手もとにない本(3)


経済学の分野で - 初めてではないにしても、最初期に - コンピュータを使ったのは日本では安部一成ではないだろうか。

彼は近代経済学の立場から政府の経済対策を批判し、また平和運動にも携わっていたはずだ。

その論文はたしか山口大学の紀要に掲載されていたと思う。

内容は、山口を中心としてどれだけ投資すればその効果が周辺に及ぶかを、コンピュータに数字を読み込ませて計算させていた。

読み込む因子を絞りこんであり、その結果は急激ではなく、逆にそれが確実性を保証していた。

それを読んで少しホッとしたことを思いだす。

それまで近代経済学での数学の使用というと、ロンドンエコノミックスクール流のグラフを使用した分岐点 - 経営学でいう採算点に近い - の分析などが紹介されていた。

またコンピュータ関連ではレオンチェフの産業連関分析がさかんに喧伝され、将来における大型コンピュータの大々的な政策面での活躍が語られていた。

どちらもその当時期待されたほどには採り入れられてはいない。

コンピュータは高速度で数字を打ち出すが、その因子の選択には慎重でなければならない。

そして数学の経済学への寄与は、現状の方法では極端にその適用範囲を絞りこまないと逆効果であり、科学からの逸脱のおそれも充分にある。

あまり大きなことはいえないが、原始対数?あたりから検討した方がいいように思う。これならC言語でも扱えるしネ。


2003年 12月 - 2004年 1月

読書日誌