The Green Mile

スティーブン・キング原作、トム・ハンクス主演のモダン・ホラーです。
幼児虐殺の罪で死刑となった黒人(マイケル・ダンカン)、実は不思議な力を持つ男で、彼とトム・ハンクスら看守たちとの交流を描いた話です。スティーブン・キングということで、怖さを見せるホラーではなく、神秘的な現象を題材にして上手に料理したドラマになっており、一般向けの映画でしょう。テーマとなっているのは、道徳観や正義感とは何だろうと問い掛けている点で、神秘現象などの表面の飾りをはぎとると、中味は非常にクラシカルなスタイルの映画だと思います。
時代を 1930 年代の中西部(?)アメリカに設定してあり、監獄のようす、死刑の模様などはそれらしく再現してあります。電気椅子で処刑するとき、被害者を初めとする関係者が処刑の模様を見つめるというのは、今も一部の州では続いているのでしょうか(何年か前に議論になったと記憶しています)。マイケル・ダンカンと交流を深めていく看守たちが、それぞれいい味を出しています。看守に限らず、脇役まで優れた演技だったと思います。
12月はアカデミー賞狙いの大作が多い時期で、この映画も例にもれず上映時間は3時間と大変長いです。話自体は面白いのでさほど苦痛にはなりませんが、なかなかストーリーが展開しませんし、もう少し切ってほしかったと思います。
途中に、1935年の名作「トップ・ハット」が挿入され、名曲「チーク・トゥー・チーク」が流れます。映画内映画での、アステアとロジャースはいかにも幸せそうで、的を得た引用でしょう(ウディ・アレンの「カイロの紫のバラ」にも同じシーンが引用されているそうです)。
トム・ハンクス、3度目のオスカーかと前評判が高かった割に、今一つです。確かに、尿結石に苦しむ、実直な看守長の役を的確にこなしていますが、映画全体の中で精密なパーツの一つという感じで、今一つ華に欠けたようにおもいます。助演のマイケル・ダンカンの方が、不思議な力を持つ死刑囚をうまく見せたと思います。「感動的」「大作」ではありますが、私には何か食いたりない感じがしました。
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