☆清流茶屋☆ かたち

私は歴史が好きなので暇があると文献を読み漁っている。
が地図がないと頭がこんがらがる。特に世界史は難解だ。
高校時代の教科書の付属資料である世界史地図を
今もボロボロになるまで使っている。

国という概念は一定ではなくその時代時代で伸びちじみする。
あるいは消滅する国も出てくる。
特に中国やヨーロッパは忙しい。
中国大陸は、現在ほぼ一つの国家にまとまっているが
歴史上では、分割されたり、統一されたりを繰り返している。
ヨーロッパも諸国が統合されたり、分割されたり変化する。
旧ソビエト連邦は、ロシアと多くの国家に分かれたし
チェコスロバキアは、チェコとスロバキアに分れ
東西ドイツは統合された。

さて、今の日本の企業も同じことが言える。
決して一定ではない。
各(事業)部門が別々の会社になったり統合したり。
子会社を作ったり、吸収したり。系列(グループ)が変わったり。
別の会社同士が合併したり。
特に最近では、財閥系の銀行同士がくっつき話題を呼んだ。

国にせよ、企業にせよ何百年単位で見ると一過性のもの。
しかし、その時空の住人は、大いなる愛憎の中で
泣いたり笑ったりしつつ生きているのである。

「ゆく河の流れは絶えずして、しかももとの水にあらず。
よどみに浮かぶうたかたは、
かつ消えかつ結びて、久しくとゞまりたるためしなし。」

鴨長明「方丈記」の一節である。
たいていの人が高校の古文の時間に習ったことであろうと思う。

これほど、世の時の流れをうまく表現している文はないのではないか。
「かつ消えかつ結びて」・・・
まるで今述べている国や企業の「かたち」を表現しているようだ。
物事や常に一定ではなく変化している。

鴨長明は、平安時代末期の人(1155年生れ)。
京都下鴨神社の南側、河合神社の神職の子として生れる。
今も鴨長明ゆかりのの方丈が復元展示されている。
方丈とは、4畳半ほどの広さやその程度の広さの部屋をさす。
或いは、寺の住職の居室や住職の俗称でもある。
また、中国では、神仙が住む山とも言われる。

ちょうど平安の世を謳歌していた平家が滅亡し
都では大火事、大地震、その後にくる飢餓の惨状が続いた。
世の無常を覚え、職を辞し洛北・大原の里に隠遁した。

そう言った時代の背景を考えるとこの名文が作り出された
必然を感じずにいられない。
今も昔も「かたち」は不変ではない。

さて今、日本は秋晴れ。外出に絶好の季節である。
時に好きな古文を片手に現代の事象を照らし合わせ
空想にふけながら散歩するのはいかがであろう。

知的好奇心とは何も吸収するばかりではない。
自らの考え方を創っていく面白さは例えようがない。
特に関西在住の方は、歴史の宝の山があちこちに転がっている。

平成14年10月5日 ◆祭 作太郎

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