船は、三階建てになっていて、階段を下りると、懐古調の内装が洒落た感じの客席が
設えてある。
ただの交通手段にしては、気の利いた演出だと思った。
のんびり座れるし、風は気持ちがいいし、普通に地下鉄だの電車だのを乗り継ぐよりは
ずっと楽だ。
そして、船を降り、タクシーに乗って、東京タワーへ。
やはり、一度くらいは昇っておかないと…。
「近くで見ると、やっぱ…でかい」
「昇るだけで金が要るのか…。さすが都会だな」などと言いながら、とりあえず、
昇ってみる。
ぐるりと周りを見渡せば、ホントに東京って場所はビルだらけだ。
どうせ行くなら一番てっぺんまで行かなければ来た意味がない。
「ここはまだ、一番上じゃねえんだぜ。これから先、まだ上があるんだ」
せっかくだから、行くだろ?」そう言って振り返ると、あいつは、少し迷って、
「まあ…せっかくだしな。そこから飛び降りるわけじゃねえし」と言って、
しぶしぶついてきた。
鳥が飛ぶ高さより高いところに自分が立ってる事がどうにも信じられないようだ。
続く