長良川の河川改修
水質班
長良川の洪水
 戦後以降の長良川は度々大洪水を起こしている。昭和34年9月26日、東海三県(愛知・三重・岐阜)を伊勢湾台風が襲った。この台風はこの地方に大きな被害をもたらし、5,000人あまりの死者、行方不明者を出した。また昭和35年8月には台風11号、12号による洪水で、翌36年6月には梅雨前線と台風6号による洪水で長良川が破堤し、広い地域に大きな被害をもたらした。この3つを併せて、昭和三大洪水と呼ばれている。長良川はこれら以外にも、昭和51年9月8日〜14日の6日間にわたり、台風17号と停滞していた前線が重なって豪雨が1週間にわたって続いた。この結果、長良川の堤防が決壊し、下流域で3,000戸が浸水した。特にこの地方は海抜0m地帯なので、自然に水がひくまでに時間がかかり、被害が拡大した。


河川改修前の長良川
 河川改修前の長良川は中流付近でも瀬と淵が連続していた。川幅は狭く流れも急で河床と水位も高い位置にあった。このため大雨が降ると堤防がすぐ決壊し、河床より低い位置にある集落はすぐ冠水した。


河川改修後の長良川
 河川改修は長良川中流は川幅の拡張と堤防強化、一部の支流に小規模ながら多目的ダムを設置する形で行われた。上流部では、集落の周辺を流れる箇所は堤防の強化と一部嵩上げが行われた。しかし、上流から中流にかけては河床を掘り下げる浚渫は行われなかった。これは河川に流入する土砂の量が多く、浚渫してもすぐ堆積することが予想されたこと、浚渫した土砂の処分場所や搬出方法に問題があったこと、流れが急で大型重機が入ることができなかったことから川幅の拡張と堤防の強化のみが行われることとなった。



参考資料
 独立行政法人 水資源機構 長良川河口堰管理所「長良川河口堰調査報告書」(2005)
 アクアプラザながら パンフレット「長良川河口堰とともに「川・人・いのち」(2005)
 長良川河口堰の環境影響予測と現状(環境と公害 第25巻第4号)岩波書店(1996)
 ダムと日本(天野礼子)岩波新書 2001年
 サツキマスが還える日(横山尚巳)山と渓谷社 2000年
 公共事業を考える(諏訪雄三)新評論 2001年
写真:長良川支流の吉田川
   河川改修前は、吉田の早瀬に見られるような
   急流が長良川の本流にも多くみられた