コミックマスター:第話〜三井寿15歳の災難〜



松葉杖をつきながらゆっくりと街を歩く少年の表情は虚ろだった。
まるで視界に何も入っていないように、ただ前に向かって進むことを命じられたおもちゃのようにその動作は緩慢だった。
彼の名前は三井寿と言った。僅か半年前まで自分はこんな夕暮れの繁華街の一市民ではなく、バスケットコートのスターとして輝いていたはずだ。
それが・・・
少年はそこで初めて表情らしきものをその整った顔面に浮かべた。しかしそれは歪んだ自嘲の笑みだったが。

―――思い上がった小僧に対するこれは罰か?だが俺はそこまで神様に恨まれるようなことはしてねぇはずだ。完璧に走れる足を与えたくせに、その手でそれを奪いやがった・・・
―――っ!神様のバカヤロウ!
   赤木のゴリラのバカヤロウ!
   木暮のメガネのバカヤロウ!
   ついでに青田もバカヤロウ!しょっちゅう俺の目ェつけてた佐伯にちょっかいかけやがってむかつくんだよてめぇ!
   そして安西先生の・・・っやろう!!
   (↑バカヤロウと言おうとして言えなかった)

ナイフみたいに尖っては触るもの皆傷つけるような三井の凶器は、自分にかかわるもの全てに向けられていた。知らず強く地面を突き刺していた松葉杖がコンクリートを抉っていて、バーコードヘアーの会社帰りだろうサラリーマンをビビらせていた。
―――まだ腕の筋肉は衰えていねぇ・・・でも腕だけじゃバスケは出来ねぇ・・・車椅子バスケ・・・は難しそうだし怪我しそうだから嫌だ・・・
三井寿は我儘だった。
そしてこのように自らの思考に没頭していたため、前から来る数人の男に全く気づかなかった。
三井の痩せた肩に最初軽い衝撃が伝わる。三井がさらりとした髪ごと振り向いたそこには、4,5人のガラの悪そうな青年がにやにや笑いながら彼を観察していた。三井は表情をゆがめる。
「何だてめぇら?」
「そりゃこっちの台詞さ坊ちゃん。さっきこいつの肩にぶつけたろ?こいつ可哀相に骨イカレちまったみてぇだぜぇ?」
一人の青年の台詞に、スキンヘッドに耳たぶのごついピアスが目立つ男が、へらへら笑いながらイテェ〜と大仰にうめいて左肩を押さえてみせた。その仕草に三井の美貌が引きつる。

「・・・俺さっき右肩ぶつけられたんだけど?正面から歩いてきて左肩ぶつけられるワケないよな?イカレてんのはてめぇの頭ってことが証明できるだけだけどそれで満足か?」

今度は三井に絡んできた男たちの表情が引きつり、それに負けじと三井もガンを付け返す。その視線の強さは4,5人とも均衡していたが、内心では三井は泣きそうだった。
―――うおお〜。エライことになってんだけど!?マジで俺が何したってんだよ!?今日は昼間っからインハイ予選緒戦の応援行っても誰も気づいてくれないし、ショックで駆け込んだ先の電車では痴漢に遭うしよぉ〜!
今日の自分をドクターコパ辺りに占ってもらったら、きっと地球が太陽系軌道上から外れたような凄い表情をされるに違いない。
三井がそんな被害妄想を巡らせている間にも、男たちは徐々に距離を詰めて来ていた。いつのまにかかなりマニアックな裏路地に入り込んでいたらしく、助けを求めようにも周りには犬一匹いない。

「生意気なガキにはちょっとオトナの怖さをレクチャーしてやらなきゃならんようだな・・・」
「教育費として取り合えず財布とかもらっちゃおっかな〜♪」

頭の悪い台詞に三井は全身を煮沸させつつも、成すすべも無く後退するしかなかった。数メートル先はもう塗りの剥がれたビルの壁であるわけだけども。
はっきり言って喧嘩の腕には全く自信が無かった。去年クラスで一番握力の強い女子とクラスメート全員に乗せられて腕相撲をしたところ、3秒で負けたという記録の持ち主だ自分は。それ以来「プリンセス寿」という一見おめでたいが本人にとってはこれ以上ないほど屈辱的なあだ名をつけられ、哀愁の2学期を過ごした記憶はまだ新しい。
―――ああ!この怒りが漫画のようになんちゃらビームとかに変換できたら!!
そうしたら自分はこの世を地獄の業火で灼き尽くす自信がある。そしてそんな危険人物に神が力を与えてくれるはずもなかったが・・・
同情か憐憫か、救世主は遣わしてくれたようだ。

「歯ぁ食いしばれ!!」

男たちが三井に飛び掛ろうとする寸前―――銀光が空気を裂いた。

地面を揺らす、重低音の振動と共に。



「カッターナイフ・・・?」
三井は思わず呟いた。さっき自分とチンピラたちの合間を縫って飛んできた物体は確かにそのような形状をしていたと思ったので。
しかし壁に突き刺さっているそれを凝視してみると、それは似て異なるモノに思えた。わかりやすく例えるなら・・・安西先生とカーネル・サンダースのような微妙な違いだ。

このときの三井には、そのペンシルの先にカッターの刃を取り付けたような道具が「トーンカッター」という代物であることなど知る由も無かった。そしてそれは飛び道具ではないということにも・・・

「誰だ!?」

定番の文句を吐く男たちと三井は、同時に武器の飛んできた方向に視線を投げた。
まず目に付いたのは鉄の馬と見まごう様な巨大なハーレイダビットソンだ。空気を震わせる重低音のシンフォニーは、鈍い黒と燻した銀色で構成された胴体のフォルムを一層夕闇に際立たせているかのようだった。
そしてそれにまたがる人物―――伸ばしっぱなしの癖のついた黒髪に無精ひげ、ハーレイの持ち主にふさわしい筋肉美を誇示する肉体―――
何より老けた顔面の一対の両眼が彼を「只者ではない」雰囲気に仕立て上げていた。
彼の隣りに位置する400ccバイクにまたがった男もまた、細長い胴体にのせた顔に油断ならなさそうな眼光を携えている。
三井は彼のハンドルから離した手つきから、さっきのカッターを投げたのはこいつだということに気づいた。

「竜、喧嘩してる場合じゃねぇ。時間が勿体ねぇだろ・・・」

ハーレイの男が低い声で隣りの男を促したが、竜と呼ばれたカッターナイフの男は二ィと何かを企むように彼に向かって口角を吊り上げてみせた。
「時間がねぇからあの坊主をひきこむんだよ・・・“アレ”くらいならシロートにも出来んだろ・・・?」
「・・・」

竜の言葉にハーレイの男は黙って髪の毛をかきあげると、早くやれとでも言うようにくっと無精ひげの浮いた顎をしゃくってみせた。彼のその仕草に竜は物騒に目を光らせると、バイクを壁に凭せ掛け、三井の眼前に壁となるように立ちはだかる。
「そういうこったから、てめぇあの男のそばに行っとけ。条件付で助けてやんよ」
「条件・・・?」
先ほどの言葉と得体の知れない男たちの雰囲気から、何か不穏なものを感じずにはいられない三井だったが、選択の余地など無く男に言われた通りに行動する。

「あっ!逃げんなてめぇ!」
「さっきからごちゃごちゃと・・・なんなんだてめぇら!」

チンピラたちの激昂に余裕の表情で竜は向き直り、そしてざっと足を広げると戦闘体制に構えた。

「来いよ。最近めっきり引きこもりだわ、3食インスタントラーメンだわ気が立ってんだ・・・俺のストレスの刷毛口になってもらうぜ」

「・・・よぉ」
「あ、う。こ、こんにちは」
一方、ハーレイの男のそばに寄ったものの、その威圧感溢れる雰囲気に何と話しかければいいのか躊躇していた三井は、突然降って来た低い声に間抜けな挨拶で返してしまった。
―――あああ、どうしよう!殺られる!売られる!いや、沈められ・・・
コンクリ詰めになって江ノ島の沖辺りに浮かぶ自分を想像して、三井は青ざめかけたのだが・・・無愛想だが確かな挨拶が返ってきて三井はきょとんと表情を呆けさせた。

「俺は鉄男。てめぇは?」
「あ、三井。三井寿・・・です」
「三井か。早く乗れ」

名を交換したそのままの表情で、鉄男は三井を自分のハーレイの後ろに乗るように促す。彼の後ろに無遠慮にまたがるのも怖かったが、逆らうのも怖かったので三井は素直に鉄男に従った。
「行くぜ。つかまっとけ。荷物は潰さんようにな」
よく見ると鉄男の無骨なハーレイには、長いハンドルに通された不似合いにファンシーな買い物袋が風にはためいていた。
ダッフルコートに短パンを着込むようなその折り合いの悪さに三井は怪訝な表情を隠せない。そして背後から響く殴り合うような音に気づく。
「あ、あの!竜・・・さん置いてっていいんすか!?」
「あの馬鹿はほっとけ。そのうち帰ってくる・・・」
―――どこへ?と三井が聞く前に、鉄男はエンジン音を空にとどろかせ愛車を拓けた路地に発車させた。突然かかった風力に三井はぎゅっと目を瞑る。少し敏感になった聴覚に、竜の歓喜の声が響いた気がした。

「フハハハハハ!!思い知ったか俺の電消し(※電動消しゴムの略)の威力を!!摩擦熱の勝利だ!!」
「勘弁してください!!いたたたたた熱い!!熱いって!!」

・・・竜の台詞の意味は所々わからなかったが、なんとなく竜は喧嘩に勝ったんだろうなぁと三井は思った。


日が完全にビルの谷間に没するころ、三井たちは鉄男のアジトであろう廃墟に近いアパートに辿り着いた。ハーレイをアパート前の舗装もされていない駐車場に止めるとちゃっとごついキーを抜き取り、アパートの外階段に向かう鉄男に続き三井は一歩を踏み出した。
―――これが“ワル”ってやつか・・・今の俺にはぴったりかもな。こうなりゃ堕ちるとこまで堕ちてやろーじゃないか!!
結構すぐ投げ出しがちな男三井寿は、任侠の世界で成り上がる決心を固めた(早すぎ)
廊下に陳列した部屋の一室の扉を開けてその中に消える鉄男に続いて、闇とタバコのにおいでむせ返るであろう部屋に内心のドキドキを押し殺し進入する。

「花咲先生!!」
「待ってましたよ花咲先生!!」

「・・・・・・」
三井は様々な靴の散らばった狭い玄関で、その中の惨状を目にししばし呆然とした。その部屋は確かにタバコの臭いがした。しかしそれ以外にも例えようの無い微妙な芳香が、異種格闘戦のように混ざりこみせめぎあっているように感じられる。部屋の中央には星一徹が喜んで返しそうなちゃぶ台が置かれ、そこに2人。そして部屋の四方に所狭しと並べられた3台の蛍光灯付きデスクに3人。何かに追い詰められたような表情で、この室内で一番多い物質と三井の目には映った「紙」に必死に何かを書きなぐっていた。インクの臭いが三井の鼻先を掠めた―――

―――鼻先?花咲?花咲先生ってさっき呼ばれていなかったか?鉄男。

三井は慌てて鉄男を振り向くと、鉄男は金髪の男と黒髪リーゼントの男に縋りつかれていた。
「花咲先生の留守中に担当の奴がまた来たんすよ!今日で4度目ですよ4度目!?何とか徳男たちがガンつけて脅しまくって帰ったんですけど、今度来るときは警察連れてくるって恨みがましそうな目で見られました!!」
「花咲先生!トーンの50番と34番が足りないです!後ここの効果の指定がですね、いまいちわかりにくいというか・・・」

間違いない。花咲先生=鉄男だ。鉄男の苗字は花咲なのか?花咲鉄男?そのハーモニーの天ぷらと梅干のような食い合わせの悪さに、三井は唸り、元来の気の強さをようやく発揮して部屋の中にずかずかと上がりこむ。ここにいる人物全員何かに集中している様で、まだ誰も三井には気づいていないらしい。

「ちっ、福田(=担当)の野郎実力行使に出やがったか・・・俺がノーヘルなの知っててサツにたれ込むという暴挙に出やがったな・・・」
「鉄男さん!取り合えず50番と34番もらいますね!でも何も鉄男さん自らが画材ショップに行かなくても・・・」
「おう、待たせたな・・・だがちょっと欲しいコピックの新色が出てたもんだからよ・・・」
「ああそれで!これでようやく巻頭カラー原稿に着手できますね!!」
「ところでさっき言ってたわかりにくい指定ってのは?」
「あ、それは徳男が・・・」

どこまでも自分はないがしろな気がしてきた三井は、ここにも俺の居場所はねぇのか・・・と少しへこむ。それにハードボイルド任侠の世界は、自分が思っていたのとは少し違う世界らしい。どう違うのかはまだ理解できていなかったが・・・

「うっす。遅れた」

そこに先刻三井を救助(?)した竜が帰ってきた。彼もまた、重そうな袋を2つ下げている。竜は鉄男ではなく真っ先に三井を見咎め、少し不機嫌そうに眉を跳ね上げた。
「んだよ坊主。まだ仕事してなかったのか?とっととちゃぶ台行って消しゴムかけしろよ。後べた塗りと」
「け、消しゴム?べた?」
三井は竜の突飛な言葉の意味がわからず、目を白黒させる。
乾ききった喉で、問うた。

「あ、あのさ。鉄男が花咲センセーだったり、担当が4回もだったり、消しゴムかけだったり意味わかんねーんだけど・・・」
「あぁ?鉄男ぉ!まだこんガキに説明してなかったんかよ!?」
「竜!」
「竜チーフ!?」

竜にガキ扱いされたことにむっとしつつも三井は、紙や何かのシートでごつい手を溢れさせた鉄男を注視する。鉄男は気まずそうに片手で後ろ頭をぼりぼり掻くと、ひしゃげた唇で、言った。

「俺の職業漫画家ってわけよ。花咲まりあが俺のペンネームってこった」
「ま、漫画家・・・?」

しかも花咲まりあ。方向性が全く理解できない。
三井が混乱している最中に、初めて聞くインターホンの音が背後から鳴った。

「福田か!?」
「やべぇもう来やがった!?」
「さっき30分前に来たばかりだろうが!ありえねぇ!」
「でもあのちょっとぶれたような音は福田っぽいっすよ!?」
一同を戦慄が走り抜け、紙に筆記することに没頭していた連中もばっと顔を上げる。その中の一人に見覚えがあり、三井は指を指して声を上げた。
「ああーっ!お前俺と同じクラスの堀田徳男じゃねぇか!!」
「あっ!そういう君は三井君!!?」
劇的(?)な再会もなんのその。2度目に鳴り響いた電子音には声が付いて来た。

「花咲せんせぇーっ!!マジ開けてください!!早く原稿ください!!あ、今度は強面でビビらせようったってそうはいきませんよ!近所の交番の駐在さんに付いてきてもらいましたからねぇ〜!!」
「くっ!やはり福田だ!!顔と一緒で粘りづえぇ!!」
竜が顔を苦渋に染め、鉄男となにやらアイコンタクトを交わす。最後にお互い頷いてから、同時に声を張り上げた。

『野郎ども!!一時撤収だ!!』

「え?」
三井は火事場の消防隊のごとく慌しく動き出した鉄男たちにあっけに取られ、一歩も動くことが出来ない。
鉄男はちゃぶ台を強靭な足で蹴って隅に退かすと、その下の畳を畳返しの要領でバンッと跳ね上げた。
「のわっ!?」
三井はさっきから驚いてばっかりだ。その畳を跳ね上げた後には空洞が階下まで続いている様で、これで鉄男は逃げるのだな・・・と三井は理解した。やっとここに来て初めて理解できた事柄だった。

「あれ?」

そしていつのまにか部屋に取り残されているのが自分だけだということに気づく。慌ててその床穴に入って脱出しようと試みたところに、ドアを激しく開閉する音が三井の鼓膜を震わせた。

「花咲先生ーっ!!ってああー!!また逃げられた!!」
「じゃあ、私はこれで・・・」
長身の背広の男が頭を抱え込んで膝をつく背後で、先ほど彼が言っていた“駐在さん”が冷静に帰っていく。きっと、よくあることなのだろう。

「あ、あの・・・」
微動だにしない背広の青年に心配になって声をかける三井は、近づいた瞬間その細い腕を、食虫植物のようにすばやく触手を伸ばした男に絡め取られ、涙目で悲鳴をあげる。
「ひいいいいーっ!!んだよ!離せよ!!」
「離しません!!貴方アシスタントの一人でしょっ!?人質にして花咲先生に原稿を描いてもらいます!明日の午前中には印刷所に持っていかないと私の首が飛ぶんですよー!!」
くどい顔の彼は、ますますその顔をくどくしてほろほろと涙を零した。
「お、落ち着けよ!俺はそのアシスタント?じゃねーし!!」
「ええーっ!?じゃあファンの子ですか?サインはお断りですよっ!?」
「別にいらねーよ!なんなんだよ鉄男って奴は!?」
「貴方ホントに知らないんですかっ!?」

どこまでも邪険な三井に、背広の男―――たぶんこいつが鉄男たちの恐れていた『担当』とか言うやつなんだろう―――は、きっと三井を睨むとくどくどと説明し始めた。この男、顔だけではなく説明までくどいとは・・・きっとバスケ選手だったらがむしゃらに何度もゴールを狙うねちっこいプレイをするのだろう。出来ればかかわりたくない・・・
三井はもちろん担当の話など聞いちゃいなかったのだが・・・

「っということで!花咲まりあ先生は小学館漫画賞も受賞されたご経験のある偉大な先生なのです!ちょっと締め切りに気まぐれなのが珠に傷ではございますが、花咲先生はこの日本少女漫画界の財産とも
いえる―――」
「おい、待て」

三井は熱く語る担当にジャストモーメントをかけた。
漫画、そうだ、漫画には色々な種類がある。

三井は担当の眼前にしゃがみ込んで彼の襟元を掴み上げた。
「・・・今少女漫画って言ったか?」
「言いましたが・・・」
「マガジンの間違いだろ?それかヤングキングかアッパーズ系」
「なんですか?それ?」

担当は持っていたクリアケースの中を探ると、名刺を三井に向かって差し出した。

「衆栄社月間少女漫画誌リ・ボーン編集の福田一兆と申します。日本で一番売れている少女漫画誌リ・ボーンの看板作家なんですよ。花咲まりあ先生は」

頭の中があらゆるものに拒否反応を起こしかけている三井に、追い討ちをかけるように担当―――福田一兆は分厚い冊子を差し出した。

「その表紙の【アンドルー恋の降水確率120%☆】が花咲先生の御作品です」
「・・・・・・」

ちょっと一世代前のような眉毛バチバチの目玉ぱっちりの巻き毛の少女と、金髪が明後日の方向に跳ね上がった前衛的なヘアスタイルの青年が、華奢な手を合わせ読者に向かって微笑みあっている。
【アンドルーとエミリーの笑顔の相合傘で嫌な梅雨もさよなら、ね☆
アンドルーの決意とは!?胸キュン巻頭カラー36P!!】
・・・というアオリが、三井にとどめをさした。

「これを鉄男が・・・?」
「そーです。花咲先生は思春期の少女の心理描写においては人後に落ちないと業界でも定評が・・・」

三井は握り締めたままだった、福田のワイシャツの胸元に再びぐっと力を込めた。
「あ、あの?アシスタントさん?苦しいんですけどちょっと・・・」
「・・・夢を」
「は?」
「夢を見させるようなこと言うんじゃねー!!しかも悪夢!!」

三井は腹の底から絶叫するとそのまま柔道の要領で福田を投げ飛ばし、すでに夜の支配する街へとダッシュをかけた。足の痛みなど忘れていた。(後にこれが悪化の原因となることなど知る由も無い)

三井は今だけバスケのことも何もかも忘れ、月にも届くような咆哮をあげた。

「みんな大バカヤロウだーっ!!!!」





ちょっとだけ続きます・・・