大和川水系の水質調査
CODとBOD
川や湖沼、海域などの水質汚濁には様々なものがあります。有機性汚濁、シアン化カリウムなどの有害物質による汚染、富栄養化、油濁汚染、酸性水などです。このうち私たちが日常よく目にする最も代表的な水質汚濁は「有機性汚濁」と呼ばれるものです。
有機性汚濁の原因となる「有機物」とは、炭素を含む化合物と定義されています。有機物は「し尿」や「家庭排水」に多く含まれており、もともとは毒性も無く微生物や細菌などによって分解されやすいものです。
川などに有機物が流入すると、これを栄養源とする「好気性微生物」が増殖します。このときに有機物は微生物によって酸化分解されます。また、微生物の呼吸のために「溶存酸素」(水中の酸素)を使います。水中の有機物が多ければ多いほど溶存酸素が欠乏することになります。水中の溶存酸素が欠乏すると魚類をはじめとする水生生物に重大な影響がでます。また、底に堆積している泥から「メタンガス」や「硫化水素」が発生して悪臭を放ちます。さらに、金属が硫酸イオンと反応して「硫化物」となり、底泥の黒色化(ヘドロなどへの進行)が進みます。このように、有機性汚濁の特色は有機物の分解の際に溶存酸素が消費されることによって生じる様々な障害といえます。
この有機性汚濁の程度を測る代表指標として用いられるのがCODとBODです。ともに水中の有機物を酸化分解したときに消費される酸素量を示したものですが、酸化の方法は両者で異なっています。BODはBiochemical
Oxygen Demandの略称で「生物化学的酸素要求量」と呼ばれています。これは水中の比較的分解されやすい有機物が微生物によって分解される際に消費される酸素量のことです。わが国では通常、20℃の検水を暗い所で5日間培養したときに得られる酸素消費量を指しています。BODの指標はアメリカで開発されたものですが、その概念は1884年、イギリスのデュプレという人が提唱したのが始まりだそうです。イギリスでは排出源から汚水が放流されて海に出るまで最大5日間を考えれば良いということからBOD5とされました。
この5日間というのが世界中で使われているのはイギリスにならえ、というのではなく、それなりに意味のあることです。5日間で約70%の有機物が分解され、この時点での値が安定し、しかも再現性がよい事がその理由であります。しかし、溶存酸素を何ら消費しない汚濁はBOD値としては出てきません。これに対してCODはChemical Oxygen Demandの略称で「化学的酸素要求量」と呼ばれています。これは水中の有機物を酸化剤で酸化する際に消費される酸素量をいいます。わが国では通常、100℃で沸騰している検水を過マンガン酸カリウムで30分間反応させた場合の酸素消費量を指しています。
一般にBODはおもに川の有機性汚濁の指標として、またCODはおもに湖沼や海域の有機性汚濁の指標として用いられることが多いです。BODが川の有機性汚濁の指標として多く使われる理由は、わが国の地形の特性上、川の水の流下時間が短いため、その間に生物によって酸化分解されやすい有機物を対象にすることが多いからです。対してCODが湖沼や海域で有機性汚濁の指標として多く使われる理由は、水の滞在時間が長く分解されにくい有機物も対象とする必要があるためです。
なお、人為的汚濁のない河川や湖沼のBODとCODについては、それぞれおよそ1r/l以下です。
<参考文献>
地球環境白書『最新 今「水」が危ない』 学研ムック「驚異の科学」シリーズ 学研(2004.12)
川の科学なぜなぜおもしろ読本 建設技術研究所広報委員会 山海堂(1997.3)
都市と水 高橋裕 岩波書店(1988)