20世紀の建築技術の内で木造住宅における構造を総括すると次のような流れが見える。
日本古来より延々と続いていた伝統軸組工法の壁要素として、構成されていた貫+小舞による土壁に代わり、明治時代に取り入れられた西洋技術であるトラスの原理を利用した筋交いの出現(筋交いを入れよう!)
関東大震災等の地震被害後に制定された建築基準法における壁量規定の導入(筋交いの量をこれだけ以上は入れよう!)
昭和56年に改正された建築基準法の通称「新耐震設計法」(大地震時には粘って倒壊を防ごう!)
今世紀最後の大改正である「仕様規定から性能規定化への改正」(施主が希望する安全性能にしよう!)
以上が大きな意味でいう4つの変革であったと思われる。
この流れを詳細に説明すると、明治になってから西洋の科学技術が導入され、明治から大正時代に起きた巨大地震での多くの被害に対し、外国人技術者による合理的な筋交いの提案がなされ、これが住宅を構成する技術で仕様として取り入れられ、現在まで続いているものである。
しかし、4つの流れの中で最後の第四の流れがほかと比べて根本的に違う内容の変革といって良い。
それは前者の3つの流れが仕様規定の改正であり、今回行われた性能規定とは根本的に違うのである。
そこで、性能規定を理解することは、これまでの建築技術者(建築士)が受けてきた教育や、現在この本を読んでいる人すべてが今まで実務で経験し、習得した技術がほとんど仕様規定の内容だったと言って良い。
つまり、今までは仕様に従って住宅を作れば、建築後、巨大地震が発生し大被害を受けたとしても、設計者や施工者には責任はなく、施主は泣き寝入りをするしかなったのである。
しかし、性能規定の時代では、施主が「どの程度の地震に対してこれこれの性能がほしい」というようになり、仕様規定では表すことの出来なかった要求性能に対し、目安としての数値が施主に分かりやすく説明する必要が出てくるのである。