★牛丼戦争から思う事


★牛丼戦争から思う事

 

吉野家に続き、なか卯(本社:大阪市)も牛丼一杯280円に値下げを発表した。
松屋、すき屋と牛丼を全国チェーンを展開する大手が出揃った。
元々はマクドナルドが平日半額セールから端を発した競争であるが、
業界はワンコイン(500円玉)どころか
300円でオツリがもらえる価格帯を標準設定した。
他業態の飲食チェーンも追従する事が充分予測される。

こうなってくると通常食べているソバ屋や一膳飯屋などの
昼定食780円とか850円が高く思えてくるから不思議だ。
梅田繁華街の高級喫茶店では、コーヒー一杯500円近くて、入り辛い。
缶コーヒー120円さえもなんだか馬鹿らしくなる。
なぜなら、週末ディスカウント・ショップに行くと50円(半額以下)で売っているからだ。
それは、特売商品ではなく、通年商品扱いとして。
しかも、神戸に本社を置く業界では一流メーカーの缶コーヒーがですぞ!

デフレ現象と言うのは、実質面より心理的に多くの影響を与える気がする。
つまり、今買おうとしている者がコスト・パフォーマンスに優れているのかどうか。
値段に対する価値が本当にあるのかどうかを真剣に考えてしまう。
もちろん飲食だけではなく様々な分野に、益々浸透していく事は確かだ。
特に、娯楽部門など目に見えないサービスの対価など
余計神経を尖らせる事になる。

私は、次に本格価格競争するのは・・・・・と考える。
それは ’時給戦争’(・・・時給を下げると言う意味・・・)だと思う。

例えば外食産業やコンビニが急成長した要因の一つに
「学生アルバイト」の労働力は否定できない。
学生などが特殊な技能や体力が必要なく気軽にお金を稼ぐには
ファースト・フードなどのアルバイトが最適であった。
雇用側双方共、必要な期間、時間帯をうまく活用できる。

ただ、全社牛丼280円時代には、アルバイトの時給を下げずにはいられない。
もちろん、一社だけではアルバイトが去って行く。
ただ、どこもかしこも ’時給下げ’ を発表していったらどうなるだろう。
  (●これを私は’逆時給戦争’と命名す?)

今後、賃金低下を誰も食い止めることなどできない。
値下げを断行し、利益を維持する為には
仕入れコスト・家賃など徹底的に改革し、売上を増やすしかない。
出来なければ、人員減で効率を上げるか、時給(賃金)を下げる他ない。

家電最大手「松下電器産業」の話。
地域限定社員制度を対象となる65%(2万強)の社員が受け入れたと新聞載った。
メリットもあるが、ある意味では、’賃下げを飲んだ’ と言う事でもある。
(詳しくは、新聞をお読みください。)

「ユニクロ化現象」などと報じられ、労働市場(低賃金)における中国の脅威論が盛んだ。
前述の「松下電器産業」の場合もそれらの対抗策の部分もあるかもしれない。
ところで、読者の皆様は中国の方の平均賃金を存知だろうか?

約1年前、日本の化粧品メーカー北京工場を見学する機会があった。
その際、北京で一番美味しいと評判の広東料理の店で、
駐在員の方に食事を御馳走になった。
その店は、北京で1,2を争う一流ホテルの中にある。
味も去ることながら、店の内装も調度品も最高である。
サービスしてくれるのは上質な絹で作られた
原色のチャイナ・ドレスで身を纏った若い女性達。

駐在員の方の話によると、
そんな豪華絢爛なお店のスタッフである彼女達の月給は、
せいぜい8,000円程度(日本円に換算して)との事。
多分我々がそこで食べた一人分の食事代にも満たない。

中国国営工場と比べて、外資系企業の工場などに務めると
給料が約2〜3倍程度あるらしい。
(それでも、3万円も給料があれば良い方である。)

日本と中国の所得差(もちろん物価指数など差し引きしないといけないが)
は歴然としている。
この差が、命を賭け密航船に乗ったり、偽造パスポートを使い
不法入国してまでも経済大国で働きたいと言う人間を作り出す。
日本円100万円は、中国では10倍も20倍も価値が膨れ上がる。

さて、一方オーストラリアでは日本人の平均所得と比較すると
半分ぐらいらしい。
が、それでも、大きな家やヨットを持てるらしい。
日本より少ない人口でしかも国土は約30倍・・・・・。
当然と言えば、当然かもしれないが
生活感の豊かさのモノサシは非常に難しい。

戦後、焦土の中から国土を復興させ、
山を削り、海を埋め立て世界の工場としてきた我が国日本。

牛丼が280円となった今、
これから、私達は何に豊かさを求めて行くのだろうか。
内縁の妻の子とは言え、食事を与えず虐待し、虫けらのように殺してしまう
そんな人に住む国にだけはしたくないですね。


 

2001年7月20日 ◆加地 光広

 


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