「そんな事、どうでもいいんだよ。サンジ、俺の言うこと聞いてくれないなら、
俺はもう、サンジの作ったものを一切食べないからね!!」
チョッパーは、涙声交じりにそう怒鳴った。
重たげだったサンジの瞼が持ち上げられ、驚いたような表情をチョッパーに向けた。
「・・・・お前、俺の作るもの食わなかったら食うもんねえぞ・・・.」
「自分で魚も釣るし、ナミの蜜柑でも、俺はナミの蜜柑の葉っぱでも食うんだ.」
チョッパーは、怒りに任せて言い募った。
「俺だって、サンジの作ったもの食いたいよ。でも、医者にとって
言うこと聞いてくれない患者は、コックにとって 料理を食べてくれない
人間と同じじゃないか!」
「それをわかってくれないなら、飢え死にしたって、サンジの作ったものは食べない.」
チョッパーは喋りながら ボロボロと涙をこぼした。
サンジは、よく見えないながら、チョッパーがしゃくりあげているのを察して、
いたたまれなくなった。
チョッパーを助けようと夢中で動いただけだったのだが、
それは、医者として 患者である 自分を助けようとするチョッパーの
誇りと意地を無にする事だったと今 はじめて気がついた。
それだけではない。
仲間であるチョッパーの戦闘能力を信じていないという事にもなるのだ。
「・・・悪かった。」
サンジは、神妙な声で心からチョッパーに謝罪する。
「もう、ここから 絶対動かねえよ。指示に従うぜ、Dr.トニー。」
素直に謝るのがやはり 照れくさくて 最後にはどうしても茶化してしまうのだが、
それでも、サンジの気持は 間違いなくチョッパーには伝わった。
「有難う、サンジ。」
2人がそんな会話をした時、また追っ手が近づいた来た。
「今度こそ、ケリをつけてやる。」そう言ってチョッパーは立ちあがった。
(・・・そうか、こいつは 医者だけど 良く考えりゃ 海賊でもあるんだよな.)
この僅かな暗闇の戦闘だけで チョッパーの胆が驚くほど 座ってきているように
サンジには見えた。
「いたぞ!!」
二人を見つけて 賞金稼ぎ達が駆け寄ってきた。
「もう、逃がさないぞ、化け物め!!」
本来なら、こんな短時間にランブルボールを3つも飲むと
体に大きな負担がかかるため、余り好ましいことではないが、
チョッパーは そんなことは百も承知で ランブルボールを口に含んで、
噛み砕いた。
賞金稼ぎ達は、おのおのの武器を構えて チョッパーの前に立ちはだかった。
「腕力強化!(アームポイント)!」
チョッパーの腕がむくむくと膨れ上がる。
「こんにゃろう、どけ!!」腕を降り回すと 肩先の傷が
激しく痛む。だが、チョッパーは、そんな事には怯まず、
その岩をも砕く 蹄で賞金稼ぎ達を殴り飛ばしていく。
ジャラララッツと いつも ゾロが碇を上げる時に立てる 鎖が
巻き取られるような音がした。
チョッパー目掛けて飛んできた先に分銅のようなものがついた鎖を
頭を下げて避ける。
それは、他の男達の攻撃に混じり、何度も チョッパーを絡めとろうとするが、
それ以上に チョッパーの動きが早く、体に触れる事さえない。
「クソッ」鎖を投げた男が歯噛みをして悔しがる。
「おい、コックはどうした。」
男達の一人が チョッパー一人なのをいぶかしんで 誰に問うという訳ではないが
サンジの存在を口にした。
そう言えば、さっきから 妙にタイミングをずらして サンジは現われ、現われた途端、
この化け物は サンジを抱える様にして逃げ出している。
サンジの事を疑問に思った賞金稼ぎの一人は、闇の中に
目を走らせ、地面に伏せているサンジを見つけた。
サンジとその男の目が合う。
咄嗟に体を起こして 応戦しようとしたが、高熱を孕む体では
戦闘慣れしている男の動きに 対応するには遅すぎた。
男はサンジの襟首を掴み、その首にナイフを突き付けつつ、チョッパーに向かって
叫んだ。
「動くな、化け物!!」
チョッパーがその声に振り返る。
「サ・・・・サンジ!!」チョッパーの声が上ずった。
途端、その巨大化した体に 例の鎖が絡みつく。
「暴れるなよ。暴れたら、コックの首から血が吹くぜ。」
(・・・熱さえ・・・・胸の痛みさえなけりゃ、こんな野郎・・・。)
サンジは、熱と胸の痛みで 体の自由が全く 利かない状態に陥っていた。
だが、諦めたわけではない。
こいつらは、必ず 自分達を生きたまま 海軍に引き渡すつもりだろう。
だから、きっと 出口へと導いてくれるはず。
地上に出た時に暴れる体力を温存しておいた方がいい、と
サンジは判断し、ここは 屈辱だが 彼らに捕縛される事にした。
チョッパーは、鎖に絡まれ、人獣型に戻っていた。
体に力が入らない。
「海楼石入りの鎖だ。能力者をとっ捕まえるのに ふつうの鉄の鎖じゃ
役にたたねえからな。」と鎖を投げていた男が チョッパーに得意げに
声をかけて来た。
「俺達をどうするつもりだ。・・!」
チョッパーは、その男に精一杯 凄んで見せた。
だが、やはり 涼しい顔をして 平然と
「決まってる。海軍に突き出して、賞金を貰うのさ。」と答えた。
「おい。」サンジにナイフを突きつけていた男が、サンジを後ろ手に
縛り上げつつ、彼の仲間に声をかけた。
「こいつ、すごい熱を出してるぞ。」
縛り上げられて時点で サンジは意識が朦朧とし始めていた。
だが、意識をしっかり持っていないと 呼吸が出来なくなるほど 胸が激しく痛む。
「へえ。」
男達は、壁に凭れて 俯いて肩で息をしているサンジのそばに近寄る。
「噂には聞いてたけど、綺麗な顔してるぜ。」とまるで
娼婦を値踏みするかのように、サンジの顎に指をかけ、
その顔を卑しい顔つきで見下ろしている。
男の匂いが狭い空間に 満ちていくのをチョッパーは感じ取った。
「やめろ、サンジに触るな、病人なんだぞ!!」
そう叫んだチョッパーは、すぐに その顔を誰かの足で蹴り飛ばされた。
「獣は黙ってろ。俺達の獲物を俺達がどうしようと勝手だろう。」と
下卑た笑いを浮かべた男がチョッパーの顔を靴でグシグシと踏みつける。
「く・・・・。サンジに何をするつもりだ!!」
チョッパーは、自分の不甲斐なさに悔し涙を流しながら 自分を踏みつけている
男を下から 睨みつけた。
「な〜に、ちょっと可愛がってやるだけさ。熱で動けないみたいだしな。」
「・・・ケダモノ!!お前ら、動物以下だ!!」
思わず叫んだ言葉に、その男は 一瞬 呆気に取られ だが、
大声で笑った。
「あははっは、化け物に言われたくねえなあ。・・・」
ひとしきり笑うと、急にガラリ、と態度を変えた。
「大人しくしねえと、殺すぞ。生きてても死んでても賞金額は変わらないんだからな。」と背筋が寒くなるような声音でチョッパーに凄んだ。
「う・・・・っ。」
朦朧としているサンジだったが、目の前のまるで 曇りガラスごしに見えている男の顔や
意味不明に荒れた 臭い息を吐きかけられている事や、何時の間にか シャツがはだけられている事で、自分が何をされようとしているのかを察した。
「ペッ」
サンジは、自分の顔に近づいてきていた男の顔に唾を飛ばす。
それだけが今のサンジに出来る抵抗だった。
「こいつっ・・・・。」
唾を吐きかけられた男の顔色が変わる。
「後悔させてやれよ、相棒!」
「最後には 泣いて縋りついてくるぜ」
「はやく、やっちまえよ。」
男達は、口々にその男を下品な言葉で囃し立てた。
「そう、急かすなよ。」とサンジに唾を吐かれた男が
卑しげな笑みを浮かべ、サンジのスラックスに手を掛けたときだった。
「そう、急かすなよ。」
それが その男の、最期の言葉になった。
サンジのスラックスに手を掛けた途端、その男の首は、無造作に
ごろりとサンジの足元に転がった。
意識のないサンジの体が 男の血飛沫で真っ赤に染まっていく。
「加・・・・魔・・・・痛・・・血!!」
そこから ほんの数メートルはなれたところで ゾロが刀を水平に
走らせた姿勢を取ったまま 賞金稼ぎ達を睨みつけていた。
2振りの刀を 高速で交差させる事で空気を切り裂き、
生じた真空の塊を 相手にぶつける。
あたかも、カマイタチと呼ばれる現象のように
その真空の固まりは 遠隔の相手の首をすっ飛ばすのに充分な威力を持っていた。
「・・・・ロロノア!!」
賞金稼ぎ達が 浮き足立つ。
ゾロは、空気が震えるほどの殺気を纏っていた。
「・・・出口を教えてくれる奴以外は・・・・。」
「死ね。」
チョッパーが瞬きをするか、しないかの間だった。
ゾロを脅すための人質が二人もいるのに、そんな姑息な手など
圧倒的な力の差の前には なんの意味も為さなかった。
サンジを労わり、ずっと 心配そうな表情で付き添っていたゾロ。
大切なものを扱うような手つきでサンジに水を飲ませていたゾロ。
そのゾロの姿と、今 目の前の殺戮者のような 気配を放ち、
目にも止まらない早さで いとも容易く 人の命を奪っている姿が
チョッパーには とても 重ならなかった。
たったひとりだけを残し、ゾロは 賞金稼ぎ達を
全て斬り捨てた。
「出口と病院を教えろ。命は助けてやる。」
ゾロは、腰を抜かしてガタガタと震えている男に低く 声をかけた。
「ゾロ!!この鎖を切ってくれ!」
しばし、呆然としていたチョッパーだったが、はっと我に返った。
とにかく サンジの容態を確認しなければならない。
すぐにゾロは、チョッパーの鎖を斬る。
2人でサンジの側に駆寄った。
「・・・サンジ・・・。サンジ、しっかり、しっかり、もう大丈夫だよ!!」
チョッパーは、耳元で叫んだ。
「あ・・・・・。ああ。・・・・。」
覚醒したのか していないのか、サンジは呻くだけで はっきりとした
答えを返してこなかった。
ゾロは、手ぬぐいを腕から外し、サンジの顔に飛び散っていた
男の汚い血を拭う。
そして、その僅かに触れる肌の温度に徐々に冷静さを取り戻して行った。
ゾロは、チョッパー達が落ちていった後、しばらくして わざとそこへ自分から
落ちていったのだ。
もともと、方向音痴なのに加え、入り組んだ迷路になっているこの
海賊を捕まえるために作られた 捕獲用の地下通路で 追いつけたのは
奇跡だと言っていい。
必死で追いかけ、追いついた時には 下卑た男達にサンジが
組み敷かれそうになっていた時だった。
戦闘なら 冷静でいられるのだが、
サンジの病状を考えると 一刻も争う事態だというのに そこへ辿りつく為に
さんざん 迷って ゾロは焦りに焦っていた。
頭にかなり 血が登っている状態で いきなり サンジのその姿を見て、
一気に これ以上ないほどの怒りを覚え 後先を余り考えずに
賞金稼ぎ達を斬り殺していた。
「とにかく、急がなきゃ。」
チョッパーは、人型に変身し、サンジを抱き上げた。
危篤状態、といっていい。
背中に背負うには 症状が重すぎると判断した。
「チョッパー、お前 怪我をしてるじゃないか。」
ゾロがチョッパーの肩先の傷に気がつく。
「そいつは俺が 連れていく」
サンジは、ぼんやりとゾロのその声を聞いていた。
(・・・冗談じゃねえ。)
ゾロに抱きかかえられて、女子供のように労わられるくらいなら
多少 辛くても背負ってくれた方がありがたい。
ゾロの腕の中でサンジは 僅かに身じろいだ。
声を上手く出せず、喉から空気が漏れるような音しか出ないのでは、
自分の意志を チョッパーにも ゾロにも 伝える事が出来ない。
重い瞼を必死で持ち上げて、ゾロの顔を下から見上げた。
もう、ゾロは前を向いて歩き始めている。そのせいで、視線が合わない。
このまま、ゾロの腕の中で意識を失うような事だけは サンジは避けたかった。
「・・・・おい。」
どうにか、声を振り絞って、ゾロに声をかけてみる。
だが、ゾロは聞こえていないのか、無反応だ。
だが、サンジの声にチョッパーは反応してくれた。
「どうした、サンジ?」と穏やかに声をかけて来た。
「・・・この体勢、辛エ・・・。背負ってくれ。」
どうにか それだけ口に出して見たが、突然襲ってきた胸の激痛に
思わず、体を 緊張させた。
体中から脂汗が吹出す。
痛みは継続的に続き、サンジの表情が苦痛に歪む。
乱れていた呼吸が急に細くなった。
そんな状態で サンジは病院に担ぎ込まれた。
海賊であろうと、賞金稼ぎだろうと、医学の前には平等で、
ここの病院は 確かに 海軍から 支援を受けてはいるが
その管轄ではない。
病院の中では、隣同士のベッドに収容されていても、
賞金稼ぎと海賊が諍うことは 厳禁されていた。
主治医の付き添いで担ぎこまれたサンジには、これ以上ないほど
適切な治療が施された。
それでも、「ケスチア」と言う病気は 治療をはじめて完治するまで
少なくとも 10日はかかる。
くれはの薬の処方箋を提示して、その薬をチョッパーは 調合させてもらったが、
サンジは、心筋炎を起こしていて、ナミがケスチアにかかった時よりも
深刻な状況だった。
あと 1時間遅ければとても 助からなかっただろう、とその病院の
医師に言われて、チョッパーは肝を冷やした。
「俺は一旦、船に戻るよ。」
絶対安静で、完治するまで10日もかかる。
今は、病状も落ちついているし、なにより ここは病院で
薬もあるし、医者もいる。
チョッパーは、自分達が無事に病院に着いたことを
はやく ルフィ達に伝えたかった。
「でも、一人じゃ危険だ。俺が戻る。」とゾロが立ち上がる。
チョッパーは ヒルルクから貰った大切な帽子を脱いだ。
「大丈夫だよ。ただのトナカイが走ってるだけじゃ、
狙われる事もないよ。」
「その姿で走れば 半日で港に着くから。」
チョッパーは、ゾロにその帽子を渡した。
サンジは、清潔なベッドの中で 穏やかに眠っている。
チョッパーとゾロは、その姿に視線を一瞬投げかけた。
「お前が帰っちまったら また どんな我侭いうか わかんねえぞ。」と
ゾロは眉を寄せた。
意識が戻った途端、「船に帰る。」と言い出すに決まっている。
ここの医者の話では、心臓の炎症を完全に鎮め、体中のケスチアの細菌を
全て死滅させないと 脳や肺にも 感染してしまうのだ。
衰弱しきっている体の中でこれ以上 内臓に炎症を起すと
手の施し様がなくなる、という診断をこの病院の医師も、チョッパーも
下している。
本人は、ここに来てから一度も目を覚ましていないので そんなことは
知る由もない。
チョッパーは、ゾロの心配も充分 承知していた。
「うん、目が覚めたら 熱も下がってるだろうし、
絶対 我侭言うだろうね。」とやはり、おだやかに 笑みを浮かべて頷いた。
「だから、これを預けていくよ。」とゾロに渡した帽子を指差した。
「これは、俺にとってとても大切なものなんだ。
サンジの枕もとに置いておけば、きっと 言うことを聞くよ。」
ゾロは、その帽子をまじまじと見つめる。
「・・・どうしてだ。」
チョッパーは、話しを続ける。
「ゾロは、サンジの様子を包み隠さず、後で俺に 教えてくれたら良いよ。
「無理に止める事はない。」
この帽子には、チョッパーが あの時言った、
「俺の言うことを聞いてくれないとサンジの作ったものは食べない」という言葉を
サンジに思い出してもらうために、ここに残していくのだ。
この帽子がチョッパーにとってどれだけ大事なものかを
サンジは悟ってくれるだろうか。
一抹の不安はあったけれど、そこは サンジを信じよう、と思った。
これ以上ないほど 我侭で手のかかる患者だけれど、
医者としてでなく、仲間としてサンジを信じる事にしたのだ。
チョッパーを見送り、ゾロはサンジのベッドの側の椅子に
チョッパーの帽子を膝に載せたまま腰掛けた。
「・・・医者ってのは、羨ましいな。」とゾロはボソリ、と呟いた。
この帽子一つで、サンジを素直な患者に出きるのだ。
二人の間に交わされた会話など ゾロには推し量る事はできないので、
その帽子に込められたチョッパーの言葉がわからない。
いつも、無茶ばかりするサンジを止めようとしても 意地ばかり張って
ゾロの言うことなどに 耳を貸した事など一度もないのに、
この可愛らしい ピンクの帽子は その劣悪な患者を優秀な患者に
変えると言うのだ。
ゾロは、サンジの顔に視線を移した。
顔色も冴えてきて、呼吸も落ちついている。
おそらく、もうすぐ 目を覚ますだろう。
(・・・早く、目を覚ませよ。)この帽子の効果が確かかどうかを早く確かめたい。
自分の心をそんな風にごまかしてみる。
本当は、早く 声が、というより 恐らく 放たれるだろう
悪たれ口を早く聞きたいのだ。
それから30分ほどしただろうか。
僅かに瞼が動き、天井を向いたままだった顔が動いた。
ゾロは、そっと サンジの顔を覗き込み、名前を読んだ。
「・・・気分はどうだ。」
サンジは、まだ ぼんやりした表情を浮かべていた。
だが、声をかけて来たのがゾロだとわかって ぷい、と顔を背けて
背中を向けた。
(ッ・・・なんだよ、感じ悪イ奴だな。)
どうせ、抱きかかえれていたのガ気に食わないのだろう、とゾロは察した。
「あのな、あれから結局 チョッパーがてめえを背負ったんだよ。
「くだらねえこと言わせるんじゃねえよ。」と呆れて 溜息交じりに声をかけた。
サンジは、それを聞いて少し、ほっとしたが 自分の腹を立てている理由を
ずばりと言い当てられた事に また 腹を立てた。
(こいつのこういうところが クソむかつく。)
サンジは、何も喋らない。
ゾロは、いつもの事ながら そんな子供じみた態度をとるサンジに
呆れつつ、深い溜息をついた。
「・・・どうなんだよ、気分は。なんか言わねえとわかんねえだろうが。」と
ゾロは尚も 話しかける。
「・・・・悪くねえ。」
背中を向けたまま サンジは答える。
「・・・腹、減ってねえか。」
その言葉を聞いた時、サンジは 自分の看病をゾロがするのか、と急に気がついた。
サンジは、ゆっくりと体を起こした。
早速、その行動をゾロが咎める。
「何やってんだ、起きていいって誰が言った.」
「誰も言ってねえけど、熱も下がったし、腹も減ったし、船に帰る。」
ようやく 口を開いたと思ったら、予想したとおりの我侭が飛び出す。
「ダメだ。」
「チョッパーは?」
「船に帰った。」
「てめえに看病されるのかよ。冗談じゃねえ。」
「そうか。じゃあ、船に帰ったらチョッパーにそう報告しなきゃな。」
「何?」
ゾロは、サンジに帽子を見せた。
「これを見せたら てめえが大人しくなるって言って おいてったんだ。」
「・・・あいつが大事にしてる帽子じゃねえか。」
サンジは、チョッパーのあの言葉を思い出した。
「サンジが言うことを聞いてくれないなら。俺はサンジの作ったものを一切食べない。」
サンジは、横になったまま その帽子を両手に持って、
顔に被った。
チョッパーの匂いが仄かに匂う。
「・・・で、お前はなんで ここに残ったんだよ。」
帽子で顔を隠したまま、サンジはゾロに尋ねた。
「俺は、監視役だ。お前が大人しく 医者の言うことを聞くか、きかねえか。」
「それを報告しなきゃならねえんだ。」
「嫌な野郎だな。」
「お前がちゃんと 大人しく言うことききゃあ 問題ねえだろ。」
サンジは、黙った。
このクソ真面目な剣士なら 本当に 自分のいっ挙手一投足を 頑固一徹な
船医に報告するだろう。
医者としてのチョッパーは 本当に辛抱強くて 頑固だ。
(・・・俺が大人しくしねえと、本当にメシを食わねえだろうな。)と
サンジは考えた。
「・・・わかったよ。」
ゾロは、サンジのその言葉を聞いて 耳を疑った。
だが。
その帽子の効果は 驚くほど絶大だった。
看護婦をくどく事もなく、
味気ない食事に文句を言うこともなく、
苦い薬を嫌がる事もなく、
起床時間に起き、就寝時刻には 眠り、
医者の指示をこれ以上ないほど よく守った。
そのかわり、ゾロには 悪口三昧だったが。
それでも、もともと 人並みはずれた体力の持ち主であるサンジは、
普通 2週間はかかると言われていた治療を 10日足らずで終え、
ようやく 船に帰れる事になった。
「ンナミさんっあなたのラブコックが無事に生還しました!!」
サンジは、船に帰りついた途端、船長を差し置いて まず、ナミにそう言って
満面の笑みを浮かべた。
病み上がりの体で、一日歩いて来たサンジに ルフィは
「サンジ、メシ〜」とは 言わなかった。
ただ、にこやかに 「元気になって、良かったなあ!!」と、本当に嬉しそうに笑った。
病状を悪化させる事なく、仲間のもとへ帰って来たのは、チョッパーの指示をサンジが
生真面目に守ったからに違いない。
ずっと側で見守っていたゾロには、それがよくわかった。
わからないのは、何故、自分が見張っていたとは言え、あの強がりの塊のような男が、
あんなに従順にチョッパーの指示を守っていたのか、だ。
その理由がわかったら、これから先、同じ様な事が起こったら、
自分もその方法を使って、サンジを大人しくさせることが出来るかもしれない。
そう思って、ゾロは一息ついているチョッパーにそっと近づいて、小さな声で
囁くように尋ねてみた。
「あの帽子には、どんな魔法がかかってるんだ?」
チョッパーは、クスリ、と喉の奥で小さく笑ってゾロを見上げる。
「それはね、」
「医者の意地って言う魔法だよ。」
そう答えて、チョッパーは悪戯っぽく、そして自信たっぷりに
微笑んだ。
(終り)
番外編 「看病日記」
「ゾロの看病日記」
私は ある島の病院の看護婦をしています。
この島には、海賊を捕まえて海軍へ引き渡して 賞金を得る事を
生業としている いわゆる「賞金稼ぎ」の巣窟です。
この病院に運びこまれてくる患者の八割が外傷です。
刺し傷、切り傷、弾丸を受けた傷・・・。
賞金稼ぎも、海賊の区別もありません。
私達にとっては、海賊であろうと、賞金稼ぎだろうと、
傷ついている人間は ただの「患者」だからです。
この病院の敷地内にいる限り、争う事は許しません。
その患者のことを私は きっと生涯忘れないと思います。
余りに 衝撃的で、驚きの連続でした。
その日、病院の受付に、異様な風体の男が二人・・・・。
一人は、青い鼻の大男で、もう一人は緑色の頭で 刀を三振り腰に差した
眼光の鋭い男でした。
緑色の髪の男の名前は、「ロロノア・ゾロ」だと この病院に
長く勤めている仲間の看護婦が教えてくれました。
ロロノア・ゾロの腕には、細身の男性がしっかりと抱かれていて、
その男性の顔色とぐったりと体を預けきっている様子は、
一目で 尋常でない状態を診てとりました。
「どうしました。」私は、二人にそう声をかけると、
アッと声を上げそうになりました。
さっきまで、青い鼻の大男だと思っていた人間が、小さな可愛らしい
ぬいぐるみのような姿に変わっているではありませんか。
そして、更に驚いた事に、「俺は、この人の主治医なんだ。」と言いました。
あまりの驚きに、私が声を失っていると、
「とにかく、診てやってくれ。」とロロノアが急かして来ました。
私は、若い看護婦にストレッサーを持ってくるように指示し、
その患者をすぐに ドクターに診てもらうように手配しました。
ところが、その小さなトナカイが火を吹かんばかりに怒り出し、
「病名はケスチア!とりあえず、フェにコールとチアシリンを用意して!」
「抗生剤は俺が作るから、製薬出来るところに案内してくれ!」と
怒鳴ったのです。
その勢いと、眼差しに そのトナカイが間違いなく 「ドクター」だと
判断した私は、彼の言うとおりにする事を この病院のドクターに
提案しました。
その患者をすぐに診察室に運びこみました。
呼吸が浅く、呼びかけても 返答は帰ってこず、顔色は酷く悪くて、
診察室で体温を測ると 驚いた事に 42度もありました。
トニー氏の話によると、この患者「サンジ」の平熱は
36度2分ほどらしく、この高熱はミスターサンジの体に大きな負担となっていると思われます。
しかも、ドクターの見解によると「心筋炎の進行が中度に移行していれば、
助からない。」という診断を下しました。
トニー氏に指示された薬を投与して、個室に収容しました。
診察室に入る事をおしとどめられた ロロノア氏が苦虫を噛み潰したような
顔で ミスターサンジが運びこまれた部屋に案内されて入って来ました。
トニー氏は、製薬室で薬を調合している最中でした。
私は、ミスターサンジの腕をアルコール綿で拭い、点滴の針を刺しました。
滑らかに見える肌なのに、しっかりと固い筋肉に覆われていて、
針を刺すのに 少し 手間取りました。
「どうなんだ。」
ロロノアは、・・・・ああ、失礼しました。
恐ろしい賞金稼ぎと聞いたので、彼だけ呼び捨てにしていました。
そう、ミスターロロノアは、ぶっきらぼうに尋ねてきたのです。
その口調は、確かにぶっきらぼうでしたが、本当に
ミスターサンジの容態を心配している様子が伺えました。
「・・・検査の結果次第ですが、・・・。」
私は正直に答えました。
この病院は、運びこまれた患者の容態を聞きに来るような
人間らしい繋がりなど持っているような まっとうな人間が
運びこまれてくる事はありません。
賞金稼ぎと言うのは 殆どが 一匹狼ですし、たまに 徒党を組むものもいますが、
瀕死の怪我をしたとしても、ただ 戦力が落ちると言うだけの感情しか
持たないようで、例え 死亡したとしても、その亡骸さえ引き取りに来ません。
海賊の患者は、ここに運び込まれるという事は、賞金稼ぎに捕まり、
仲間に見放されてしまった、と言う状況が殆どで、
付き添いはおろか、見舞いさえ訪れる事はありません。
まして、その状態を聞きに来る仲間がいる海賊の患者は本当に
珍しいのです。
私はロロノア氏に ドクターの見解をそのまま伝えました。
「その検査の結果っていつ出る?」
「2、3時間後には。」
そして、検査の結果は、心筋炎の進行度は「中度。」
ドクターが「助からない」と言った状態でした。
でも、トニー氏は その診断を覆しました。
「悪いと思うけど、サンジは安定するまで俺が診る」ときっぱりと言いきったのです。
看護婦は、私が勤める事になりました。
「今夜が山だよ。ゾロ。」
熱も下がらず、心筋炎を起こしている所為で強心剤も使えない状態でした。
「ドクトリーヌの薬なら、今夜中に心筋炎が治まるはずなんだ。」
「本当か。」
「何かあったとき、ぼんやりしたら困るから、俺は少し寝ておく。
何かあったら すぐに起こしてくれ。」
トニー氏は、床に寝そべって眠り始めました。
担当看護婦だからといって、ずっと側にいる訳ではありません。
「ロロノアさん。なにか 変わった事があれば すぐに呼んで下さいね。」と
声をかけて、その部屋から出ました。
眠っている、というよりも、意識がない、という表現の方がぴったり来る状態だった。
力なく 投げ出された腕が
忙しなく吐かれる 乱れた息が
苦しげに寄せられた眉が ゾロを不安にさせた。
あの石畳の道で 引き離される事なく 病院に真っ直ぐに辿りついていたなら、
ここまで 悪化しなかったかもしれない。
いや、それ以前に 狩り勝負などしなければ、ケスチアなんかに
感染する事もなかった。
サンジが視線をさまよう事態に付き添うのは 始めてではない。
だが、そこには いつもサンジ自身の行動を責めて、
不安になる心を誤魔化す事が出来た。
だが、今回はその気持ちが起きない。
ここに辿りつくまで、目に見えて悪化していくのに
それでも、気丈に意地を張って自分の前では痛みも、苦しさも口に出さなかった。
初めて、変われるものなら変わってやりたい、と思った。
薬の効能で強引に眠らされているはずなのに、
ゾロの視線に気がついたか、サンジは重たげに瞳を開いた。
ゾロは、無言でその瞳を覗き込んだ。
仄かな明かりだけが灯されている病室は薄暗く、
顔を寄せなければ その光を読み取る事が出来ない。
いつもどおりの青い瞳は 目じりから溢れそうになるほど
涙を湛えていた。
高熱にうかされて、目の粘膜を保護しようという機能が
働いた結果なのだが、ゾロには、体が苦しくて 泣いているように見えた。
もちろん、そんな事で泣く男ではないと判っているが、
サンジの状態は そう思っても 不思議ではないほど辛そうだった。
「・・・言うこと聞くから、食ってくれよ、チョッパー」
サンジは、そういうとまた 瞼を閉じた。
(・・・寝言か・・・・?)
ゾロは、意味のわからないサンジの言葉に首をひねった。
それから 2時間ほど ゾロはずっと サンジから目を離さず、
呼吸が徐々に落ちつき、表情が緩んできた頃、ゾロは、チョッパーを起こした。
サンジの呼吸が徐々に落ちつき、表情が緩んできた頃、ゾロは、チョッパーを起こした。
チョッパーは、すぐに熱を測り、脈を取った。
「39度8分か・・・。まだ、高いなあ。」と溜息を付く。
「でも、呼吸は随分楽そうだぞ。」
チョッパーの診断に異議を唱えるつもりはないが、
随分 サンジは楽そうに眠っている。
「42度もあったのが 2度も下がったんだから、そりゃ少しは楽になるよ。」と
しかめ面をする。
夜中の3時過ぎだったでしょうか。
私は、トニー氏に呼ばれて ミスターサンジの病室に行きました。
あいからず、ロロノア氏は 渋い顔つきのままです。
点滴が残り少なくなっていて、私はそれを交換して
ミスターサンジの熱を測りました。
「まあ。随分 下がってる。」と思わず 声を弾ませてしまいました。
38度2分でした。
ところが。
トニー氏は、「これ以上、下がるとまずいから、点滴の投与をやめろ。」というのです。
「そんな事をしたら 心筋炎が進行しますよ。」と私は 異議を唱えました。
確かに、私は、トニー氏の指示に従わねばならない立場なのですが、
その方法は賛成しかねました。
「ケスチアの細菌は 38度以上で死滅するんだ。まだ 体に細菌が
残っているのに熱を下げられない。心筋炎を起こしてるからこそ、
完全に細菌を殺さないと合併症を起こしてしまう。」というのです。
「でも、体力が持ちません。死んでしまいますよ、本当に!」
私は反論しました。
「他の人間はそうかも知れないけど、この患者は大丈夫なんだ。」と
あくまで意見を通そうとするのです。
私は、渋々その指示に従う事にしました。
翌朝。
やはり、体温は39度2分。
ロロノア氏は一睡もしていないようでした。
「お休みにならないと、あなたが倒れてしまいますよ。」と声をかければ、
「そんなやわな体じゃねえ。」と叱られました。
ミスターサンジはまだ 目を覚ましません。
私が見る限り、ロロノア氏はここへ来てから 全く寝てもいないし、
食べ物を口にもしていないようでした。
トニー氏もそれを心配しているようで、「サンジが目を覚ましたら
きっと起こすから 少しは寝なよ。いつも 睡眠時間が
人より多いんだから 無理しちゃダメだよ。」とロロノア氏に言っているのを
聞きました。
ロロノア氏は「・・・嫌な夢見ちまうから寝たくねえんだよ。」と
答えていました。
「でも、何か口にいれないと・・・。」トニー氏と私は、
ロロノア氏にそう言いましたが、「・・・こいつの作ったもの以外は食いたくねえ。」と
言って聞きいれてくれません。
どうやら、ミスターサンジは 海賊であり、コックでもあるようでした。
ロロノア氏の心を少しでも解そうと、私は色々話しかける事にしました。
寡黙なロロノア氏は 私の言葉に碌に返事もしませんでした。
でも、ミスターサンジの作る料理で一番好きなものはなんですか、という
質問には、「・・・こいつの作る食い物で不味いと思うものはねえ。みんな美味い。」と
答えてくれました。
解熱剤を含む点滴の投与を止めて、トニー氏の薬だけを投与するようになって、
2日はなんの変化もありませんでした。
ところが。
3日目から急に 容態が安定してきました。
解熱剤を投与していないのに、熱は37度8分まで下がりました。
そして、トニー氏はもう安心、という診断を下し、こまごまと私に
これからの治療法を指示して ロロノア氏にミスターサンジの
看病を委ね 先に港で待つ仲間の元へと帰って行きました。
トニー氏が病院を立ってから、2時間ほどして、
ミスターサンジがようやく目を覚ました、とロロノア氏が知らせてくれました。
ミスターサンジはどれくらい 眠っていたのか 全く判らないようで、
私が「3日も意識を失っていたんですよ。」と言うと、さすがに驚いていました。
「俺、どうやって運びこまれてきましたか」
ミスターサンジは 物腰の柔らかい人でした。
言葉遣いも、物腰も とても 海賊とは思えません。
こんな華奢でたおやかな人が 賞金稼ぎや海軍相手に戦う姿など想像も出来ません。
「どうやってって・・・。」
ロロノア氏が抱いて・・・と言いかけると ロロノア氏が私のほうへ
恐ろしい形相で顔を向けたのです。
私は竦みあがりました。
「看護婦を口説いていいのか。」と明らかに怒りを含ませた声で
ミスターサンジを叱責しました。それを好機に私はその場から
慌てて立ち去りましたが、ドアの外で二人の会話を
立ち聞きしていました。
「別に口説いてねえよ。」
「今日、朝飯 食ってねえだろ。」
そう言えば、ミスターサンジは虫が齧ったほどしか食べません。
そのかわり、点滴で栄養を摂っているから心配はないのですが。
「腹が減らねえ。残したくて残したんじゃねえ。」と
反論しています。
「・・・ふ〜ん。」ロロノア氏は椅子にドスン、と椅子に腰に
腰かけたようです。
「で、お前は看護婦は口説くわ、メシは食わねえわ、勝手に風呂の入るわ・・・。」
「・・・それは・・・。」
午前中、ミスターサンジは検査だったので、ロロノア氏は
退屈だと言って 町へ出掛けていったのです。
それで ミスターサンジは ロロノア氏の目を盗んで
若い看護婦を病室に引っ張りこみ 楽しげに話しこんでいました。
私が許可していないのに、その若い看護婦は うまく乗せられて
入浴の許可を出してしまったようなのです。
「・・・悪かった。もう、しねえ。だから チョッパーには・・。」
「ダメだ。」
その日以来、ミスターサンジはこの病院始って以来の
とても優秀な患者になりました。
ロロノア氏はただ ミスターサンジを監視するだけでなく、
退屈凌ぎなのか、話し相手になっていました。
呆れる事に、殆どが口喧嘩でした。
その都度、殴り合いになりかねない勢いでしたが、そのせいか、
ミスターサンジの生命力がどんどん増していくようでした。
歩いていいという許可が出たとき、庭を散歩している二人を
見かけました。
ロロノア氏があんなにミスターサンジを案じていたのは
二人が特別な関係だったからだと私は気がつきました。
並んで歩いているだけなのに、二人の背中を見て なんとなく
そう思ったのです。
「お世話になりました。」
「こんな美人の看護婦さんを目の前にして口説けなかった辛さが判りますか?」
「あなたの優しさ、美しさ、清らかさはきっと 生涯忘れません。」
「毎日、海の上からあなたの美しさを想って 胸を焦がす僕を
あなたも忘れないで下さい」
今まで 止められていた所為で ミスターサンジの口からは
次々と 女性を歓ばせる言葉があふれ出てきます。
ロロノア氏は、やっぱり、苦虫を噛み潰したような顔で
それを眺めていました。
ミスターサンジは、大事そうにトニー氏の帽子を胸に抱いていました。
黒いスーツにピンクの帽子を抱いている姿が可笑しくて、
私達看護婦は、口説き文句を聞くよりも その姿を見て
くすくす笑っていました。
彼らが病院を発ってから看護婦仲間でその帽子のことが話題に上りました。
「どうして、トニー氏はあの帽子を置いていったのかしら?」
「あれを見せれば なんでも言うことを聞くって言ってたわ。」
「そうなの。本当に言うことを聞いてくれたわよ。就寝時間も起床時間も、
きっちり守ってたし。」
「なにかのまじないかしら。」
結局 答えはわかりませんでした。
でも。
あの可愛らしい帽子が何かのまじないなら、病室の飾りに
いいかもしれないと誰からともなく言い出して、
この病院の全ての病室には フェルトで作った小さなピンクの帽子が
目立たない場所に置かれる様になりました。
今、彼らはどうしているのでしょう。
もしも、また あの頑固なトニー氏に会えたなら
あの帽子にどんな効能があったのかを 是非 尋ねて見たいと思っています。
終り。