夜の九時には、深夜バスが出るターミナルまで帰らなければならない。

その前に、二人で最後の夕食をとる時間も欲しい。

だから、空の色にどことなく蜜柑色が混ざる頃、俺達は、ハウステンボスを後にした。

(この日、月曜日だったので、全日●ホテルの売店でWJを買いました)
(この時のWJの感想は、日記で叫んでいます)

昨日、ここへ来た道を逆に辿って、特急は走る。

別れの時間が近づくにつれ、時間が過ぎていくスピードが速くなっていくような気がする。


昨夜も遅かった。
その前の夜も。

こういう、心地よい疲れを、「遊び疲れ」と言うのだろう。
本当は、一分、一秒でも惜しいと思っているのに、つい、規則的に揺れる電車の
振動が心地よくて、俺達は、つい、眠ってしまった。

初夏の陽気で、気温は少し高かった。
だから、特急の中は冷房が効いている。俺は、眠る直前、あいつの細い肩が
寒そうに見えて、そっと上着をかけてから目を瞑った。



(ホントは、wjを読んで・・・ひそひそはしゃいでました)

特急の終着駅に着いた。

本当なら、ここにバスのターミナルがあるのだが、一旦、
最後の夕食に相応しい食事をする為に、少し移動する。

この町は、とても交通の便がいい。
そういう便利なところ、人が適当に多くて、にぎやかで、活気がある。

それでいて、さほど雑然としていないし、道にゴミが転がっている事もなく清潔だ。
海の風を感じられる。人の賑やかさの中に、海の風を感じられる。

だから、俺はこの町がとても好きだ。

「・・・で、晩飯は何を食うんだ」

別れの時間が近づいている事を忘れなければ。
その瞬間まで、楽しく過ごさなければ。

そう思うのに、なんとなく会話がたどたどしくなる。

一緒にいる時間が長くなればなるほど、離れるのが寂しくなってくる。
もっと、一緒にいたい、顔が見たいとき、声が聞きたいとき、

顔が見れる距離に、声が聞ける距離にいたい。

願っても、叶えられない願いばかりが胸を過ぎる。

「蕎麦。美味エんだ。十割ソバだぜ」と、あいつはにっこり笑った。

バスを降りて、暫く歩き、地下からビルの中に入った。
その一角に、その「美味いソバ屋」があった。

壁には、妙な招き猫がズラリと並んでいる。
ソバを飲みながら、酒を飲んでいても、少しも違和感のない、「粋」な店だった。

毎月替わるソバ御膳、と言うのを注文する。

やまいも、青海苔が乗ったソバ、と他に酒肴が少し・・・。

出汁も美味かった。ソバも、酒肴も、全部、美味かった。

「だしも飲むか。」「そうだな、誰もみてねえし。美味エからのみきっちまえ」

二人で差し向かいで食べる夕食、次はいつになるだろう。
そんな事を考えながら、俺は、時折ソバを食べるのを止めて、
美味そうにソバを食っているあいつを見ていた。



食事の時間が終わった。
後は、またバスターミナルのある駅まで戻るだけだ。

時間は、刻一刻と過ぎていく。

体は離れていても、俺達はいつでも、心は繋がっている。
だから、寂しくない。

そう自分に言い聞かせながら、バスターミナルで、バスが出る時間までを
他愛ない会話を交しながら、ただ、待つ。

いつものように、人が見ていようと構わない、固く抱き合って、別れを惜しむ。




次、会えるのは夏。
その時までに少しは、成長していたいと心から思う。


(終わり)

最後までお付き合い下さってありがとうございました。

ハウステンボス旅行、本当に楽しかったです。
毎回、楽しすぎて、お別れする時が本当に寂しくなってしまいます。

夏に、またご一緒できるのを心から楽しみにしています!


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