「全く・・・。」

サンジは、船尾で釣り糸を手繰っていた。

「自分で作ったルアー(疑似餌)で一杯も釣れねえのは、」
「てめえの腕が下手だからだ。」

ウソップはサンジに言われてイカを釣っていた。
けれど、いつまで経っても一杯も釣れなかったので、サンジが替わって、
釣竿を握った。

腕がいいのか、潮が変わったのか、定かではないが、
とにかく、サンジが釣竿を握った途端、

「うおお、クソ大漁だぜ!」と狂気乱舞するほどたくさんのイカが
次々に揚る。

ウソップはとっくの昔に長閑な昼下がりの陽気の下、転寝してしまっていて、
そのほかの乗員も、気持ち良さそうに居眠りをしていた。

今日の晩飯はイカ尽くしだな。
余ったら、干して使えるし、こりゃ、天の恵み、
俺の日頃の行いがいい所為だ、ありがとう、海の女神様!

そんなテンションでサンジは、一人、バカスカ イカを釣っていた。

「お?」

サンジは、数えるのが面倒なくらい釣り上げて、体がイカのアタリ
(釣られる魚が糸を引っ張る感触)を覚えた頃、
明らかにイカではない感覚を釣り糸の先に感じた。

グルグルとリールを巻く。
クン、クン、と疑似餌にしがみ付いて、離すまいとするそのアタリを
バラさないように、(逃がさないように、)
サンジは用心深く、その獲物を手繰り寄せた。

「すげえ、宝石みたいだ、ナミさ・・・」

サンジの掌に乗り、ピチピチと跳ねるような動きをしながら、
潮を元気よく吹いているのは、

虹色の宝石のようにキラキラひかった、イカだった。
あまりにも見事に綺麗な色をしているので、サンジは思わず、
ナミに見せようと満面の笑顔で名前を呼ぼうとしたけれど。

「昨夜、海図を書くのに夢中になって昨夜殆ど寝てないの。」
「天候が変わりそうだったら起こしてもいいけど、それ以外の用で起こしたら、」
「誰であろうと、ぶっ殺すわよ。」

そう、言われていたのを急に思い出した。

「ロビンちゃ・・。」と今度はロビンを呼ぼうとして、また、踏みとどまった。

「私も、推理小説を夢中で読んでて少し、眠りたいの。」

(生きてる間じゃないと、この色は消えるんじゃないか。)と思うと
誰でもいいから、とにかく、見せたい。
見せたくて堪らない。

「おら、起きろ、マリモン!」と一番、側で寝こけていたゾロの
腹部に踵をのめり込ませた。

「ぐをう?!」

強烈に圧迫されて、ゾロの内臓の中にある空気が喉を通過する時、
妙な具合に声帯を震わせて、
人とはとても思えないような奇妙な音がゾロの口から飛出した。

「なにしやがる、このボケ渦巻き!」とすぐにはっきりと意識を覚醒させて、
飛び起きた。

「おお、奇妙な声だすから、本当に珍獣になっちまったか、と思って
ちょっとビビったぜ。」とサンジは全く動じずに、

「これ、すげえだろ、見ろ、見ろ。」
「その真ん丸いミドリムシみたいな目をひんむいて、よ〜〜く、見ろ。」と

ゾロの目の前に、まだ、元気よくピッチピチと動く虹色のイカを
ぶら下げるように見せびらかした。
ウネウネと動く触手のような足の先まで、キラキラと
可憐なほどに綺麗な七色の光りを放っている。

「なんだ、こりゃ。」とゾロがそのイカを指先で軽く突付くと、
なんと、真っ黒のスミではなく、

「うわ、金色のスミかよ。」とゾロの指先が金無垢になった。

「ナミが見たら歓びそうだな。殺されてもいいなら起こして来いよ。」と
ゾロはニヤニヤ笑いながらサンジにそう言った。

ただ、側にいただけで起こされたのだが、
「ナミよりも俺に見せたかったのか。」と勝手に勘違いしたのだ。

そして、
(まず、俺だけ起こして見せたって事は、俺にこれを新鮮な状態で)
つまり、一番、美味な状態で
(食わしてやりたい、とか思ったんだな。)とまた、勝手に勘違いした。

「これ、食わせろよ。」多分、そうは思っていても、
サンジが素直に、そんな可愛げのある事を言い出す筈がない。
ここはひとつ、言いやすい状況にもって行くのが すんなりと事を運びやすいだろう、とゾロは考えた。

ものを食わせろ、と言われてサンジが嫌、と言う筈がない。
例え、それがとても珍しい生き物であっても、海の生物は生きているうちに
料理するのが最も食材としての値打ちがあがる。

「ナミさんに見せたかったが・・・まあ、食わせてやるよ。」

金色のスミ・・・これで、リゾットを作っても、食欲は沸かないだろうし、
虹色のイカの姿作りというのも、これを逃せば一生食べられないかもしれない。

(そんな貴重な物なら、)
たまたま側にいたから叩き起こしたのだけれど、それでも、
こっそり 食べる相手がゾロで良かった、などと考えて、
サンジは、すぐにその場でナイフを使ってイカをさばき始めた。

「美味エといいな。」とゾロは言われてもいないのに、さっさとキッチンへ言って、
生の切り身を食べる準備を整えて戻ってきていた。

「よし、食え。」とサンジの許しが出てから、ゾロは改めて
その虹色の「イカの刺身」をしみじみ眺めた。

可憐な虹色のイカはサンジによって、
虹色のゲソと虹色の身と、金色のワタ(内臓)に分割されて、
それでも、「生きてます」と言いたげにピクピク動いている。

「すげえ活きがいいな、まだ動いてるぜ。」毒があるかもしれないから、
ワタは食わない方がいいかもな、などと暢気に話しながら、

二人とも、なかなか、食指を動かさない。

(美味エのか、)とゾロはここまで来て、躊躇した。
とんでもなく不味かったとしても、サンジがサバいたのだし、
自分が「食わせろ」と言ったのだから、何がなんでも食いきらねばならない。

(美味エのかよ、これ)とサンジもやっぱり躊躇している。
サバいて、食え、と言ったのは自分なのだから、どんなに悲惨な不味さであっても、
それをゾロに押しつけるのは料理人として許される事ではない。
サンジも何がなんでも、皿の上に肉の一片たりとも残さないくらい、
綺麗に完食しなくてはならない。

ゾロもサンジも、腹が括れず、相手の出方を見るように、
皿の上の虹色刺身から、ゆっくりと顔を上げて、お互いの表情を窺う。

明らかに、珍味を初めて食べる者特有の緊張した顔がそこにあった。

「「無理に食えとは言わねえぞ。」」

一瞬の沈黙の後、二人は全く同じ言葉を口にした。

「バカヤロ、俺が捌いたんだぜ!食えねえモンを人に勧められるか、」
「待ってろ、俺が毒見してやる。」とサンジが勢いで手を伸ばせば、

「バカはてめえだ、注文主より先に手を出すんじゃねえ。」とゾロも競うように
手を出した。

パク、と殆ど同時に口に放り込んだ。

((渋っ))
((辛ッ))
((しょっぺえッ。))
((苦ッ。))
((臭ッ。))

吐き出したいのをお互い堪えて、二人は無理矢理飲み下そうと、必死で咀嚼する。
不味いだけならいざしらず、おまけに、
「イタタ・・」ゲソの吸盤が口の中の粘膜に吸いついて離れない。

サンジは、これほど、不味い食材を料理した事は今だかつてない。
と言うより、この虹色のイカはどう味わおうと、食材には絶対に向かない
凄まじく個性的で、刺激的な味だった。

「これ、もう、食うな。人間の食いモンじゃねえよ。」と言うや、
サンジは、もう、大分褪せてきた虹色の刺身を海に投げ捨てた。

「ああ、やっぱり捌かずにナミさんに見せた方がずっとあのイカの為だったぜ。」
とサンジは がっくりと肩を落とす。


そして、夕食。

「すごい、イカばっかりだけど全然飽きないわ、どれも美味しい!」と
イカ尽くしの食卓はいつも以上に賑やかだった。

その時にサンジは、
「実は、虹色のイカを・・」と言う話をすると
ルフィは怒り出すほど羨ましがるし、ナミも「どうして、そんな珍種を
食べちゃうのよ、信じられない!」と憤るし、それでも
賑やかで楽しい食事のスパイスとして十分、虹色のイカは役にたった。

「それ、これくらいの小さなイカじゃない?」とロビンが
ゾロに尋ねた。

「ああ、小さくて、渋くて。とにかく、どうしようもない味だった。」と
無愛想に答えるとロビンは プ、と小さく吹き出した。

「それは・・・珍しいモノを食べたのね。」と意味深な笑みを浮かべた。

その夜。

「サンジくん達が昼間食べたイカ、ロビンは知ってるの?」とナミが
女部屋でロビンと二人きりになってから尋ねた。
夕食でのロビンの意味深な、悪戯を思いついたような妖艶な笑みの理由が
知りたいらしい。

「ええ、知ってるわ。」
「名前はちょっと思い出せないんだけど。」
「面白い占いが出来るイカなのよ。」と読みかけの本を閉じて、
ナミの方へ向き直った。

サンジはキッチンで朝の仕込みをしている。
ゾロは風呂に入っている。

(なんだ、痒いな)とゾロは腹のあたりがムズムズと蚊にさされたような
むず痒さを感じて、なんとなく、湯船の中の自分の腹のあたりを見た。

(は?)と浮き出ている皮膚がどうみても、
ゴーイングメリー号のコックの名前に読める形になっている。

一方、その頃。
サンジはシンクで後片付けをしていたが、どうにも、
(尻がむず痒い)と思って誰もいないのを言い事に、作業の合間に
手を休めて、痒い部分をスラックスの上から、ポンポンと軽く叩いていた。

が、だんだん、それだけでは余計に痒さが増すばかりなので、
一旦、作業の手を止め
背中から手を突っ込んで、自分の臀部の痒い方を引っかくようにして掻いた。

(なんだよ、ジンマシンか。)
こちらも、やっぱりムシ刺されの様にぼっこりと不規則に皮膚が分厚く腫れていた。
だが、サンジは自分では見えない場所だから
まさか、文字になっているとは夢にも思っていない。

(あのイカにアタッたのか。)
全身に広がるほどでもないし、明日になれば引くだろう、とサンジは
暢気に考えて、しばらくポリポリと掻いてから、また 作業を続ける為に、
丁寧に手を洗った。

「おい、」としばらくしてから、ゾロがのっそりと
キッチンに入ってきた。

湯上りで、ホカホカと体から湯気が上がっている。
なにか、冷たいモノでも出してやろう、とサンジが動き始めると
ゾロはいきなり、近づいて来て、腰を鷲掴みにしてサンジを抱きすくめた。

「俺ア、今日はジンマシンが出てるから シタくねえんだ。」とサンジは
デコボコの尻を気にしてゾロを押し返す。

「てめえも出たのか、。」とゾロは驚いたようで、サンジの言葉など
全く気にも留めない風に、ズリズリとシャツをズボンから引きずり出した。

「出てねえじゃねえか、どこにも。」とゾロはサンジの腹を眺めつつ、
触りつつ、不思議そうに首を傾げた。

「てめえもって、お前も出たのか、ジンマシン。」とサンジはゾロから
ゆっくり体を離しながら、
「やっぱり、誰にも食わせなくて良かったぜ。あのニジイロイカの所為だな。」
「お前は、腹に出たのか?蚊にさされたみたいにボコボコだろ?」
「痒くて気持ち悪イが、我慢出来ねエほどでもねえし。」と
別段、気にもしない口振りでそう言った。

「お前はどこが痒いんだ、俺は腹が痒いんだ。」とゾロは
自分とサンジの症状の違いについて、疑問をサンジに投げかけた。

(ケツが痒い、)なんて言ったら絶対に見せろ、と言うに決っている。
サンジは咄嗟にそう考えて、「お前のジンマシン、見せてみろよ。」とゾロの
腹巻きをズリ下げようと手をかけたが、

ゾロは慌ててその手を払いのけた。
「だれかれ命」とか刻みこんでるバカな恋人同志の片割れのように、
腹にサンジの名前が浮き出ているのだ。
そんな意味の判らない不気味なジンマシンを見られるのは 男心にもやっぱり
恥かしい。

「見なくていい。」

自分のジンマシンがサンジの名前なら、
(こいつのジンマシンは一体どんな形なんだ)と
自分は見られたくないのに、相手のは見たくて仕方ないのだ。
ゾロはどうすればいいか、上手い考えが思いつかずに、困ってしまった。

とりあえず。
ロビンがあのイカについて、何か知っていそうだったから、
サンジに謎を知られる前にその情報を手にいれよう、と


「まあ、たいした事じゃねんだ、」と曖昧にボカして
その場を一旦 退いた。

「あのイカ?」と女部屋まで行き、ロビンに尋ねると、
ロビンは 

「やっぱり出た?ジンマシン。」と可笑しそうにささやかな笑い声を立てた。

「なんなんだ、あのイカは。」
「で、誰の名前がどこに浮き出たのかしら?」とゾロが憮然と尋ねてくるのを軽く、
あしらうように、微笑んで逆に質問して来た。

「どこだって、誰だって、てめえには関係ねえだろ。」と
なにもかも、見透かされている事に気がつきながらも、ゾロは
顔だけを赤らめて、それでも相変らず、無愛想な態度を崩さないまま、
ロビンに尚も、食い下がった。

「一番、触って欲しい人の名前で、あなたの体の中でその人が
好きな、顔以外の場所にジンマシンが出るとか・・・。」
「本当か、嘘か、ただの噂か、迷信か、私もよくは知らないけれどね。」


それを聞いて、ゾロは「下らねえ、」と礼も言わずに
そう言い吐き捨てた。だが、頭の中では 期待と興味心がムクムクと
頭を持ち上げる。

サンジが好きなゾロの体の部分が、つまり、くっきり割れた腹筋なのか、
それも胸なのか、微妙な場所にジンマシンが出ている。

(そうだったのか)と顔の筋肉が緩むのだけれど、
それなら、

ますます、サンジのどこにジンマシンが出ているのか、知りなくなる。
万が一、そこに自分の名前が浮き出ていなかったら、

ナミさん、とかロビンちゃん、とか ビビちゃん、とか浮き出ていたら
あまりに悲しいのだが、

(いや、今更それはねえ。絶対に)と自分を奮い立たせ、
ジンマシンが引く前に何がなんでも、サンジのジンマシンを確認しよう、と
ゾロは心に決めた。

仕事が終ったサンジはというと、やっと一人でのんびりと風呂に浸かっていた。
ゴーイングメリー号には、全身が映せるような鏡は女部屋にしかなく、
サンジは臀部を気にしつつも、体を捻って無理な体勢をとってまで、
ジンマシンの形の確認をしようとはしなかった。

さて、そろそろ・・・とザバっと湯船から出た時、
乱暴にドアが開いて、ゾロが仁王立ちになり、何事か、と思うより先に、

「ジンマシン、見せろ。」とまた言い出した。

「なんだよ、お前は!」
「いつからジンマシン研究家になったんだ、放っとけ、ボケ!」と
全く理解不能なゾロの言動にサンジがすぐに素っ裸のまま食って掛った。

・ ・・・それから、一悶着あったものの、
浴室でゾロはサンジの体の中をじっくりと確認出来た。

そして、予想したとおり、自分の望んでいた場所にしっかりと
望んでいた文字が浮き出ていたのだが、それを知らずに
ただ、ジンマシンが出たデコボコの臀部をどうにか隠そうとするサンジに対して、

決して、決して、口に出してはいけない感情、
女子供が愛らしいものを見て、必ず、言う言葉がが沸き上がるのを
止められなかった。


「ジンマシン、見せろ。」と横柄な態度で言ったところで、見せる筈がない。

が、いつもなら当然、予想出来た態度と言葉が返って来たのだが、
今日に限って、ゾロはその当たり前の事が全く出来ていなかった。

「なんだよ、お前は!」
「いつからジンマシン研究家になったんだ、放っとけ、ボケ!」

下らない興味を持って、妙なしつこさで食い下がるゾロに
サンジが瞬時にキれる。

その時点で、ゾロは自分の短絡的な行動の無意味さに気がついた。

(そりゃ、そうだよな。)
ロビンから聞いたイカの効能を話したところで、嬉嬉として見せる男な訳がない。
いや、言えばますます見せないに決まっている。

(ここは何もいわねえほうがいい。)と即決し、ゾロは大きく、咳払いをして、会話を途切れさせた。

「なんだよ。」
いきなり風呂に入って来て、「ジンマシン見せろ」と言った途端、
言い返したら、咳払いだ。
一体、(こいつ、何がしてえんだ)と、サンジにはさっぱり判らない。

「今、起きてんのは、お前と俺だけだ。」とゾロは話題をガラリと変えた。
「だからなんだ。」とサンジは、湯船に浸かり直しながら、聞きかえす。

「退屈だから、とかヌカすんじゃねえだろうな。」と眉を寄せて迷惑そうな顔をしている。

「まさか。」とゾロも、失敬なヤツだ、と言う意志を込めて、顔を顰めた。
「俺ア、退屈凌ぎでお前を」

(抱いたことはねえ)と言い掛けたら、「用件はなんだよ。」とサンジの
横柄な口調と言葉で遮られた。

自分の腹は見せらないが、サンジの臀部に浮かんだ自分の名前は何がなんでも確認したい。
それには、絶対に裸になってはいけないが、サンジに「ソノ気」になってもらわないと
目的は遂げられない。

こちらは服を着たまま、向こうは全裸、など 妙に羞恥心の高いサンジにとっては、
あまり好きな状況ではないだろう。
が、一旦、事をはじめてしまえば、ゾロのペースに引き摺り込める。

「判るだろ、鈍いやつだな。」と風呂桶の縁に手を掛けて、顎まで湯に浸かっているサンジを覗きこむ。

「ジンマシンが出てるから嫌だっつっただろ、さっき。」とテコでも動く気配がない。
「そんなの気にしねえよ。」と尚も食い下がる。
口付けさえ出きれば・・・と思うのに、サンジは、それを警戒して、
ブクブクと湯の中に口まで沈んだ。

ジンマシンを確認する、と言う目的はあるけれど、
洗髪料のいい匂いと湯の中のほのかに赤いサンジの肌を見ていると、
ますます、ゾロは引っ込みがつかなくなって来た。

「たかが、ジンマシンでヤる気が出ねえのか。」
「本当は、今日、疲れてとても勃たねえんだろ。」

これ以上、腰を低くして頼むのもみっともないので、
ゾロは、サンジを煽ってみる。

「あ?」とサンジの眉がつり上がった。

(しめた)とゾロは思ってすぐさま、たたみ掛ける。
「それじゃあ、仕方ねえよな。」
「お前はデリケートでか弱いコックさんだもんなあ。」とせせら笑った。

サンジの頭の中でゾロの目論見どおり、ゴングがなった。
「なんだと!もう一回、言ってみろ!」と浴槽の中の湯が
ザバアッと大きな水音を立てて、溢れ出すほど勢い良く立ちあがる。

そして、ゾロの動きはその時、とてつもなく、素早かった。

サンジの首に腕を回して、無理矢理自分の体に引き寄せる。
意外な封じ手にサンジは仰天し、「離せ、この変態!」と拳で、
ゾロの頭をガンガン殴ってくるが、ゾロはお構いなく、サンジの耳たぶを甘く噛んだ。

「うひゃ、」とサンジは喧嘩を売られたとしか思っていなかったので、素っ頓狂な声を上げる。
ゾロはそのまま、耳から首筋へと、唇と舌でなぞって、サンジの攻撃を防ぐ。

殴る手の勢いが徐々に弱まり、変わりにサンジの湯だった体から吐息が漏れ始める。

密着させた体の感覚で、自分と同じ状態にサンジも変化していることを確認してから、
ゾロはやっと、サンジの唇に触れた。

舌先で唇を割ると 思ったよりも素直に受け入れられた。
こうなると、(本末転倒だな)と思ったものの、この際、ジンマシンは後回しになり、
ゾロは 目を瞑り、サンジの唇と舌との愛撫に集中する。

サンジは、デコボコの臀部にゾロの手が触れないように
浴槽に凭れよう、と腰を掴んだままのゾロの手の侵入を阻む為に少し、腰を引いた。

が、その行動は逆にゾロに一番感じやすい部分に触れやすくなる隙間を
作ってしまい、透かさずゾロはそこへ手をさし入れて、サンジの先端を指先でくすぐるように愛撫した。

「く・・・。」喘ぎ声を漏らすまいと食いしばるサンジの声を耳元で聞き、湯で湿ったそこへの刺激を強くする。

ゾロは(頃合だな)とサンジの体が戦慄き始めて、やっと本来の目的を思い出し、
湯でビショヌレの床にサンジを抱いたまましゃがみこんだ。

自分の膝の上にまたがるように座らせて、首を愛撫する振りをして伸ばし、
そっと、気が付かれない様に 自分を受け入れるべき場所を馴らしながら、
確認をする。

頬になんだか、滲み出るような妙な笑いが込み上げてきた。


(と、ここで終わりなんです、すいません、てへ!)
















(終り)
強制終了・・・・。すみません、
yokkinの病ネタシリーズ 口内炎に続き、
ジンマシン、第二弾でした。
本当に私、イカを触ると指が痒くなるし、食べるとジンマシンが出るのです。