概要
岐阜県関市は長良川本流の中流部に位置し、長良川河口から約53km遡ったところが関市の入り口である。関市は昨今の市町村合併で、旧武儀郡洞戸村、板取村、武芸川町、武儀町、上之保村の3村2町が2005年2月7日に編入したため、市域が拡大している。
関市の主要産業の一つに刃物の製造がある。日本における主要な刃物産地としては、岐阜県のほか新潟県、兵庫県、大阪府などが挙げられるが、中でも岐阜県関市は製造出荷額でみたとき、群を抜いた国内最大の生産地である。関市で製造される刃物製品の生産高は高く、包丁は45%、ハサミは32%、理美容ハサミやカミソリにいたっては72%(カミソリだけだと90%近く)が関で生産されている。また、ナイフも多く生産されているが、こちらは大半が海外への輸出向けとなっている。ナイフ類の大半が日本国内向けではなく輸出向けである理由は、日常でナイフを使う文化が日本に定着していないことが最大の原因であると考えられる。欧米ではナイフを使う文化があり、ナイフの消費量も日本よりはるかに高い。
関市は鎌倉時代から『関の刀鍛冶』として名高い産地を形成し、今日も県内の刃物メーカーが集中立地する地であるが、さらに国内第2位の産地である新潟県燕市も、第1次世界大戦後の経済恐慌の際に、関の職人が移住して勃興したものであることを考えると、
まさに『刃物のふるさと』といえる。
関の刃物は海外でも評価が高く、ブランド名としての『SEKI』は広く知られるようになっている。ブランドとして輸出されているものには、サバイバルナイフのほかに装飾を施した高級食卓ナイフやフォーク、包丁、爪切り、日本刀など多品種にわたっている。
平成12年度(2000年)における日本国内の刃物の総生産額は約859億円、このうち岐阜県関市が4割強を占める約390億円、新潟県が2割強の223億円、以下兵庫(約79億円)、大阪(58億円)、埼玉(17億円)の順であった。
また刃物産業における製造品目としては、@「食卓用ナイフ類」、A「包丁」、B「ナイフ類」、C「安全カミソリなど理髪用刃物」、D「はさみ」、E「つめ切り、缶きりなどその他刃物」に分類されるが、関市はこのうち食卓用ナイフ類を除くすべての品目について国内シェア1位を保っている。(※食卓用ナイフ類については新潟県燕市が国内最大産地である。)
関市の総生産額は近年、近隣アジア諸国の製品、特に中国製品の台頭により、国内他産地と同様に漸減傾向にある。こうしたなか輸出については、10年前に比べて半減したものの、ここ数年、年間90億円台でほぼ横ばいに推移しており、関係者間では対外輸出による産地振興の必要性が指摘されている。
また、関市には長良川が創り出した豊かな自然が多い。関市は昔から奥美濃と呼ばれており、関市より奥、郡上市方面へ向かうと山が険しくなる。この自然と融合した文化が根付いている。その1つに伝統漁法でしられる鵜飼漁である。鵜飼漁はウミウに、川に棲むアユなどを捕まえさせる漁である。アユは河川環境が比較的良好でないと生息しない魚なので、一種の自然環境の状態をみる目安になる。そうした長良川が現在、どのような状況に置かれているのかを探る。