「アイデアの秘訣」


この本にはツッコミどころがいっぱいある。

著者の立場は主観論的観念論にある。

それゆえに、まずソクラテスから記述をはじめている。

ソクラテス=プラトンは哲学史からみると客観論的観念論の範囲にはいるが、彼ら自身は技術に対する視点を欠いているわけではない。

技術に関心のある著者は、その角度からソクラテスをとらえ、経験主義批判を彼のなかからとりだす。

またツェノンの逆理にふれて、その意義をアイデアとしてたかく評価している。

ほんまかいな? ソクラテスもツェノンもそんなたいしたヤツじゃないヨ。

ソクラテスはその<弁明>でも、最後まで彼の「観照的」な立場をつらぬいているし、ツェノンの復権は哲学からではなく18-19世紀の幾何学の改革を待たなければならなかった。

ではなぜこの本をとりあげるかというと、

ヒトのクビの上にのっかってるのはツケモノ石なんかじゃない、それは考えるためにくっついてるんだ

ということを強烈にアピールしているからだ。

そのためのアイデアも実例をふくめてたくさん提示している。

また「アイデアの敵」への批判は峻烈をきわめている。たしかにそんなヤツは多いよなあ ...

(追記) 誰も客観論的と主観論的のマチガイを指摘しないので、自分で訂正。

(著者 森秀人 発行 三一書房 1962年刊)


2003年 12月 - 2004年 1月

読書日誌