄気味悪い数々の冷酷無残な事件・・・・・
私には、混血猿・安楽死案と無縁ではないような気がします。

 

 

〜皆様からお寄せ頂いたご意見〜

 

 

◆コピーライター虎

種族的に近いか遠いかは、猿の知ったことではないと思いますし、
人類と猿は友達だなんて思えません。猿はおそらく人間を
一番の天敵と思っているでしょう。
動物の命を守るのも奪うのも、所詮人間の独善です。
地球上に人間の言葉をしゃべり、人間と議論する生物が他にいない限り、
人間は独善から離れられないと思います。
人間の理性も、良心も、すべて人間の価値観から成っています。
人は、人の世を治め、人の良心と価値観で自然と接してゆくしか
ないと思います。動物がどう思うかなんて考えても仕方がありません。
人は神の代理人ではありません。たまたま現在地上で勢力を
誇っている一哺乳類の種族にすぎないのです。

私は、猿を安楽死することに賛成しているわけではありません。
ただ、人間が自然に対して「してよいこと」「わるいこと」などはない、
人間が良心からだろうと欲望からだろうと、自然に働きかけること
すべてを「人間が勝手にやっていること」だと謙虚に認めよう、と
言っているのです。

また、動物の知能云々の価値観を殺していい、いけないという
話に持ち込むのも賛成できません。例の鯨の話も関係して
きますし、人間の優勢保護の問題にも絡んできます。
「人間社会内の話か、そうでないか」で分けるべきでは
ないでしょうか。

 

 

◆金澤 浩司

1つ言わせていただきたい事は、(本題とは少しかけ離れてしまいますが)
このやりたいようにするわがままな人間が作り出した
文明、分化、発明、習慣、慣習を中心とする根源が
人間自身の首を締めていることは紛れもない事実ではないでしょうか?
戦争、地球温暖化、薬害、差別、喘息、アトピーに至るまで等
更には、ある意味人類を絶滅さす危険性も考えられるのは
私だけではないように感じます。

 

 

◆小中 敬三

わたしは、こう考えるようにしました。
それは、自分にとって直接関係があるのか、ないのか?
関係がある場合、損か得かで、分かりやすい。

ところが、関係ない場合、何を基準にするのかが問題。
自分に将来影響するか、どうかを、基準にすると。
影響する場合、悪く作用するのか、よく作用するのかで分かりやすい。

ところが、影響もしない場合、どう考えていいのかが問題。
サルの話は、まさにこれ。

そこで、もし人間だったらと、問題を置き換えてみました。

じぶんは、誰にとっても、必要ではない。だから、自殺。
あいつは、誰にとっても、必要ではない。だから、殺す。

喜ぶ人がいても、悲しむひとはいない。だから、よい。
悲しむひとがいる。その時は、ダメ。
だから、全員悲しまないのが、前提条件。

 

 

ま と め

 

◆加地 光広

(6/19)の朝日新聞の朝刊にて
混血ザル安楽死問題の続編記事が掲載されました。

安楽死のキーワードから、少し距離を置き
移入手種(外来種)問題・・・・・専門家による・・・・・シンポジウム開催
と焦点が変わってきております。

移入手種(外来種)問題とは、『生物の多様性に関する条約』で
生態系・生息地もしくは種を脅かす外来種の導入を防止する・・・・うんぬん。

このシンポでは、例の2者択一1000人アンケートの批判も出たそうだ。
ただ、和歌山県では最初、無人島移住案を出したのだが
地元や専門家らの反対があって頓挫し、このアンケートに到ったようだ。

元々地元のある方は、この問題を20年前から指摘し訴えてきたが
取り上げてもらえなかったとの事。

また、200名のサルを捕獲するにも大変な作業(大事業らしい・・)。
前段階として餌付けするのに半年、捕獲するには数年は必要との事。

この和歌山混血ザルの事は、実は氷山の一角で
全国あらゆるところで移入手種関連として問題が起こっているそうだ。
(まあ、ブラックバス放流問題なんかが顕著な例だろうね。)

 

●ワタクシの主張としましては
(ご専門家の先生からは見向きもされないだろうけど)

1.生物なんて(人間を含めて)自然のなりゆきに任せれば良い。
  つまり、タイワンザルとニホンザルが交雑しようとほっといたらと思う。
  いくら繁殖力が強くたって、鉄道や、高速道路が張り巡らされた日本。
  中々遠くまで行かへんで。。。。

2.どうしても隔離が必要ならいくら時間やお金が必要でも捕獲して
  公園や小学校あらゆる所で飼育したら良いと思う。
  例えば、私の近所(奈良県中部)には草木が多い
  中規模な自然公園が山ほどあるし、そこに猿が住んだってご愛嬌。
  (さらに古墳もいっぱい・・・・・おっと〜これはダメですね!)
  猿が少々悪戯したって不良少年よりずっと安全だ。
  学校に猿が居たってかまわない。
  動物と触れ合う(世話するのは大変だけど・・・)
  子供には良い勉強になる。絶対。

日本にはまだまだ猿を捕獲したり、
飼育するぐらいの余力や人材は山ほどある。
また、良い雇用拡大になるかもね。
大量に残される食事・・・・本当にもったいない。

こらオバハン、食べられへんのやったらそんなに取るな!
(とある食べ放題店の店長のつぶやき・・・)

今日、電車で小学生が4,5人電車に乗ってましたが。
全員、片手にゲーム機を持っていました。
なんか薄気味悪いなあと思います。
( 子供だけではなく、(大人も)若い人が電車に集まると
 みんなそれぞれ一心にメールを打っている光景がよく見受けられますが・・)

私は、短絡的に安楽死を語りたいわけでは決してなく。
大人(専門家)達が理論を振りかざして
結果、事務的に処理するのではなく。
(これを見ると子供はもっともっと冷めてしまう。)

私が然るべき立場なら、このような件をまず子供達に相談します。

子供達に猿をどうする?と聞く事から始めます。
『臭いし大変だけど、学校で世話(飼育)できるか?
それとも、安楽死させようか?』
恐らく『うん、がんばって面倒みるわ!』と言ってくれる子もきっとあるはず。
なければ、日本に未来はない。(いや、明るい〜と付け加えるべきか)

幼児虐待・・・大人になりきれない大人
子供らしくない冷めた子供

これらの本来の熱い血を呼び覚ますのは、
自然を愛しいと思う心からではないでしょうか。

 

 

 

◆祭 作太郎  <皆様のご意見をお聞かせください。>

ご意見は、matsurisakutaro@yahoo.co.jp まで

又はメーリング・リスト『3本の矢 』 で討論しましょう!
http://mail.cocode.ne.jp/cgi-bin/mj.rcgi?mid=0300000246

 

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