これだけで、木造軸組仕様の全てが理解できるとは思わないが、せめてここに書かれている内容程度は理解していなければ、設計や施工時に行政指導をうけ、さらには施主の信頼も得られないであろうと思われる。
改正建築基準法が2000年6月に施行され、同7月に「品確法」の性能表示関連が発表され10月には性能表示制度がスタートして2年近く経過しているが、木造住宅に関係する多数の設計者や施工者.木材関係者達の間では「悪法だ」とか「大手メーカーに有利な法だ」等の不満や愚痴が聞こえるが、何故こうなったのかを理解しないで嫌々従っていると、思わぬ所でその「つけ」がくるのである。
今回の基準法施行令の改正では、木造住宅の「仕様」は大幅に改正され、細部まで変更になったのである。
以下に大きな3つの項目を挙げることとする。
上記の3つの点は、改正以前の基準法には非常に曖昧な説明しかされてなく、設計や施工レベルにおいても適当であったといわざるを得ない。(今までに無かったのだから仕方がない)
今回の内容は「3 継手・仕口」の特定であり、これは金融公庫の仕様書と整合がはかられているのである。
公庫仕様書は、いくつかの継手・仕口を示しそれらから選択できたが、その性能は明示されてなく、高倍率の耐力壁廻りに使用すると危険な破壊をする接合部も含まれていたのである。
このことから、現実に施行されているディテールのうちで、特に問題のある仕様をなくして、耐力壁の倍率に応じた接合部倍率という品確法の概念の根本となったものである。
施行令の内容や、告示等の解説を文章より推測すると(財)日本住宅・木材技術センター認定の「Zマーク表示金物」そのものを示しているのである。
言い換えると、「Zマーク表示金物」同等認定を受ければ、伝統的接合方法や新しく開発された接合金物も使える可能性があるといえる。
しかし、職人や伝統木造建築を志す設計者・施工者等は、これだけ法律で定められたとしても未だに「金物なんてなくても十分伝統木造は安全である」とか、批判めいた言動をする人が少なからずいるが、本当の安全という思想を持っているならば、基準法施行令40条以降に書かれている内容で、「建設大臣の定める基準に従った構造計算によって構造耐力上安全であることが確かめられた場合においてはこの限りでない」という条文を理解し、行政や施主を納得させる手段を用いて世の中にアピールすることである。
今のところその唯一の方法として「限界耐力計算」による方法以外はなく、普通の住宅レベルでそれらを用いて設計することは皆無といって良いし、「限界耐力計算」の木造住宅に適応できるマニュアルでさえ完備されていないのが現状である。
最後に、これだけは理解してほしい。
建築とは、全て一人の人間が完全に理解して設計・施行をする時代ではなく、医学と同様にそれぞれの専門分野に細分化されたといってよい。
昔はそれで良かったかもしれないが、現代のように医学が進歩したといえども、毎月のように医療ミスによる医療事故がマスコミ等により報道され、患者が医師を訴える時代であるのに、いまだに木造住宅は一人の設計者や施工者により、コントロールされている部分がある。
また、大企業(大手組織事務所・大手ゼネコン等)と中小企業(アトリエ・工務店等)は、設計・施工技術において相当な技術格差があるといってよい。
それをカバーしようと中小企業等は、ソフトメーカーのソフトに頼らざるを得なくなり、単純なミス(入力ミス等)にも気付かずに、出力された答えを正解と思いこみ、設計や施工が完成し、後々で問題が発生し、国や行政より「中小企業等は技術的に劣る面が多いので、今以上に厳しい法律で縛らないとやはり駄目だな。」というようになる可能性がある。
このことを念頭に置いた上で設計者・施工者は、構造安全性能に自信が持てないようならば専門技術者に依頼するなどして、社会的に信頼されるような木造住宅をつくることを心がけてほしい。
二十二世紀に、木造住宅を残すためにも . . . . .